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インドビジネスの現状と心得
森野 秀樹 記事更新日.07.06.11
OVTA 国際アドバイザー
■PROFILE
1942年 大阪生まれ
1964年 東京大学工学部機械工学科卒業、トヨタ自動車株式会社入社、駆動設計10年、製品企画6年、欧州事務所(現TMEの前身)、品質保証・管理9年(田原工場でLexus初代LS400プロジェクト品質ジェネラルマネージャ)、 豪州トヨタの技術部、海外技術部の西南アジアのチーフ・エンジニア5年
2000年 竃L田自動織機の理事、2002年から2005年央まで、インドのトヨタ自動車鰍ニの合弁会社 (駆動部品・足回り部品の生産と輸出)の副社長(技術系の最高責任者)就任
2005年 帰国後、OVTA海外アドバイザー登録
2006年 ThyssenKrupp Automotive Japan鰍フ技監
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1 NHKのインドの衝撃では

NHKは、インドが「頭脳立国」をめざしていると強調しました。テレビをご覧になった方は、「そうか」と納得されたことでしょう。60年前の独立以降、インド政府の第一の方策は「頭脳立国」だったことは自明でしょう。

しかし、現政府は、「頭脳立国」だけでは、貧乏から脱却できない、と考えている。インドの英語のことわざにこういう。
「一匹の魚を与えてもらえれば一日の食になる。もし代りに魚の取り方を教えてもらえれば永遠に飢えることはない。」

ある日印合弁会社の工場操業記念式展に、財務・経済大臣のチダン・パダム氏が出席されて次のように言われた。
「ほんの少しの人しか理解していない。100%輸出の拠点化の意味がインドの明るい将来の一歩だ。」  

この意味をみなさんもよくご理解いただきたい。雇用を創り出さない、と貧乏から脱却できない、と考えているのです。

この大臣は、1991年にインドの鎖国政策を廃止した「インドの経済発展のドリーム・チーム」の知将である。2004年の総選挙で、国民会議派が政権を奪回してからは、新首相のマン・モハン・シンと知将チダン・パダムのドリーム・チームがここに完成した。

2 「頭脳立国」だけでは、何故駄目なのか

フランスの新大統領のサルコジ氏が先ず訪問した国は隣国ドイツでEUの盟友としての舵取戦略を話しあった。同時に、週労働時間35時間を40時間にもどし経済を立直したドイツの最近の民意の操作方法を学んだことでしょう。

ところで、質問です。彼はフランス国内はどの企業に最初におとずれたでしょうか。

サルコジ新大統領の国・フランスとインドは、共に偉大なる農業立国で、自給率100%を超えるが、若者の失業率は両国とも20%を超える。実は同じ悩みをいだく。それでは、先程の質問に移りますと、答えは、世界2大航空機メーカーの1つエアバス社です。次世代エアバスの設計はインドに任せた。次に製造は、実はインドでも欧州でもなく、中国に決めた。一番多くの従業員を要し金を国に落とすのは製造である。何故中国なんだ。よりによって、中国を選んだエアバス社に懸念を表明したサルコジ新大統領の怒りに皆さまも共感されるでしょう。

インド政府の苦悩もここにあります。年収10万ルピー以上(日本円で約25万円以上ですが購買平価10〜20倍の10倍を掛けると約250万円)の人に税金が課せられている。中流層は20万ルピー以上(購買平価換算で500万円)。2年後の’09年度には1400万世帯増加し、1億3000万人となる。「近年の政府の努力による外資導入」と「毎年オーストラリア2国分の人口増と言うボーナスによる拡大一途の大いなる内需」で、中流層や富裕層(100万ルピー以上)の世帯は国民の8分の1で、更なる向上を目指す。

