1.はじめに
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、「軽くて強い」材料であり、優れた力学特性からスポーツ、航空機、自動車などの軽量かつ高強度を求める分野を中心に用途拡大が進んでいます。特に、炭素繊維の織物、編物、組紐などを基材とした炭素繊維複合材料(CFRP)であるテキスタイルコンポジットが注目されています。テキスタイルコンポジットは、自動化に適している、賦形性に優れるなどの利点があり、CFRPの生産性や性能向上が期待されています1)2)3)。その中でも、織物は、たて糸とよこ糸を交錯させてシート状にしたものです。炭素繊維を織物にすることで、一方向部材に比べ少ない積層枚数で強度の等方性を出すことが可能です。しかし、炭素繊維は剛性が高く、屈曲しない材料のため、汎用の織機での製織が非常に困難であると考えられます。また、製織時に繊維が損傷し飛散するため、電気回路がショートして事故になる可能性が高く、専用の建屋と織機が必要となります。したがって、既存の設備でCFRP用基材を作製するためには炭素繊維の保護技術を開発するとともに、製織条件を検討する必要があります。
本研究では、炭素繊維の外側に樹脂となるナイロン繊維を被覆したカバリング技術注1)と製織技術を活用することで、少ない積層枚数で強度の等方性などに優れ、汎用の整経機注2)や織機等の設備で製造可能なCFRP基材を製造する技術を開発しましたので紹介します。
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