中国の化粧品は、欧米系を中心とする外資系企業が、輸入品を中心に圧倒的なブランド力で現在の市場を席巻している状態にあります。商品は100〜300人民元のものが中心で、大卒初任給の月収で約3000人民元程度の中国の消費者にとっては依然として”高級品”としてのイメージではありますが、2004年の市場規模では、681億人民元(約1兆900億円、日本の化粧品市場の約50%)に達するまで成長し、近年においても年率10%以上の市場拡大が続いています。今後もこうした拡大が続くものと予想され、上海万博が開かれる2010年には、出荷ベースで日本と同規模程度になるものと見込まれています(ジェトロ中国経済2007年1月)。 今後の中国の化粧品市場を見極める上では、現在の市場情勢は、これまでの富裕層を中心とする限定的な消費市場から、中間消費層を巻き込んだ大衆消費によるマス市場へと拡大していく過程にあり、今後いかに市場を獲得していくか重要な時期にあります。
こうした状況から、世界中から続々と各メーカーが中国市場へと参入を果たしています。中でも欧米の各メーカーは、大規模な資金力と圧倒的な高級ブランドイメージを背景にして、トップブランドを次々に投入するなど、中国市場への参入競争を激化させています。現在、上海市内にある百貨店やショッピングセンターの1階売り場は、さながら世界中の化粧品ブランドがひしめき合う見本市のような様相です。
愛知県からも中国の化粧品市場への参入を果たした企業(以下、A社)があります。このA社は、1993年の進出と同時に中国江蘇省蘇州市に生産拠点を築き、製品輸入のみに頼らず、中国進出当初から現地生産を開始するという、ものづくり王国愛知の企業らしいスタイルで中国への参入を果たしています。
以後、店頭での販売を積極的に展開し、全国で200の百貨店内店舗、180の直営店を設けながら、会員制の推進強化など、独特のマーケティングを用いて市場参入の取り組みを続けています。百貨店での店舗展開により、高級イメージの構築につなげながら、エステサロンでの美容の実践とあわせた商品販売に日本で培った対面販売のノウハウを持ち込むというユニークな工夫も見られます。日本でのノウハウを生かしつつサロン展開、百貨店での店舗展開、という中国での事業に2つの柱を掲げ、これに中国独自のブランドを設けるというマルチブランド化を加えた3つの柱による独自戦略で市場への浸透を図っています。欧米系のメーカーは輸入品を中心に高級イメージの構築を図っていますが、A社は現地生産を生かして中国専用のブランドを開発することで、中国人の嗜好に即した製品づくりに撤しています。こうした取り組みは、中国進出以来、中国に根ざして地道に続けてられてきた、ものづくり精神の成果ともいえるでしょう。
資本力やブランド力では欧米企業に及ばずとも、A社のように独自の戦略と個性ある商品作りにより着実に市場参入を実現することが可能になります。このことは他の市場でも同様に言えるでしょう。今後も中国市場での愛知県企業の活躍を期待したいと思います。
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