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抗菌加工製品の特長と抗菌性評価試験
食品工業技術センター

記事更新日.18.01

あいち産業科学技術総合センター 
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〒451-0083 名古屋市西区新福寺町二丁目1番地の1 TEL 052-325-8094 FAX 052-532-5791
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1.はじめに 

“食の安心・安全”に対する関心の高まりや“清潔な空間”へのニーズの高まりなどから、抗菌加工製品は人々の暮らしに役立つ素材として市場が拡大してきています。日常生活のなかで“抗菌”という言葉を見聞きする機会が増えたと感じている方も多いのではないでしょうか。当センターに寄せられる、抗菌加工製品や抗菌素材の評価試験に関するお問い合わせも近年増加傾向にあります。

私たちの生活に定着してきている抗菌加工製品ですが、使い方によっては効果が全く得られないこともあります。抗菌加工製品を使用する際は、その性質をよく理解して正しく取り扱う必要があります。そこで、今回は抗菌加工製品の定義や特徴、当センターで行っている抗菌試験の事例について紹介します。


2.抗菌加工製品の定義と特徴 

一般に、抗菌加工製品における抗菌とは「当該製品の表面における細菌の増殖を抑制すること」と定義されています。この定義では、対象微生物は細菌のみであり、抗菌の及ぼす範囲は製品の表面に限定されています。したがって、“表面の細菌を増殖させないように加工されている製品”を「抗菌加工製品」といいます。一方で、微生物制御工学の用語では、“抗菌”は「微生物に抵抗する(Antimicrobial)」という意味であり、細菌やカビなど微生物の増殖を少しでも抑制する作用を「抗菌」と表現します。

抗菌加工製品に使用される抗菌剤は主に、銀や亜鉛、銅などの金属イオンや光触媒酸化チタンなどの「無機系抗菌剤」と、アルコール系や塩素系などの「有機系抗菌剤」があります。食品分野で使用される抗菌加工製品には主に無機系抗菌剤が用いられ、主要な製品には調理器具やキッチン用品、食器、容器包装及び、食品加工工場の設備品などがあります。食品分野で使用される抗菌加工製品に求められる条件としては、(1)抗菌効果が一定時間持続すること、(2)人体に無害なこと、(3)サニタリー性があること、(4)耐熱性や耐腐食性があること、(5)安価であること等が挙げられます。

金属イオンの抗菌作用は、極微量の金属がイオンとして溶出し、微生物の細胞内に侵入して酵素活性の失活やタンパク質の機能不活化などの生育阻害作用を引き起こすことによるものと考えられています。この作用は、金属イオンと微生物が接触することで機能するものであり、表面に汚れなどが付着していると金属イオンと微生物が接触できず、十分に効果を発揮しないことがあります。光触媒酸化チタンや有機系抗菌剤も同様に、汚れなどの影響で抗菌作用が阻害される事例が数多く挙げられています。“抗菌加工製品であれば洗わなくても菌が増えない”ということではなく、抗菌加工製品を効果的に使用するためには表面の汚れを洗浄し、常に清潔な状態にしておく必要があります。


3.抗菌加工製品及び抗菌剤の評価試験 

一般的な抗菌加工製品の評価方法として、一般財団法人日本規格協会の定める試験方法「JIS Z 2801 抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果(フィルム密着法)」が挙げられます。この規格では、加工されていない製品の表面と比較して細菌の増殖割合が100分の1以下(抗菌活性値“2”以上)である場合、その製品に抗菌効果があると規定されています。使用する細菌として、黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus)と大腸菌(Escherichia coli)が定められています。試料が特殊な形状をしているときや小物など、フィルム密着法が適用できない場合、一般社団法人抗菌製品技術協議会の定める試験法「シェーク法」に基づいて試験を行うこともあります。

フィルム密着法やシェーク法は数値で抗菌性を評価する試験方法ですが、近年では抗菌効果を視覚的に評価したいという相談も数多く寄せられています。そこで、当センターでは「ハロー法」や「MIC(最小発育阻止濃度)法」などの視覚的な評価試験による依頼分析も行っています。

○ハロー法
細菌やカビの胞子の懸濁液を塗布した培地に試料を拡散させ、培養後に細菌やカビの増殖が抑制されたことを示す阻止円(ハロー)の形成を目視で評価する試験方法です。ハロー法には、培地に穴をあけて試料を滴下する「寒天拡散法(agar well diffusion assay)」や、試料を浸漬(もしくは塗布)させたディスクを使用する「ペーパーディスク法」などがあります。細菌とカビの阻止円の例を図1に示します。抗菌作用の定量評価を行うことはできませんが、視覚的判断が容易であり、微生物が専門外の方にも結果が分かりやすい試験方法です。

○MIC(最小発育阻止濃度)法
抗菌剤や抗カビ剤、防腐剤など薬剤の濃度を段階的に調製して培地に加え、細菌やカビの胞子の懸濁液を添加して培養後の増殖の有無により対象微生物の発育を阻止する最小濃度を視覚的に評価する試験方法です。試験結果の例を図2に示します。商品開発の際の薬剤の濃度検討や、複数の薬剤の効果の比較を行う際などに用いられる試験方法です。

4.おわりに

抗菌加工製品や抗菌剤の評価試験は、フィルム密着法やシェーク法のような数値評価を行う試験と、ハロー法やMICのように視覚的評価を行う試験があります。このため、抗菌試験を実施する際は製品の用途や使用されている抗菌剤の性質及び、得られた結果をどのように活用するかを十分考慮して試験方法を選択する必要があります。当センターでは抗菌試験の依頼分析だけでなく、試験方法の選択に関するご相談にも応じています。お気軽にお問い合わせ下さい。

引用・参考資料
  1)日本工業規格『抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果 (JIS Z 2801:2010)』
  2)抗菌製品技術協議会『一般社団法人抗菌製品技術協議会試験法 2012年度版』
  3)HACCP対応抗菌環境福祉材料開発研究会『安心・安全・信頼のための抗菌材料』
  4)高麗寛紀『図解入門よくわかる最新抗菌と殺菌の基本と仕組み』

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