AARIアジア中小企業レポート
株式会社愛知アジア総合研究所(AARI)

記事更新日.13.03.22

製造業を中心とした愛知県および東海地域の中小企業に向けて、アジア各都市とのコネクションと様々なソリューションに関わるノウハウをもとに、技術支援、品質管理支援、環境対策支援等、ソフト面での海外進出をサポート。第一弾として、中国江蘇省常州市への進出サポートを展開中。
■問合せ先
〒460-0011 名古屋市中区大須2-23-36 ラディアント大須2F
電話 052-205-8033 FAX 052-205-8034
E-mail info@aa-ri.cojp URL http://www.aa-ri.co.jp
■第10回 セミナー開催報告と新体制下の中国に思うこと

執筆者:株式会社愛知アジア総合研究所 代表取締役 乗松薫
1970年名古屋市生まれ。1996年早稲田大学法学部を卒業後、岩手朝日テレビを経て、2000年ヤフー株式会社入社。2003年、名古屋にて株式会社ミルゲート(旧 有限会社エヌ・プランニング)を創業。以後、WEB領域を中心に、ナショナルクライアントから中小製造業まで、数多くの企業の国内およびアジア地域へ向けたプロモーション業務に携わる。専門領域は国内およびアジア市場へのプロモーションプランニングおよびコピーライティング。2012年3月、株式会社愛知アジア総合研究所を設立し、代表取締役に就任。

第2回中国マーケティングセミナーを開催しました

1月に続き、2月27日にも株式会社愛知アジア総合研究所(AARI)および株式会社ミルゲートの共催で、「新体制下の中国市場とWEBプロモーション」というタイトルのもと、名駅ABC会議室にて中国マーケティングに関するセミナーを開催しました。

今回の講師は、第1部が中華人民共和国駐名古屋総領事館で商務関連を担当されている陳才坤領事、そして第2部が中国国内で80%以上のシェアを誇る検索エンジン「百度」の日本法人国際事業室室長を務められている高橋大介氏。ちょうど中国で習近平共産党総書記が誕生したタイムリーな時期ということもあって、予想よりも早いタイミングで定員に達し、当日は40名弱の皆さんにご参加いただきました。
 
新体制下における日本企業のビジネスチャンス

「中日関係及び中国発展方式の転換と日本企業のチャンス」と題した陳領事の講演では、これまでの日中関係の変遷、中国共産党第18回大会が定めた発展目標と発展方式、そして対中国投資をする際の注意点と、大きく3つの項目に分けてお話しが進みましたが、特に会場の皆さんが熱心に耳を傾けていたのは、第18回大会関連の中でお話しされた「日本企業にもたらすチャンス」についてでした。

陳領事は、今後、日本企業へのニーズが高まるものとして、

  1. 内需消費分野
    中国の個人消費対はGDP比約40%。アメリカの73%、日本の65%に比べかなり低く、
    新体制下では、所得倍増計画や社会保険制度の整備により、今後消費主導の経済成長方針へと転換していく。また、中国国内消費者の日本製品の安全性に対する信頼度は依然として高い。

  2. 環境保護分野
    新体制では、生態文明建設を社会主義事業の中に組み込み、美しい中国の建設、永続的発展の実現という努力目標を打ち出して、環境保護、省エネ、低炭素、リサイクルなどによる環境に優しい経済を目指す。例えば、最近の大気汚染問題に関しては、2017年に日欧並みの環境新基準を適用し、微小粒子状物質「PM2.5」の原因である硫黄を削減していく。

  3. 養老介護分野
    中国の人口構造は、長年の一人っ子政策の影響により、今後20年から30年の間に深刻な高齢化社会に突入し、2050年には65歳以上の比率は3割近くに及ぶと予想される。
    2015年の介護市場規模は6兆円を超える見通しで、同分野は「外商投資産業指導目録」の奨励類に属するプロジェクトとして、国家単位で支持していく。

の3項目をあげられましたが、それらは全て、今の中国が抱えている問題点だと置き換えることができると思います。急速な発展の陰で生まれた構造的な矛盾。その矛盾を解消するために新体制が目標とするところが、今後の日本企業にとって大きなビジネスチャンスになっているわけですが、それはつまり、「世界の工場としての中国」の終焉を意味しているのではないでしょうか。

中間層が台頭し、環境意識が高まり、そして介護福祉分野へのニーズが高まっていく中国は、新体制下で本当の意味での先進国への道を模索していくのだと思います。その過程において我々日本企業の対中認識も、「世界の工場」から「世界一の巨大市場」へとシフトしていく必要があるのだと思うのです。



