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UVレーザーによる木材の加工

UVレーザーによる木材の加工
産業技術センター 環境材料室

記事更新日.21.01

あいち産業科学技術総合センター 

■問合せ先
〒448-0013 刈谷市恩田町1-157-1
TEL 0566-24-1841  FAX 0566-22-8033

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1.はじめに 

 レーザーは、身近なものでは、レーザーポインター、電子記憶媒体(CDやDVDなど)の読み出し・書き込み、製造業においては溶接、熱処理、電子基板の微細加工など、極めて広範な領域で活用されています。しかし一言でレーザーと言っても、その用途によって出力はもちろんのこと、用いる光の波長やその形態(連続光またはパルス光)、発振の仕組みまで大きく異なります。つまり、利用方法に応じて最適なレーザーが選択されていますが、物質の加工と光の波長の関係に着目した場合、加工対象物の光の吸収特性が、加工時の加工形態やその効率に大きく影響します。
 また、一般的に短い波長ほど小さく集光でき、微細な加工に適しています。

2.本文

■木材のレーザー加工
 木材を対象にしたこれまでのレーザー加工の主な形態は、図1に示すようなマーキングや切断加工であり、産業用途としてのマーキングマシンやダイボード加工用のレーザー加工機が製造されています。これらに使用しているレーザーは赤外線の波長(10600nm)を有する炭酸ガス(CO2)レーザーです。この波長のレーザーは一般的に有機材料に対して吸収が良く、木材の加工にも適しています。
 この様に、切削工具による加工では実現できない精密な加工が可能です。マーキングにおいては、凹凸による陰影だけでなく、加工熱による炭化がコントラストを生み出しています。

■UVレーザーによる木材の加工
 このように産業用には赤外線波長を有するCO2レーザーが用いられてきましたが、産業技術センターでは、近年、紫外線(UV)レーザー、つまり紫外線領域の波長(ここでは355nm)のレーザーによる木材の微細加工に取り組んできました。その研究において、木材の分光反射率と、加工効率の指標として切断加工における加工深さを調べた事例を図2に示します。YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザーという、固体結晶から発振されるレーザーをベースに得られる3つの波長を比較したところ、木材は近赤外線領域の1064nmでは高い光の反射を示しますが、紫外線領域である1/3波長の355nmでは極めて反射が低く(吸収が高く)なっており、それは加工効率と高い相関がありました。
 また加工形態も大きく異なり、355nmでは外観上は熱影響が見られない微細な加工ができるのに対して、1064nmでは加工点が焦げてしまい、ほぼ加工できない状態でした。
 一般的に、短波長になるほど物質の光の吸収は高くなると言われますが、木材は他材料と比較して非常に高い波長依存性を示していると考えられます。

■ レーザーマイクロインサイジングとその応用
 このUVレーザーを用いることで、外観上は熱影響が見られない切削幅数十μmの微細な切断加工が可能となりますが、産業技術センターではインサイジングに応用するための検討を実施しています。インサイジング(incision)とは「切り込み」の意味で、木材の中に防腐剤などの薬液の浸透を促進させるための機械加工であり、通常は金属刃を木材の表面に圧入することで加工します。これを直径100μm以下の穴開け加工にすることで、木材の表面の美観、風合いを損なうことなく、様々な化学処理を施すことが可能になります。
 これがレーザーマイクロインサイジング(LMI)です。
 図3にその加工例を示します。左の写真はLMI加工した木材とその表面の拡大写真です。右の写真は別の試料に0.1mm間隔で10個の穴を開けたその穴に沿った試料断面の電子顕微鏡写真です。多くの穴を開けても穴が目立たず細長い穴加工ができるため、塗布するだけで液体を染み込ませることができることも利点です。
 その応用の一例として、図4に表面に樹脂含浸処理を施した木材を示します。その他にも、防炎性能の付与、塗装塗膜の耐久性向上を試み、それぞれ飛躍的な性能の向上が認められました。
 もちろん、一般的な薬液注入処理法である減圧・加圧含浸処理においても、注入量や浸透ムラなどの処理品質に対してLMIの効果を確認しています。

4.おわりに

 UV波長のレーザーによる木材の加工について紹介しました。木材の加工に対して、CO2レーザー以外の波長のレーザーを応用した初めての事例と思われます。
 しかしながら、その技術の展開、普及には加工時間の短縮が技術的な課題となっています。穴数が多く、深さが深いほど当然、加工時間が長くなってしまいます。これについては、レーザーをはじめとしたその周辺機器の技術の進歩に依存するところが大きいのですが、条件の最適化などによりその解決と進展を図っています。
 おわりに、ここで挙げた事例以外、もちろん木材以外の材料においてもレーザーには様々な応用が期待できますので、ご相談ください。

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