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高齢社会に浸透するICT
小栗宏次 記事更新日.06.12.12
愛知県立大学情報科学部  教授 
■PROFILE
愛知県立大学情報科学部教授。工学博士。
昭和35年名古屋市生まれ。
平成2年名古屋工業大学大学院工学研究科博士後期課程修了。同年名古屋工業大学助手。6年愛知県立大学助教授、10年同教授、11年より、ドイツ連邦共和国ミュンヘン大学客員教授、14年より、大学院情報科学研究科教授(兼任)現在に至る。
<専門> 生体工学、知的情報処理、メディア情報システム。
<その他> 2005年国際博覧会企画調整、高度情報通信社会検討委員会、愛知県高度情報化推進会議、あいちIT活用推進本部有識者会議などの各委員として活躍。
<主な著書>
ポスト「万博、空港」を考える−中部の識者が語る−(唯学書房)、「100年後の中部」(日刊工業新聞社)、「インターネット時代の情報発信入門」(リバティ書房)、「未来を拓く情報科学」(リバティ書房)など。

連絡先
愛知県立大学情報科学部情報システム学科
〒480-1198 愛知郡長久手町大字熊張字茨ケ廻間1522-3
TEL 0561-64-1111
FAX 0561-64-1108
http://www.aichi-pu.ac.jp/ist/~oguri/

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ICT(情報通信技術)が社会に浸透するようになって久しい。
当初は、産業界に大きな影響を及ぼし、最近では各自の机の上にはパソコンが定着し、コンピュータを機軸としたビジネススタイルが当たり前になっている。
社会システムにおいても、コンビニやショッピングセンターでのPOSシステムや、鉄道の自動改札や、ICカードの利用が定着してきている。

JR東海では、JR東日本の「スイカ(Suica)」、JR西日本の「イコカ(ICOCA)」に続き、平成18年11月25日より「トイカ(Toica)<注1>」の利用を開始する。IT化によるこうしたキャッシュレス化の動きは加速しており、カードの相互利用ビジネスも計画されているようだ。

トイカ(toica)

ICTによる変化は、産業界だけにとどまらず、個人の生活にも大きな影響を与えていることはいうまでもない。携帯電話の普及はその代表的な現象と いえる。特にiモード(NTT Docomo)に代表される、携帯電話からの情報サービスの普及は携帯電話の利用範囲を大きく拡大したといえる。これらの情報サービスの普及には高校生や大学生といった若者による利用が大きく影響したと言ってよい。
たとえば、電子メールについて言えば、それまでパソコンからの利用が中心であったものが、携帯電話を利用することにより、まさに、いつでもどこからでもメールすることが可能になり、短いフレーズで1日に何度もメールの交換をするといった若者文化が急速に普及した。これを受けて携帯電話各社は、利用料金の定額化サービスを競って提供し、これを受け、さらに携帯電話を利用した情報サービスが拡大していることは言うまでもない。

さて、愛知県社会福祉協議会長寿社会振興センターでは「あいちシルバーカレッジ」と称する高齢者向け大学を毎年開設している。60歳以上を入学資格とし、県内5教室、総定員500名だが、少子化による受験者減少に苦しむ大学を尻目に、過去の応募倍率は、6倍を超える(平成16年名古屋教室)など毎年高い倍率で、応募者の中には、3年〜5年の応募の後にやっと入学を許可されたという方もめずらしくはなく、高齢社会の現実をまざまざと語っている。

縁あって、この数年間、私はこの「あいちシルバーカレッジ」で、「10年長生きするIT活用術」というテーマで、高度情報社会について解説する講義を持っている。この講義の中で、私は毎年受講者に「携帯電話を持っているか?」「デジタルカメラを持っているか?」と聞くようにしている。  

今から5年前では、携帯電話を持っている受講生は全体の5%未満であったと思う。これらの受講生は現役時代にビジネスで利用していたり商売で利用しているなど特別な理由がある場合がほとんどだった。デジタルカメラに関していえば、皆無と言っていいぐらいであった。  

やがて、受講者の利用率は増加し、本年度の講義では30%〜40%の方が携帯電話やデジタルカメラをお持ちになっていることがわかった。

私は、メディアの普及に際して「池に浮かぶ水草」を例に説明することがよくある。
「池浮かぶ水草」をイメージしてほしい。今、大きな池に、1つの小さな水草が浮かんでいるとしよう。その面積はとても小さく、池から見れば無視できるものとする。しかし、水草は、一定期間に分裂を繰り返し、1つが2つに、2つが4つに・・・と池の表面に広がっている。ここで、問題だ、水草が池の半分を覆った とき、次はどのようになるだろうか? そう、次は、全面を覆うことになるのだ。

メディアは口コミ情報で伝播拡大することが多い。
現に、中学2年になる私の息子は、中学での友人との話題の上位に、新型の携帯電話の話題があると言い、家族の中で誰よりも携帯電話の機種やサービスについて詳しい。これは、テレビやインターネットなどでの広告による影響もあるが、それ以上に口コミによる情報が多いと思われる。

さて、シルバーカレッジに話を戻せば、私の講義の際、携帯電話を持っている受講生の何人かの近くでは、携帯電話を持っていない受講生らに「○○の機種が使いやすくていい」とか、「□□のお店は、親切に教えてくれる」などと話しているのが漏れ聞こえてくる。
「池に浮かぶ水草」が30%だとすれば、これは、結構早い段階で、池を全面に近く覆う日が来るのではないだろうか?

情報通信技術による社会構造改革、いわゆるIT革命についてはピークを過ぎたような感じのある今日この頃であるが、高齢者向けのIT機器やサービスについては、これから大きな波が来るように思うのは私だけだろうか?

かつて高校生や大学生を魅了したような携帯電話からの情報サービスと同じように、高齢者の皆さんを魅了するようなサービスが求められているのではないだろうか。

JR名古屋駅前を通った際、クリスマス用のイルミネーションがとても美しく輝いていた。
何人かの人が足を止め、携帯電話で写真を撮ったり、知り合いに電話をし、その美しさを伝えている様子が伺い知れた。その中に何人かのお年寄りを見ることができた。

<参考>
<注1>トイカ(Toica)についてはJR東海(http://jr-central.co.jp/)の「トイカのご案内」で紹介されています。
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