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中小企業の高齢者雇用の諸問題への取り組み
瀬木久視 記事更新日.07.12.03
瀬木エルダ就労研究所 主宰 
■PROFILE
1940年 三重県生まれ
2000年 石川島播磨重工業株式会社で設計・生産管理・施設管理・営業等勤務後、同社関連子会社取締役工場長兼総務部長を最後に退社
2000年  (社)愛知県雇用開発協会高年齢者雇用アドバイザー委嘱(現在)
2001年 瀬木エルダ就労研究所主宰(現在)
現在; 愛知高齢者雇用推進委員会作業部会座長、半田商工会議所高齢者雇用相談専門委員、東海及び春日井商工会議所高齢者支援事業専門委員
県内公共職業安定所・各事業主団体・あいち高齢期就業支援センター・名古屋市高齢者就職支援センター等のセミナー・研修会の高齢者問題等に関する講師及び執筆活動等
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■はじめに
日本企業における雇用は、長い間の慣習から「定年」という働く年齢の上限を引き上げることによってその期間を決めてきたといえます。それはそれで一つの意味を持ち、有効に活用されてきたことではありますが、そもそも人には個人差があり、特に、高齢期の就労ではより顕著となるように思われます。

平成18年4月1日の改正高齢法が65歳までの雇用である限り、定年年齢の引き上げという延長線上に過ぎないと考えられますが、高齢期就労に大きな個人差があるとすれば、年齢による就労を考え直し、本当の意味での「生涯現役社会の構築」に方向を転換させる必要があります。

統計上の数字では高齢者の就労希望は高いものの、本当の意味での高齢者の就労意欲の持続は、そんなに高いとは云い難い面があります。

当然、少子高齢社会は、やがて人口減少への方向を辿るのでしょうが、グローバル化された経済活動は、人口の増減による拡大・縮小の自己調整、世界の国々への分散など自然調整がなされることになります。日本の少子高齢化を労働力と直接結びつけ、国内だけで労働力不足と考えることは短期的には兎に角、長期的には正しいとはいい切れない部分もあり、必要労働力は日本のこれからの経済活動がどうなるかということに密接にかかわってくるものと思われます。

しかし、労働力人口という数の問題ではなく、物的資源に乏しい我国の経済活動で最も大切な人的資源は、高齢者を含めた総合的な生産の原動力と考える必要があります。高齢者がもつ、技能、技術、知識経験は、これらの伝承、仕事の進め方などの継承など、高齢者の役割も人的資源の大切な部分であり、高若バランスのとれた労働力がますます重要になると考えられます。

■高齢者雇用の課題
中小企業主が高齢者雇用時に課題とする項目の調査結果(図表1平成19年6月)では、 @健康管理 A就労形態 B賃金 C災害の防止 D就労意欲 E人事制度・処遇 F職場の創出 G教育・訓練 H職場の環境改善 の順となっています。  課題とされる@健康問題は個人管理が原則となり、B賃金は、基本的にはその人の持つ能力、貢献度に見合ったものであるべきですが、需給バランス、市場性も考える必要があります。また、D就労意欲は、人事制度、仕事の与え方、賃金、これまでの教育など綜合要素で決まり、個人の考え方によっても大きく異なることになります。しかし、企業主が指摘した項目は、現状の体制を大きく変化させない条件での高齢者雇用ということになりますが、より有効な高齢者活用を考えた場合、課題項目の順位、内容は大きく変化します。
そこで、企業として高齢者を有効な働き手として雇用し続けるためにはどうすればよいかを考えることとし、基本的には次の5つの課題の検討が必要であると思われます。

1)企業としての高齢者雇用の基本姿勢と高齢者の役割の決定
2)管理者の役割と高齢者に対する認識
3)職務の見直し、職務再構築
4)加齢による身体的機能の低下と職場の環境整備
5)高齢期に雇われ続ける能力(エンプロイアビリティー)の向上

■課題に関する基本的な考え方
1)高齢者雇用の基本姿勢と高齢者の役割の決定
高齢者雇用において、企業は従業員全体の中で高齢者をどう位置づけるか、職務、処遇等をはっきり決める必要があります。特に、専門性の高い企業、あるいは独自の技術・技能・経験知識を必要とする企業では、高齢者といえども一般従業員と同等に扱わざるを得ない場合もあります。

しかし、この場合でも、全ての高齢者を一律の制度とするのではなく、有能で貢献度の高い人とそうではない高齢者をはっきり区別した制度、処遇を考える必要があり、無理に全ての高齢者を一本化して制度を創ることは、かえって弊害を生じさせ、経営効率も悪くすることが考えられます。

2)管理者の役割と高齢者に対する認識
企業として、高齢者に対する基本姿勢を従業員全体に周知することは勿論、特に管理・監督者に対し、高齢者は企業の重要な労働力として位置づけ、企業組織の一部であることを認識させることが大切であり、必要に応じ高齢者に関する教育が必要となります。

3)職務の見直し、職務再構築
職務再構築とは、これまでの日常業務を分析・見直しをして、日常業務をより効率的に、また、経済的にしようとすると同時に、高齢者あるいは女性の短時間労働者の職場確保を考え出すものです。この方法として業務の分担(ワークシェアリング)を考えることも一つの事例です。これまで、ワークシェアリングは、乏しき業務を雇用確保のために分担し合うという消極的なイメージを持っていましたが、これを積極的に利用し職務の再構築を図ろうとする一つの考え方です。

