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町工場の情報発信について
伊藤智啓 記事更新日.07.09.03
株式会社蒲郡製作所 代表取締役 
■PROFILE
1960年生まれ 武蔵工業大学機械工学科卒
1982年 蒲郡製作所入社。
1996年 代表取締役就任。
2004年 「IT経営百選」奨励賞 受賞
2005年 IT経営成熟度向上プログラム支援対象企業 認定
2006年 「IT経営百選」優秀賞 受賞

連絡先
株式会社 蒲郡製作所
愛知県蒲郡市御幸町28番10号
TEL: 0533-68-1155  FAX: 0533-68-1156
ウエブサイト: http://www.gamasei.co.jp/  
社長ブログ: http://blog.livedoor.jp/kotabimax/

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■はじめに・・・
名古屋駅前では、新しいビルの建設が続き、ファッションビルや百貨店は、人で溢れ、活況を呈しているように見える。しかし、愛知の景気も至る所で、良い悪いの二極化が進み、全体としては減速し始めたと言わざるを得ない。

製造業は、当社が創業した昭和30年代から、ずっと右肩上がりの高度成長を続け、造れば儲かり、仕事は客先から黙っていてもやってくる時代が続いた。その後、幾度かの危機を経験したものの日本経済は、成長期から成熟期に入った。

成長期には、他社と同じものを作っていても、顧客の要求どおりに納期を守り、品質、価格が妥当であれば、それなりに売れた。しかし、ものが溢れ、情報がいつでもどこでも誰にでも入手できるユビキタス時代となり、買う側の選択肢は飛躍的に増えた。ありきたりの商品や技術を提供しているだけでは、価格だけの競争に飲み込まれるしかない。

また先進国経済の成熟化や各分野での規制緩和、後発工業国の躍進、情報化の進展などで世界的に経済の転換期となった。今までの少品種大量生産方式は終焉を迎え、多様化、細分化、専門化した顧客のニーズに応えるには多品種少量生産をフレキシブルに行えるかどうかが製造業として当社が存続できるかどうかの重要な決め手となると考えている。

さて、こうした時代の変化に対し、我々中小企業経営者はどのように対応すれば良いのだろうか。当社は、昭和29年に父が創業した会社であり、私は2代目経営者である。父が経営していた時代は、先述のとおり、経済成長期であり、愛知県という恵まれた環境も重なって、商売をする者なら当たり前の行為である営業活動をしなくても、仕事はどんどん向こうからやってきて、更にはやりきれなくて断り続けるといったことも経験した。

■経営者の役割とは・・・
ところが、その後、時代は大きく変わった。中小企業経営者にとって、簡単には儲ける事ができない厳しい時代がやってきたのだ。しかし、どんな時代でも企業は存続しなければならない。そのためにすべきことは何だろう。

まずは、我々経営者自身がいろいろな知識を習得し、いろいろな人と出会い人脈を作り、新しい経営手法を学ぶことが大切だと考える。また、自分だけでなく、従業員に対して、職業訓練やセミナーを受講させるなど、知的な投資を行っていくことも大切だ。

その次に実施すべきことは、経営理念の確立と中期的な経営計画に基づいた戦略・戦術の立案である。

繰り返しお話するが、現在のような供給過剰な市場で、自社を認めていただくには、従来の作り手の都合を優先させたプロダクトアウトの考え方を捨て、顧客のニーズを最優先に考えた製品や技術提供を行うマーケットインの考え方に変わらなければならない。当社の強み、個性を何らかの形で顧客に伝えなければ、企業の存続はあり得ない。

■ふたつの情報発信・・・
前置きが少々長くなったが、ここから企業の情報発信についての本題に入る。情報発信は、二通りの視点で考えることが大切だと思う。ひとつは、社内に向けての従業員に対する情報発信であり、もうひとつは、顧客を始めとするステークスホルダーに向けての外への情報発信である。
■経営理念の明文化・・・
まずは、社内に向けての情報発信についてのお話をする。外に向けての情報発信の前にまずは社内の意思統一、すなわちベクトル合わせを行う必要がある。そのための基本となるものが、企業の存在意義を表した「経営理念」である。しかしながら、経営理念が明文化されていない企業は意外と多い。長年存続してきた企業では、言葉になっていなくてもきちんとした理念はあるはずだ。ぜひこの機会に明文化し、公開し、自社の進むべき方向を示していただきたい。
■強みの見つけ方・・・
次に行うべきことは、自社の弱み、強み、市場の機会、市場の脅威を明確にして、自社の強みを意識し、強みを強化するための戦略、戦術を立案することである。この際注意すべき点は、いろいろな市場分析をする際に、経営者の主観を極力抑えて、できるだけ調査した結果から導いた戦略、戦術を構築することである。

ここで、自社の「強み」の見つけ方についてお話しよう。私の周りにみえる経営者の方々に「御社の強みは何ですか?」という質問を投げかけると実に半数以上の方が、「うちは長年この仕事を続けているけど、皆さんと同じことをしてきただけだから、強みなんて聞かれてもありませんよ。」とお答えになるのだ。当社でも数年前までは同じ状態だった。

