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  トップ > 経営戦略レポート 特集 > 第2回  クレーム会話を切り上げる技術
第2回 クレーム会話を切り上げる技術
橋本尚美 記事更新日.06.06.01
研修講師 
■PROFILE
大学卒業後、放送局で営業と編集を務めた後、電話局に転職。オペレーターの経験を経て研修にあたる。 講師業として独立後はメンタルヘルス、コーチング、キャリア開発を横断的に盛り込んだテーマ別・階層別のプログラムを展開している。著述に月刊誌「PHPカラット」連載、携帯web「デキル女診断PHP」連載、「絶対にうまく話せるようになる講座」(共著)がある。6月から「デキル女診断PHP」で『お悩み相談』を連載予定。

連絡先
橋本尚美事務所
〒460-0008 名古屋市中区栄5−19−31 T&Mビル3階
TEL 052-225-7401
〒104-0061 東京都中央区銀座2−12−3 ライトビル5階
TEL 050-7509-9259
E-mail nhoffice@nifty.com
 

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■お客様の豹変
「あの、支払明細をもらったんですけど、このリボ払いって何ですか?私こんなこと、頼んでないんですけど」
もう何度、こんな電話を受けたことだろう。
僕はカード会社のコールセンターに勤務している。親会社の“良識スーパー”が発行した、いわゆるハウスカードといわれるものだ。毎月、支払明細を発行するころ、決まってこんな電話がかかってくる。
「はい、わたくしどもではリボルビング払いのお支払いをお願いしております」
「え?どういうこと?カードの支払いは、客が決めるものでしょう?」
あーあ分かってないなあ、この客。
「わたくしどものカードは、リボルビング払いで設定しているカードでして、申込書付きのリーフレットにもそう明記してございますが」
すっかりそらんじているセリフだ。僕は退屈しのぎに、手元のメモ用紙にいたずら描きをする。
「リーフレットのどこにそんなこと、書いてあるんです?客に分からないような書き方をしておいて、明記だなんてよぉ言えるわ」
弁の立つ客か?うっとうしいなあ。
「ですからリーフレットのハガキのところに」
「リボ払いが設定されてたなんて分かってたら、最初っからこんなカード、作らなかったわよっ!」
ちぇっ怒り出した。丁寧な口調のまま引っ込めばいいのに。
「リーフレットと一緒に入れてあるピンク色の紙にも」
「しょっちゅう、お宅で買うからカードを作ってポイントでも貯めようか、と思ってたのに。毎日の買い物で手数料を払わされるなんて、納得いかないわよっ!」
「ですけどこのカードはですね、お客様」
「ちょっとぉ!人が話してるのに、何で声をかぶしてくんの!?もういいっ。おたくじゃ話にならない。ちゃんとした責任者を出して。早く代わんなさいよっ!!」
「……」
この客、何でこんなに激昂しちゃったんだろう??

■共感と切り上げどき
「うん、分かった。出るよ……お電話代わりました。わたくし、センター長のハシモトと申します」
オペレーターが対応に苦慮している電話を代わることは、責任者の仕事の1つだ。努めて安定感のある声を出すように気をつける。
「もうさっきの人、何?人が話してるのに声かぶしてきてさー!」

会社1
「どうも失礼いたしました。声をかぶしていたんですね」
顧  客
「やっぱりリボ払いの手数料収入なんかで稼ごうって会社は、教育も大したことないんでしょうけど」
会社2 
「ご迷惑をおかけしました。教育が行き届いていなくて、申し訳ございません。○○様はリボ払いの件でお電話をくださったんですね」
顧  客
「そうです。おたくね、勝手にリボ払いで設定してるでしょ。私はね、毎日の買い物に手数料なんて払いたくないの」
会社3 
「いつもご利用いただきまして本当にありがとうございます。おっしゃるとおり、リボ払いを設定いたしてますので、お支払いは手数料をちょうだいしております。恐縮でございます」
顧  客
「そんなカードだったら、申し込んでませんよー。リーフレットに明記してあるって、さっきの子言ってたけどね、客に分かるように書いてないくせに明記だなんて言ってもらいたくないわね!」
会社4 
「はい。確かに、お客様に分かるように書いていなければ明記とは言えないと思います。書き方が分かりづらくてご不便をおかけしました」
顧  客
「もうとっとと解約させていただきます。今まで使った分、いっぺんに払うから。そうすれば手数料は発生しないでしょ?」
会社5 
「かしこまりました。お客様のご要望はカードのご解約と、これまでお買い物なさった分の一括払いですね」
顧  客
「そう。さっさと払って、もうこんなやり方をしているおたくとは縁を切りたいの」
会社6 
「承知いたしました。○○様を不愉快にさせてしまいましたし、これまでお買い物くださった分を計算して、おいくらになるのか改めてご連絡を差し上げましょうか?」
顧  客
「そうしてちょうだい。早くかけなおしてきてよ」
会社7 
「はい。責任を持ってわたくしハシモトがご連絡いたします。○○様、このたびの失礼の数々、本当に申し訳ございませんでした。リボ払いと明記の仕方については、上司や関係部署に改善すべき点として上げさせていただきます。それとオペレーター教育のてこ入れをするよう努力いたします」
顧  客
「そうすることね。苦情を言う人ばっかりじゃないはずですから。リボ払いなんて勝手にやらないことよ」
会社8 
「本当に、おっしゃる方ばっかりではないと思います。それで○○様、わたくし説明不足のことがございまして……(説明)ポイントを貯めていただくと、手数料に相当する景品と交換できる仕組みがございます。どうしても継続をご検討いただくわけにはまいりませんでしょうか?」  
顧  客
「いいえ、もう結構。さっさと解約してもらいたいわ。もうお宅とは付き合いたくないんです」
会社9 
「かしこまりました。それでは手続きをとらせていただきます。本日は誠に申し訳ございませんでした。後ほど、お支払いの件でわたくしハシモトからご連絡差し上げますので、どうぞよろしくお願いいたします」

