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  トップ > 経営戦略レポート 海外駐在員便り > 愛知をオフショア開発の拠点に
愛知をオフショア開発の拠点に
<ソフトウェア開発日中懇談会に参加して>
記事更新日.06.10.17
上海産業情報センター    
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9月19日から山東省の済南市で開催されたソフトウェア開発日中懇談会に参加しました。ソフト開発ビジネスに関する日中間の効果的な連携を模索する試みで、日中の発表者共通の話題として、オフショア(海外への委託発注)開発に携わる人材の不足が挙げられ、それを補うための中国での日本語IT用語研修制度や専修学校の紹介などがありました。

また家電や携帯電話をはじめとする日本企業向けの組み込み系ソフト開発の需要は、今後も増加する傾向であるとの発表が相次ぎ、参加者の注目を集めました。

■懇談会での発表内容
冒頭、中国ソフトウェア産業協会陳理事長により、中国ソフトウェア産業の発展概況について説明がなされました。同産業の総売上高は毎年成長を続け、ここ5年間の平均成長率は46.4%、2005年度売上高で3,900億人民元、と驚異的な伸びを示し、人材の面でも同様に2005年度の従事者数は90万人、5年前に比べて28.7%の増加となっています。中国ソフトウェア産業は堅調な内需にささえられて、今後も成長を続け、業界の予測では2010年度には1兆3,000億人民元(日本円換算:19兆5,000億円)もの巨大な産業に成長するとの見通しです。成長の原動力としては、多機能携帯電話やIT家電機器の普及により、組み込み系ソフトの需要が飛躍的に増大すること、また日本やアメリカをはじめとしたソフトウェア先進国がソフトウェア開発の外部委託を活発化させることが要因として挙げられ、今後もソフトウェアのオフショア開発ビジネスは盛況のまま推移する見込であるということが、説明されました。

日本側からの講演者として(社)情報サービス産業協会の太田副会長が、日本の情報サービス産業の現状を述べたあと、特徴的な傾向として、組み込み系ソフトウェア開発、アウトソーシング、オフショア開発の拡大を挙げました。組み込み系ソフトウェア開発では開発に携わる技術者が現在9万人以上不足しているといわれており、今後デジタル家電の普及進展に伴い、さらに不足する見込みとの指摘がなされました。また技術者の不足加えて、アウトソーシング、オフショア開発が年々増加しており、特にオフショア開発では発注国比率で中国が71.5%を占めるほど重要な開発基地になっていること、拡大の背景としてはコスト競争の激化、日本での技術者不足などがあり、加えて高度専門化するソフトウェア開発に対応して、中国やインドをはじめとする海外企業も開発能力を向上させている点について説明がなされました。

 

済南市で開催されたソフトウェア開発懇談会

太田副会長による日本での技術者不足という話題に続いて、「中国の対日ソフト人材育成」というテーマで北京航天大学の孫ソフトウェア学院長から講演がなされました。

ソフトウェア開発の市場規模を国別に見ると、日本は米国に次いで第2位であり、巨大な市場を有していることを述べられた後、対日オフショア開発の基地として有望なのは、距離が近い、日本 語が話せる技術者が多いなどの理由から、現在、注目が 集まってきつつあるインドよりも、やはり中国であるということを力説されました。

■ものづくり愛知とソフトウェア開発
愛知県でも同様な状況が発生しています。

ものづくり愛知の主要な産業である、一般機械や輸送機器などの分野では、NC:Numerical Control[数値制御]や、ECU:Electric Control Unit[電子制御部品](注1)などの特殊な機能を持ち出すまでもなく、あらゆる機能にソフトウェアの働きが必要となっています。これら機械や部品などに組み込まれたソフトウェアを組み込み系ソフトウェアといいますが、現在は、例えば自動車は以前の「エンジン」で走っていたクルマとは違い、ECU、つまりソフトウェアで制御され、走っているといわれています。ナビゲーションシステムなどの付属品に限らず、エンジンやブレーキ制御などの基幹部品までソフトウェアにより制御されています。また、家電や携帯電話などの身近な製品もソフトウェアの働きなしには考えられません。これら製品の機能の高度化、多様化に伴い、ソフトウェアの需要も拡大し、開発行程も複雑化し、最終的には製造業全体の技術者不足が拡大する結果となっています。

今後こうした人手不足を解消していくために、中国へ向けたオフショア開発を拡大していく上での課題は、次の2点が挙げられます。

まず、愛知県には中国のソフトウェア開発企業の事務所、支店等が少ないため、特に秘密保持やセキュリティ、結合検査等の点を考慮すると、日本企業側からオフショア発注をしにくいという点があります。

2番目としては、組み込み系ソフトはアプリケーション系と違い、組み込む製品によって開発条件が異なるので、製品に関する専門性が必要で、実践的な経験がないと開発できないという点があります。中国ではIT人材が豊富とはいえ、まだまだ経験者が少ないことも原因しています。

これらの対策として、近年、愛知県に拠点を設置する中国IT企業が出始めたり、日系のSIベンダー(注2)には、中国でのIT人材教育に乗り出す動きが出始めています。

やはり、日本の企業は相手の顔を見て仕事をする、あるいは取引きを決めることも多く、不具合が生じたときに国内に事務所が、それも東京ではなく、製造開発の現場に近い位置に事務所を構えられていると、安心できると いう声を多く耳にします。中国IT企業が愛知県に拠点を設置するなどの動きは、対日オフショア開発をする際に、中国企業側にとって非常に有利に働いているものと考えられます。

今後も、愛知県企業の組み込み系ソフト開発の需要拡大などを意識しながら、日中のソフトウェア開発ビジネスの動向に注目してきたいです。

(駐在員 稲熊浩一)       

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