インド政府は、「頭脳立国」だけでは駄目で、10億人弱の低所得層の引き上げにはならない。NHKではその辺のことが理解されてない。海外から資本と技術ノウハウを入れて、多くのインド人に働く場を与えてくれることが政府の望みである。フランスの大統領選に見られるように、今の西欧全般に見られる国を二分する論議である、「弱者に活力を与え職場提供と福祉を重視すべきか」又は、「追い上げられている国際競争力を再び活性化するべきか」の二者択一の議論である。しかしフランスとは事情が違います。インドは両方を狙っているのです。方策は、外資導入と人口ボーナスによる内需である。

インドの友人が嘆いて言う。モノ造りが下手なんですよ。もっと日本に学びたいのです。最近できた「泰日モノ造り大学」のようなものを、インドにも作ってはいかがでしょうか。

3 今年は記念すべき年

日本政府は、2005年4月の小泉当時首相の訪印の成果として、今年を「日印交流年」とし、日本からは宝塚歌劇などの文化交流とインド見本市IETF2007への出展がある。

しかし、インドにとっては、もっと大切な年。1600年に始まる東インド会社から大英帝国の繁栄が始まるが、それに待ったを掛けたいインド国民は反乱を起こした。それがセポイの乱で、今年は「150年記念祭」を大々的に催す。又、丁度100年前の日露戦争で有色人種が欧州人に戦って勝ったことにインド国民は発奮された。綿花がバーミンガムへ運ばれ、インドへは綿布という完成品でしか帰って来ない。又、鉄鉱石も英国に運ばれインドには汽車や織機や農機具という完成品でしか帰って来ない。こんな事態にインド人が怒らない訳がない。1920年代年の出来事であるが、イースタン・ボダール・ミルズ社が、豊田佐吉のG型自動織機200台購入のオーダーを出したら、英国のプラッツ兄弟社が烈火のごとく怒り、地球の西半分のG型織機許権を購入した。100万円である。この9年後、豊田自動織機社からトヨタ自動車が独立するのである。

「搾取され英国憎し」は、先の大戦で日本の藤原機関の援助もあって、戦後英国支配から独立して、今年は還暦を迎える。

4 日本はインドのラブ・コールに応えているか

インド人が日本を見る目はどうでしょうか。2000年5月インドでの対日世論調査は図1のようにインド人は大変親日的です。

又現地の新聞の2005年のアンケート結果も、
(1) 「インド経済にとって大切な国や地域はどこでしょしか」 では、圧倒的に日本で、71%、以下は、米国、ロシア、中国、シンガポールの順
(2) 日印関係は友好的、71%
(3) 将来の日印関係は増進する、94%

一方、「日本人にとって大切な国は?」という日本でのアンケート結果は、一番が米国で66%、インドは何と1%とさびしい。インド人のラブ・コールに応えていない。小泉当時首時とマン・モハン・シン首相との間でいくつかの合意がなされた。その中で、経済ワーキング・グループの設定と日本語を第1外国語にすることは、直ぐに実行に移され、前者は、インド最大の産業 市のIETFへの日本の中小企業の出展を促し、又今秋の安部首相のFTA訪印へと繋がって行く。インキュベーションの役目として、進出希望企業にはJETROインド内に一定期間、仮事務所を提供する便宜に結実している。

5 外資導入の歴史から見えるモノ

外資導入の先鞭は、製鉄と化学だった。鉄鉱石は露天堀りが飛行中上空から見える。埋蔵量はブラジル、旧ソ連(ウクライナとロシア)、中国、豪州に次ぐ。マンガンは世界2位、ボーキサイトは世界6位、鉱物資源と食料資源に恵まれた国であり第1次産業と第3次産業が中心だった。’91年に開国したインドの国民会議派は、’98年までに産業の基本方針を立て、IT産業と自動車産業を育てた。’98年からのBJP政権の最後の’04年の製造業における資本構成は、国有企業35%、財閥企業30%に対し、外資が10%と極めて低く、中国と比較すると外資が寒かった。’04年に政権をとった現政権(国民会議派)の狙いは外資の導入である。世界最大の自由自義国を標榜するインドで、起業したい日本の企業には、中国のような厳しい規制もなく、総じて入りやすい国である。