インターネット検索から見えてくる日中関係

第2部の百度日本法人高橋氏は、「検索マーケティングで成果に繋げるテクニック」と題して、中国国内でのインターネットの現状、百度の検索データからみた「名古屋」について、そして百度リスティング広告を利用した日本企業のプロモーション事例等について講演されました。

冒頭で高橋氏は、百度を「Ad Platform and Marketing tool」、つまり広告を掲載する場であると同時に、その膨大な検索結果から様々な市場動向が見えてくるツールだと位置づけられましたが、特に後者の「マーケティングツール」としての視点は、今後中国と何かしら関わりを持ってビジネスを展開していく企業にとって留意しておくべき点だと思います。例えば、「名古屋」は中国からどう見られているか、ということを百度ユーザーの検索履歴から辿っていくと、

  • ここ2年間で名古屋関連の検索ボリュームが大きく増えたのは、
    名古屋市長の発言、人民日報が名古屋の寒桜を紹介、杭州緑城vsグランパス開催
    といったタイミング

  • 中部および関西圏で検索ボリュームが多い都市は、 京都、大阪、名古屋、奈良、神戸の順

  • 名古屋大学、名古屋工業大学など、大学関連の検索ボリュームが多い

  • 名古屋を検索しているユーザーが多い地域は、北京、上海、天津、広州、蘇州の順

  • 名古屋を検索しているユーザーの職業は、多い順に、
    教育・学生、IT、媒体・娯楽、金融・不動産、政府・公共サービス

等のデータが判明します。

もちろん、検索結果だけをみてマーケティング戦略を立てることは早計だとは思いますが、少なくとも、例えば「名古屋は留学の候補地としては比較的注目されているものの、観光地としての注目度は低い」など、ある程度の仮説を導き出すことはできるのではないでしょうか。

また、百度に広告を掲載したある塗料メーカーのプロモーション事例では、ホームページ内に問合せフォームのみを設置していた期間とチャットでの問合せを追加した期間では、チャット導入後に売上が3〜8倍に急増するといった現象が起きており、中国のユーザーにとって、如何にチャットが一般的なコミュニケーションツールとして普及しているかをうかがい知ることができます。

百度に限らず、三億人以上のユーザーを誇るという中国版twitter「新浪微博」、中国版facebook「人人網」等、中国のインターネット媒体には、情報検閲がされているとはいえ確実に「世論」が反映されています。中国マーケットを知るうえにおいて、これらのインターネット媒体を「マーケティングツール」として捉え、そして活用することは、予想以上に大きな武器を手にすることになるような気がします。

 
 (次回に続く)
新体制下の中国市場を考える

前述の陳領事の講演の件でも述べましたが、中国は習近平国家主席のもと、様々な構造上の矛盾を抱えて新体制をスタートさせました。そしてそれは、中国が「先進国」になるための模索を始めたことを意味しているのと同時に、日本の企業自体にもパラダイムシフトの時期が訪れたことを意味していると思います。

「世界の工場」から「世界一の市場」へ。

時に報道に耳を傾け、時に人的交流の中で生の声に接し、時にインターネットで世論に触れる。

第2回セミナーを終え、そして中国で第12期全人代が終了した今、多角的な視点で中国を見つめることの重要性を、改めて感じています。



第3回セミナーのご案内

最後にご案内です。AARIではミルゲートと共催で3月28日(木)に第3回目のセミナーを開催いたします。今回のテーマは「知的財産権」です。参加費は無料ですので、ご興味のある方は是非ご参加ください。

第3回海外ビジネス・観光セミナー 
「海外事業展開と知的財産の保護〜中国・ASEAN諸国での知財保護の現状〜」

■日時:平成25年3月28日(木) 14:00 〜 16:00 (開場 /  13:30)
■場所:ウィンクあいち(1107会議室)
■講師:コーテック国際特許事務所 弁理士 水野 祐啓 氏 
■定員:40名(先着順)
■参加費:無料
■申し込み:下記のリンクから、セミナーの詳細ご確認、およびお申し込みが出来ます。 
http://www.mirugate.co.jp/seminar2013/
■締め切り:平成25年3月26日(火)
■問い合わせ:潟~ルゲート アジア事業部  
(052-205-8085、 seminar@mirugate.co.jp)
■主催:潟~ルゲート、 活、知アジア総合研究所

※お申し込み後、セミナー当日は直接会場へお越し下さい。また、恐れ入りますが、当日はお名刺をご持参下さい。

※ネット広告代理店、SEOサービス会社、Web制作会社等、同業他社の方の参加はご遠慮頂いておりますのでご了承下さい。
 
 (次回に続く)


※AARIが提供するサービス、及び常州市プロジェクトの最新情報はAARIのWEBサイトhttp://www.aa-ri.co.jp をご覧ください。情報は随時更新予定です。