産業用のX線CT装置について
共同研究支援部

記事更新日.17.05

あいち産業科学技術総合センター 
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1.はじめに 

製品の品質評価や検証のために、製品を非破壊で、つまり製品形状を維持したまま、3次元的に観察、検査、計測する需要が高まっています。医療用途として発明されたX線CT装置は、コンピュータ技術や、X線発生装置、X線検出器の発達に伴い、微細な内部構造を3次元的に観察できるようになり、産業用にも使用されるようになってきました。 現在では、製品の内部構造を非破壊で観察できるX線CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)装置が非破壊検査の強力なツールとなっています。  本稿では、X線CT装置の撮像原理の概要と観察事例を紹介します。


2.X線CT装置の撮像原理について 

(1)物質に対するX線の透過性について 
レントゲン検査で使用されるように、X線には、被検体を透過する性質がありますが、被検体の材質(金属、樹脂、セラミックス)や密度の違いによって透過しやすさが異なります。例えば、鉄のような金属よりポリエチレンのような樹脂の方が、X線は透過しやすいです。この透過度の強弱を画像の濃淡として可視化することで、被検体の内部構造を観察することができます。これは、レントゲン撮影と同様の透視画像となります。

(2)X線CT装置の撮像原理について
レントゲン撮影では1枚の透視画像のみ撮影されたもので奥行きがありません。3次元的に内部構造を観察するためには、被検体に対して様々な方向から透視画像を撮影します。 医療用X線CT装置では、患者を中心に対向して配置されたX線源とX線検出器が患者の周りを回転しながら撮影します。これに対し産業用に使用されるX線CT装置では、X線源と検出器を固定し、被検体を回転させながら撮影します。



そして、複数の透過画像をコンピュータ処理により3次元に再構成します。再構成された3次元イメージ像の断面画像は被検体内部の透過量の分布を表していますので、透過量の差が大きいほど鮮明な画像となります。

被検体を拡大して細かい部分を観察するために、焦点寸法数ミクロン程度の小さいマイクロフォーカスX線源を用い被検体をX線源に近づけて拡大画像を撮影することで、数十ミクロン程度まで鮮明に観察できるマイクロフォーカスX線CT装置が市販されています。

また、X線平行ビームを使用して拡大率と像のブレを抑えつつ、解像度の高い高分解能検出器を使用して、きめ細かい画像を撮像して、数ミクロンからサブミクロンレベルまで微細な内部構造を観察できる3次元X線顕微鏡が市販されています。


3 観察事例について 

(1)観察事例1:合板
図2に合板の3方向の断面画像と3次元イメージ画像を示します。
もともと合板とは、薄く切った単板(ベニヤ)を、向きを90°互い違いに重ねて接着した木質ボードのことです。鮮明な断面画像により、互い違いに積層していることを確認できます。また、木が成長のために根から水を吸い上げていた管(導管と呼ばれる)の名残が、数百ミクロンの孔として観察されています。


(2)観察事例2:CFRP(炭素繊維強化プラスチック)
図3にCFRPの3方向の断面画像と3次元イメージ画像を示します。  
CFRPは、強化剤に炭素繊維を用いた、繊維強化プラスチックです。母材である樹脂に針状の炭素繊維が鮮明に観察されています。3方向からの断面画像から炭素繊維がどの向きに配向しているかがよくわかります。


(3)観察事例3:電子部品
図4に電子部品の3次元イメージ画像を示します。
細かい配線、部品等の配置が鮮明に観察されます。


4 おわりに 

(1)観察事例1:合板
あいち産業科学技術総合センター共同研究支援部では、マイクロフォーカスX線CT装置と3次元X線顕微鏡を依頼試験に使用しています。被検体の材質、大きさ、観察したい部分の解像度に応じて、機器を使い分けて依頼者のニーズに対応していますので、どうぞご相談ください。