電子商取引においては、個人でも容易に売り手になることができ、中小零細事業者も、大きなコストをかけずに全国規模のビジネスができます。前編でも触れましたが、これが電子商取引の最も大きなメリットだと思います。
その結果、従来は市場に出回らなかった商品も購入できるようになり、消費者の利便性は大きく向上しました。半面、従来の事業者であれば当然に期待される「常識」を十分に持っていない売り手の存在も目につくようになりました。
例えば、返品を要求したら事業者から罵詈雑言を浴びせられた、というクレームがあります。顧客対応そのものが、トラブルの原因になってしまうケースです。返品・返金については合意したのに、返品に伴う数百円の送料をどちらが負担するかを巡って延々揉めている、といったトラブルも珍しくありません。これらを見ていると、どちらに正当性があるかという問題とは別に、事業者が、顧客と同じ目線で感情的に争ってしまうこと自体に疑問を感じることがあります。これらは、従来の取引には見られなかった、ネット取引特有の現象かも知れません。
その一方で、消費者の側にも、オーダー商品の注文を簡単にキャンセルしたり、送られた商品が気に入らないという理由で一方的に返送し、返金を要求したり、という
、やや身勝手な行動が見られます。電子商取引における消費者の中には、ネットで情報を入手し、自分で発信する人も増えています。売り手との力関係が、従来型の取引とは少し変わってきているところがあるのです。だからこそ、「契約」という概念を、取引当事者お互いが十分に理解することが必要であり、市場全体としては、売り手と買い手に共通する「常識」、それぞれに期待される「マナー」をきちんと確立していく必要があると思います。
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