■■■■■■■■■■■■戦略的に進めるクレーム対応■■■■■■■■■■

前回は「飼育されたクレーム」と題して、職場の人間関係がクレーム対応に表れやすいことを解説しました。企業の繁栄と私たちの生活はお客様がいてこそ成り立ちます。この点を職場のメンバーがきちんと共有していれば、今回ご紹介する技術は上滑りなものになりません。

クレームは一次対応者が行き詰まったら、『人を変える、場所を変える、時間を変える』のいずれかを使います。これは感情のたかぶりをクールダウンしてもらう狙いです。本ケースではセンター長に変わることで、偉い人に対応してもらえるという自尊心を満たしています。

クレームを寄せるお客様は、十中八九、まず怒りの感情を押し出してきます。時には自分の気持ちに翻弄されてうまく言葉にできない人もいます。
ここは聞くことに徹する段階です。まくしたるお客様であれば、こちらは言葉を挟めませんので相槌を入れるにとどめます。
この相槌は熱心な人ほど「はい」や「ええ」といった単調なワンフレーズを繰り返しがち。だから意識的にバリエーション多く繰り出します。「なるほど」「そうでしたか」「ああ」「そんなことが」……これらは“本番”でいきなり出てこないので、普段の生活で準備しておきます。ちなみにバリエーション豊かな相槌は、クレーム対応に限らず、日常会話で相手に気持ちよく話してもらえるスキルです。

まくしたてていたお客様がペースダウンすると、こちらが言葉を挟める「間」が徐々に出てきます(上記の会話は、スペースの都合でお客様がまくしたてている段階を割愛しました)。
この「間」でフィードバックの技術を使います。これはお客様の発言を繰り返したり、感情を推し量って言葉にするやり方です。フィードバックは“私のことを理解してくれる”と潜在意識に訴える効果があります。
とりわけ感情を言語化するやり方が顕著です。6.の「○○様を不愉快にさせてしまいましたし」がそうです。推し量るだけにハズしてしまうこともありえますが、お客様の気持ちを当てることが目的ではありません。“私はお客様を理解したい”と、こちらの気持ちを伝えることに意味があるのです。

センター長はお客様の発言を繰り返すフィードバックを、随所に繰り出しています。

    1.「声をかぶして」   2.「教育」「リボ払い」   3.「リボ払いを設定」 
    4.「お客様に分かるように書いて」「明記」

4.は「お客様に分かるように」「書き方が分かりづらくて」と、言い回しを変えて2度繰り返しました。
クレームを寄せるお客様は、用事を済ますことはもはや二の次。傷つけられた感情にケリをつけたいのです。そのため私たちはたっぷりの共感が欠かせません。フィードバックは共感のスキルであり、感情を 鎮静化するスキルでもあるのです。

以上のように、クレームは感情が絡むだけにたいてい時間がかかります。嫌味なく切り上げるには、相手が切り上げてくれるタイミングを作るのがコツです。
8.「どうしても継続をご検討いただくわけにはまいりませんでしょうか?」は、継続してもらえるなら利益の維持につながります。本ケースでは拒否のセリフを言われたことで、“私がこの会話を切り上げた”とお客様は一抹の清々しさを味わえます。
企業側の懇願とお客様の選択権をクロージングに持ってくることがポイントです。

2回にわたってクレーム対応の基本をご紹介しました。謝罪一辺倒ではもはやお客様は許してくれません。またクレーム処理に急ぐあまり、聞き取り調査のような質問の連発は怒りを増幅します。徹底的に「聞く+共感」のワンセットで戦略的に対応しましょう。

 
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