鉄鋼業世界No.1のミッタル社の社長のミッタル氏は世界第2位の富豪で、そのインド進出先を、インドの「ラストベルト(錆の帯=鉄鉱石鉱山の帯)の東北端」でインド最貧の州のオリッサに決めており、次は、鉄鉱石会社の買収に向うと報じられている。

一方、化学工業は、米国のU−C社が23年前に起した有毒ガスの大爆発は、眠りについたボパール市民の家屋に流れこみ一夜で死者一万人、被害者総数50万人以上となり、しかも、 U−C社の慰謝料が400ドル/人以下であったことで、欧米系企業の「公害垂れ流し」感覚がインド人の猛烈な批判の的となった。かくして、インドの環境基準の厳しさは世界先進国なみにせざるをえなくなった。

安くつくることだけに目を奪われ、現地化の大切な考え「モノはそれを喜んで作ってくれる人がいる所で作るべきだ」と言うことが忘れられたと言う教訓を学んで欲しい。

6 投資先としてのインドの優位点

インドの優位点をあげてみましょう;

*英語を自由にしゃべれる、優秀な人材が世界一多数

  
昨年度の理工系大卒を77万人も輩出する。アジアのドイツ人と私が言う彼らの知能は、ゼロの発見や世界一の数学者や人工衛星やIT技術を見ればお分りでしょう。

*競争力ある労働コスト

  
優秀な人材を、大卒なら、25,000〜40,000円/月、工場のチーム・メンバーなら高卒後訓練を受けた人を、最初の見習期間の2〜3年は、10,000〜15,000円/月、その後、正社員になってからは、15,000〜25,000円/月であり、賞与は、創立5年を過ぎてからで良い。

*世界最大の民主・自由主義国

  
インドは英国の良い資産を得た。一方「法治国家を目ざす」と国是に掲げる中国は、法治国家ではないからです。裁判制度も百年以上の実績を有するインドは、アジアでは日本にならび、インドの政治的・社会的な安定性は群を抜いている。

*25年後に世界一となる人口

  
オーストラリア1.5国から2国分ずつ急膨張する「人口ボーナス」による内需の引続く拡大。

*豊富な若い労働力

  
現在の人口ピラミッドは、日本の50年前に同じで若々しい。一方、中国は、ひとりっ子政策が今後急速に老齢大国になる。                                                                                          

*日本との良好な関係

  
インドを天竺、仏教誕生の地とあがめる日本人。日本に恩義を感じるインド、親近感を感じるインド。

7 まとめ−−−今世紀半ばからはインドの世紀

2030年には15億人を突破し世界第一位の見通しで、若年層が多い理想的な人口ピラミッドであり、今までの内需指向の経済が外資投入で外需に向かえば今世紀央からはインドの世紀と言えよう。しかし内需となるとインド人の嗜好に合う商品が必要であり、それに合わない商品は販売不振となる。昨年は特にその白黒がはっきりしてきた。3度訪印して感じたことは自動車メーカーで言えば、20%を超える成長市場にあって、欧米企業が大幅に減産を余儀なくされ、日系4社と韓国1社だけが残りそうな「優勝劣敗」の年であった。

今後1〜2年は、日本からの「最後の船」となろう。何故なら、インドは自由主義で英語の国ゆえに日本以外が注目し、既に欧米の企業がひしめいているからである。

そして忘れてはいけないのは、起業してからの従業員の向上意欲にどう向き合うかである。マズローの向上意欲の5段階をもう一度思い出してください。「他者からの承認と自尊心の欲求」そして「自己実現の欲求」を、進出する企業が先ず第一に掲げて欲しいのです。欧米企業が不得意な「自己実現とチームワーク」と「モノ造り技術」を日本に期待しているのです。

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