包装貨物の振動試験について
産業技術センター

記事更新日.16.03

あいち産業科学技術総合センター 
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1. はじめに
トラック輸送、鉄道輸送などの輸送振動の影響を受け、包装貨物には様々な現象が発生します。例えば、繰り返し応力による製品の疲労破壊、製品の構成部品同士の衝突による部品破損、製品と包装材あるいは包装貨物同士の擦れ、包装材の印刷面の擦れ、製品の接合部・ネジのゆるみなどです。

これらの現象の発生を抑制して、包装貨物に十分な振動対策がなされているか確認するために振動試験が利用されます。試験の留意点として実輸送時の包装貨物が受ける損傷度と等価な条件で振動試験を行う必要があり、JIS Z 0200(包装貨物−性能試験方法一般通則)、JIS Z 0232(包装貨物−振動試験方法)の試験条件・試験方法が主に採用されます。JIS Z 0200については、国際規格のISO規格との整合を図る目的で平成25年3月に改正されましたので、変更点を改正前と比較しながら包装貨物の振動試験について紹介します。


2. JIS規格の振動試験について   
試験条件はJIS Z 0200(包装貨物−性能試験方法一般通則)、試験方法はJIS Z 0232(包装貨物−振動試験方法)に規定されています。試験条件のレベルの目安として、試験区分が3段階になっています。表1に試験区分を示します。旧規格では輸送距離のみにより区分されていましたが、改正後の新規格では輸送距離や輸送環境などを考慮した流通過程に基づいた区分に変更されました。


区分 旧規格 新規格
レベル1  輸送距離2,000km以上 非常に長い長距離輸送(2,500km以上)または輸送基盤が劣悪
レベル2  輸送距離1,000〜2,000km 長距離の国内輸送または国際輸送で、温帯気候における適切な輸送
レベル3 輸送距離1,000km未満 短距離の国内輸送(200km以下)で、特定のハザードがない

表1 試験区分



表2に旧規格と新規格における試験方法の比較を示します。旧規格では、「正弦波対数掃引振動試験」と「正弦波一定振動試験」のいずれかで試験を行うことが規定されていました。改正後の新規格では、「正弦波一定振動試験」は廃止され、実際の輸送振動を適確に再現する「ランダム振動試験」が追加されました。その結果、「ランダム振動試験」が最優先の試験とされ、ランダム振動試験が可能な装置を利用できない場合は「正弦波対数掃引振動試験」を実施することが規定されています。現在では、当センターで行う包装貨物の振動試験において、「正弦波一定振動試験」を採用する企業は極端に減り、「ランダム振動試験」を採用する試験が主流になっています。改正により、JIS Z 0232との不整合の課題が解消され、国際規格のISO規格との整合化も進みました。

さらに新規格では、輸送時に包装貨物が輸送車両等に固定されない可能性がある場合には、追加で実施する「跳ね上がり振動試験」も新規に規定されています。また、輸送中の積付け方向が予想できない場合(例えば、混載便など)は、通常輸送状態、縦置き状態および横置き状態のそれぞれの姿勢で試験を行います。



項目  旧規格 新規格
試験方法 正弦波対数掃引振動試験
正弦波一定振動試験(共振+共振以外)
ランダム振動試験が最優先
正弦波対数掃引振動試験
(+跳ね上がり振動試験)
振動数
(Hz)
5〜50または5〜100
(正弦波対数掃引振動試験)
3〜200(ランダム振動試験)
3〜100(正弦波対数掃引振動試験)
3〜200(跳ね上がり振動試験)
加速度
(m/s2)
7.35(正弦波対数掃引振動試験)
7.35(正弦波一定振動試験、共振以外)
4.90(正弦波一定振動試験、共振)
5.8RMS(ランダム振動試験)
7(正弦波対数掃引振動試験)
5.8RMS(跳ね上がり振動試験)
時間注)
時間注)
(min)
20,40,60(正弦波対数掃引振動試験)
15,30,45(正弦波一定振動試験、共振以外)
5,10,15(正弦波一定振動試験、共振
15,90,180(ランダム振動試験)
15,90,180(正弦波対数掃引振動試験)
10,20,30(跳ね上がり振動試験)
方向  上下(+水平) 上下(+水平)

表2 試験方法の比較

注)時間の区分は、左から順にレベル3,2,1

3. 大型振動試験装置について   
当センターでは、国の平成24年度補正予算事業「地域新産業創出基盤強化事業」により、輸送中の積載方法を再現し精度の高い試験を行うために、大型振動試験装置(叶U研製G-9230L型)を導入しました(図1)。本装置の加振テーブルサイズは1500×1500mm、包装貨物の最大搭載質量は500kg、振動数範囲は3〜500Hzで、従来の装置ではできなかった大型重量貨物やパレタイズ貨物を対象とした振動試験を実施できます。包装貨物の振動試験のご要望がございましたら、当センターの試験装置をぜひご活用ください。

図1 代表的な紡糸法(イメージ図)