2.抗菌加工製品の定義と特徴
一般に、抗菌加工製品における抗菌とは「当該製品の表面における細菌の増殖を抑制すること」と定義されています。この定義では、対象微生物は細菌のみであり、抗菌の及ぼす範囲は製品の表面に限定されています。したがって、“表面の細菌を増殖させないように加工されている製品”を「抗菌加工製品」といいます。一方で、微生物制御工学の用語では、“抗菌”は「微生物に抵抗する(Antimicrobial)」という意味であり、細菌やカビなど微生物の増殖を少しでも抑制する作用を「抗菌」と表現します。
抗菌加工製品に使用される抗菌剤は主に、銀や亜鉛、銅などの金属イオンや光触媒酸化チタンなどの「無機系抗菌剤」と、アルコール系や塩素系などの「有機系抗菌剤」があります。食品分野で使用される抗菌加工製品には主に無機系抗菌剤が用いられ、主要な製品には調理器具やキッチン用品、食器、容器包装及び、食品加工工場の設備品などがあります。食品分野で使用される抗菌加工製品に求められる条件としては、(1)抗菌効果が一定時間持続すること、(2)人体に無害なこと、(3)サニタリー性があること、(4)耐熱性や耐腐食性があること、(5)安価であること等が挙げられます。
金属イオンの抗菌作用は、極微量の金属がイオンとして溶出し、微生物の細胞内に侵入して酵素活性の失活やタンパク質の機能不活化などの生育阻害作用を引き起こすことによるものと考えられています。この作用は、金属イオンと微生物が接触することで機能するものであり、表面に汚れなどが付着していると金属イオンと微生物が接触できず、十分に効果を発揮しないことがあります。光触媒酸化チタンや有機系抗菌剤も同様に、汚れなどの影響で抗菌作用が阻害される事例が数多く挙げられています。“抗菌加工製品であれば洗わなくても菌が増えない”ということではなく、抗菌加工製品を効果的に使用するためには表面の汚れを洗浄し、常に清潔な状態にしておく必要があります。
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