先月号の『時代の目』、中京大学小川英次学長の「日本経済の動向と今後の中小企業」を引き継いで、今回も「中小企業の近況」をテーマに取り上げることにしたい。
1990年代半ばから日本の中小企業政策は、一貫して起業の促進と新事業の創出に重点を置いてきた。その背景には、1970年代後半よりわが国の開業率は長期にわたる低下傾向にあり、80年代後半からは廃業率が開業率を上回る状況にある。平成18年版「中小企業白書」によれば、1986年には533万社を数えた日本の中小企業は、2004年には約100万社減少して433万社となった。
ただし、近年は様々な施策の導入効果もあって、一時よりは新規に開業する企業の数は増えており、直近の01年から04年の間では年平均16.8万社の企業が開業している。しかしながら、それ以上のペースで廃業する企業が増えており、同期間の年平均では約29万社が廃業しているので、依然として開業率より廃業率のほうが高くなっている。
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