ところが、よく考えてみていただきたい。長年継続してお取引いただいているお客様があるということは、間違いなく同業他社ではなく、あなたの会社がそのお客様から選ばれている理由が存在するはずである。

自社の強みが分からずに悩んでみえる方にお勧めの方法がある。それは現在おつきあいいただいているお客様のところへ出向いて「当社のどこが気に入ってお付き合いいただいているのですか?」と単刀直入に伺ってみることだ。こうすれば、必ず明確な答えが返ってくるはずである。

■社外に向けての情報発信・・・
こうして、自社の存在価値や進むべき道を従業員に明確にし、情報を共有化し、社内のベクトル合わせが済んだ後に、いよいよ社外に向けての情報発信を考えることになる。

最も有効な情報発信の手段としては、昔から言われているとおり「口コミ」であることは今も変わらない。自社の優良顧客が技術力や製品の良さを他の顧客に口伝えで広めてくれるのである。

もうひとつの有効な手段は、インターネットを活用したウエブサイトとブログを使った情報発信である。インターネットを活用した情報発信がテレビや新聞といった従来のメディアと違うところは、自分の発信したい相手に情報を発信すると同時に、受け取った相手から、メールやコメントやブログでのトラックバック機能などにより、反応が返ってくるという点である。すなわち、双方向のコミュニケーションが実現できるのである。

■当社の事例紹介・・・
ここで、インターネットを使った情報発信の効果について、より詳しく、事例を交えてお話しよう。

当社では、十年ほど前から自社のウエブサイトを立ち上げ、自社の情報を全国に発信してきた。ところが、開設当時は、会社案内程度の内容で、情報量も少なく、お問い合わせも3年間はほとんどなかった。その後、サイトの内容を徐々に自社の強みを前面に出したものに変えると次第にお客様からの問い合わせは増えていった。

現在では、年間売り上げの4割はインターネットがきっかけでお取引を始めたお客様が占めるようになっている。

また、2年半前からは社長ブログも始め、週に5日は、モノづくりに対する想いや自らの経営姿勢に関することを書き込んでいる。

インターネットは、バーチャルな世界であるが、新しいお客様を見つけるにはとても便利なツールと言える。

当社では、ウエブサイトをご覧になった資本金数千億円の上場企業A社のご担当者が、私の経営姿勢に共感いただいて、その後2年間新素材開発のお手伝いをすることになったり、私がブログで、“NASAと仕事がしたい”と書いていたのをご覧いただいた研究機関のS氏が、別の大学の研究機関をご紹介いただき、人工衛星に搭載する望遠鏡の部品を製作することになったりといろいろな成果が出始めている。

また、数年前から「微細・精密加工に特化したい。」と周りの方々にお話していたところ、今秋から、大学や大手企業と共同で微細精密加工技術の確立に向けて、共同研究を行うことも決まった。周りの環境を変えるには、想って、それを言葉として発して、行動に移すことが大切だと思う。言ったもの勝ちと言うと少々言いすぎだが想っているだけでは他者に伝わらないことは間違いない。

■WEB2.0時代を迎えて・・・
近年、ウエブ2.0という言葉をよく耳にするようになった。ウエブ2.0とは、インターネットが第二世代に入り、より人にやさしく使いやすくなったことを表現した言葉だそうだ。

いろいろな変化の中で、特筆すべきは、googleの検索エンジンである。検索エンジンの技術が進歩し、サイト内の片隅に書かれたワードでさえ、正確に検索し、表示してくれるのだ。

今まで、埋もれてしまっていた中小企業のニッチなサイトも検索エンジンの技術向上により、全国のお客様に見つけていただけるようになった。

ただし、サイトを立ち上げれば、お客様から問い合わせがあると考えることには、少々問題がある。サイト立ち上げの前に、戦略・戦術を立案し、「誰に何を伝えるのか」を明確にしたサイト構築をしなくてはいけない。

従来のような“何でもできます”を売りにしたサイトは見て頂けない時代になった。顧客のニーズが多様化し、複雑化したことで“何でもできることは、何も特色がなく、何もできないこと”と捉えられるようになった。

そうならないためには、自社の強みを前面に出したサイト作りを行い、ターゲット顧客を絞込むことが大切である。当社では、従来、多品種少量の精密部品加工を短納期で対応できることを特色にし、どんな材質でも、どんなお客様でも、仕事をお受けしていたが、なかなかお問い合わせが少なく売り上げも伸びなかった。

昨年夏から、加工する材料の材質を社内での加工経験豊富なアルミ、黄銅、樹脂に絞り、ターゲット顧客も付加価値の高い仕事がいただける大手メーカーの40代の設計開発担当者に絞って、技術的な内容を多くし、加工単価はあえて高そうに見えるサイト作りを行った。

このような自ら間口を狭めるような営業方法には、疑問を感じる方もみえると思うが、検索エンジンで当社を検索されるお客様は「この部品を加工できる会社を見つけたい。」といった明確な目的を持って検索される場合が多いのだ。事実、当社では、昨年の夏以降、お取引したいお客様との出会いが増えている。

■終わりに・・・
情報は発信するところに集まると言われる。明日からぜひ自社の強みを発信しよう 。
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