AARIの当面の取り組みとして、愛知県の中小製造業の皆様と常州市中小製造業との技術面や管理面での交流をサポートしていくプロジェクトを開始したことは、第1回のレポートで既に紹介させていただきましたが、今回からはそのプロジェクトの具体的な内容をお伝えしていきます。
上海から西に約160km、南京行きの新幹線で蘇州、無錫と著名な都市を通って約1時間の距離に位置する常州市。人口約460万人のこの地級市を私が最初に訪れたのは2010年9月。上海での広告会社との打ち合わせと、ちょうどその時期に開催されていた日系メーカー中心の展示会見学を終えた翌日のことでした。ちなみに、その時一緒に常州を訪問したAARI取締役の原と深井は、その数年前から常州を頻繁に訪れており、既に現地でパートナー企業と接触を開始していました。
当時の常州市副市長ほか市政府幹部の歓待を受けた私たちは、常州市の投資環境について説明を受けた後、常州市にいくつかある開発区の中でも最も新しい「武進開発区」を案内されました。蘇州シンガポール工業園区の総デザイナーによって設計されたというこの開発区の総面積は58平方キロメートル。最新のインフラが整備され、開発区内には六つの大学(日本で言うところの専門学校を含む)があり、その内のいくつかでは機械加工・金型加工・溶接・ITなどの専門指導をしていて人的資源が豊富。そして区内の就労者向けアパートは総戸数2,500あまりと、常州市が威信をかけてプロジェクトを推進する巨大な開発区でした。その後の訪問で、私たちは国レベルのプロジェクトである常州市高進区(国家高進技術産業開発区)なども案内されるわけですが、いずれの開発区も日本語が堪能な担当者による手厚いサポートが確立されており、製造拠点としての常州進出を考えている企業にとっては十分に魅力的な場所だろうな、との印象を受けました。
ちなみに、最初の常州訪問時に政府から渡された資料には「常州に進出した世界のトップ500社」なる表が掲載されており、その錚々たる顔ぶれに予想以上の常州の発展度合いを感じるとともに、「だとしたら我々にできることなんか何も無いじゃないか・・・」などと、会議室のスクリーンの横で私たちに対して熱心にプレゼンをしている政府担当者前に、私は少々冷めた気持ちになったりしていたのでした。 |