ワークシェアリングには、@仕事の量を分担するもの、A仕事の時間(時)を分担するもの、B仕事の内容(質)を分担するもの、の3つの形があります。
@量の分担は、スーパーなどで現在も広く行われている繁忙時間帯のパート勤務者の導入の形です。A時の分担は、古くは24時間操業現場における交替勤務の形であり、単純作業等における短時間勤務あるいは短日勤務者の組み合わせによる必要時間の継続業務実施の形です。B質による分担は、建設・土木作業、高所作業現場で行われる主要業務と補助業務の分担による複数労働者の共同作業の形が事例といえます。

(1)職場の職務分析
職務再構築をする上で、仕事の質(内容)による職務の見直しが大切です。この場合、先ず職務内容の分析が必要であり、
@仕事の質の難易度、A体力の消耗度、B発生の頻度、C主要作業との連携性と分離性、 D作業環境 等多方面からの調査・分析が不可欠となります。
こうした分析から、
@その職務遂行に必要な条件、A分割可能な職務の割出しと適材と思われる人材の選定、 B作業時間(日程あるいは短時間勤務の可能性等)などを判断し、その作業環境の改善を含め、総合的にワークシェアリングの可能性を検討します。

(2)職場が活性化するワークシェアリング
上記の職務分析や職務の状況による補完業務のワークシェアリングの形は、
・ 仕事の量の分担または働く時間の分担のどちらを採用するのか
・ 仕事の量の分担及び働く時間の分担の併用を考えるのか
・ フルタイムの必要があるのか
・ 補完業務を誰にさせるか
を決めることになります。ワークシェアリングを活かすには、「改善活動」は技能・技術、仕事のやり方の分野だけではなく、広く就労の形態をも含めた改善が必要です。
労働力を有効に活用するためには、高齢者の活用、家庭を持つ女性の活用という努力がなされ、それぞれの特質、働き方を考慮した多様な就労形態に応じられる体制を創る、あるいは創る努力が企業にとって大切と思われます。

4)加齢による身体的機能の低下と職場の環境整備
(1)視力・聴力の低下
高齢期の身体的機能低下の始まりは、先ず視力の低下からといわれます。静止しているものを見る静体視力は勿論のこと、動いているものを見る動体視力の衰えは、車両の運転業務、機械装置による加工作業等でも影響が出ます。照明を明るくし見やすくするなどの処置が必要です。天井の照明器具を増やすことが難しいときなどは、手元の局部照明を利用することなどが必要です。また、車両等の運転では照度を変えることができませんので、運転する時間を短くすることや休憩を多くするなどの配慮が必要です。

聴力の低下は、視力ほど早くは出ませんが、騒音の大きい職場などで長く働いた人には多く見られます。そのような職場では、耳栓の利用と警報音はランプ等でも知らせる視力・聴力併用の活用などが一つの方法です。

(2)平衡感覚の低下
平衡感覚の衰えは、「つまづき」「よろけ」などが多くなり、敏捷性の低下、筋力の低下と複合し、転倒、墜落など重大災害に結びつく要因にもなりかねません。
床の段差(僅かなものも含む)の除去、階段のスリップ防止の取り付け、手摺の増設などの改善が必要となります。

(3)筋力の低下
腕力、脚力を支える筋力も低下しますが、これをあまり感じていない人でも、背筋、腹筋の低下はかなり進みます。たいした重量でなくとも床から持ち上げギックリ腰になるなどの災害を起こします。持ち上げる高さ、姿勢には注意が必要で作業場における物品の運搬の手段、作業台の高さ、作業姿勢には配慮・改善が必要です。

5)高齢期に雇われ続ける能力(エンプロイアビリティー)の向上
高齢期におけるエンプロイアビリティーは、高齢になってから得るものではなく、本来、若中年期からその教育・自己研鑽が必要であり、そのためにも企業は高齢になったとき、特に管理・監督者を後輩に譲った後どんな従業員になってもらいたいかを若中年期のころから明確に示す必要がありますが、これまでそうした教育が行われていないのが現状です。

高齢者は、体力・気力・就労意欲・知識能力の面で大きなバラツキがあります。即ち、独りよがりになり勝ちで順応性にも欠ける人が多くなることです。従って、高齢者の教育・訓練では、多数を集め一堂で教育することに抵抗を感ずる人が多いと言われています。勿論、そうでない人もいますが少数派といえるでしょう。

そこで教育・指導の基準を「集団」から「個人・グループ単位」にする必要があります。指導対象を個人・グループ単位にする事により、経営者が自分達にも目を向けており、頼りにされている、という意識を持たせることです。

また、座学による知識の詰込みではなく、実務的でその人にあった方法で個人またはグループ単位の達成目標、担当する職務の「目的や範囲」をしっかりと定め、経験者だから大丈夫と考えず的確な指示をすることです。

具体的な教育の方法として、社内の高齢者に対する職務の分類、高齢者に期待する役割に合わせ、個人またはグループに分けます。

この中で、業務が比較的単純で、ある程度の経験と訓練でよいと分類された人たちについては、特別な教育はせず、「OJT訓練」対象として、個人単位で職務の「目的や範囲」をしっかりと定め、これを指示し成果をこまめにチェックして、評価しながらこれを繰り返し実行することが得策と思われます。

また、複雑で高度な技能・知識業務と分類した人たちについては、専門知識、技能を高めるための教育を実施することになりますが、個人・グループ固有の専門的な技術、技能、知識の向上という点では、「OJT」、あるいは本人の学習・研鑽、これまでの経験によることになりますが、特に、経営者、管理者にとって大切なことは、
・ 企業が期待する将来像を明確にすること
・ 個人またはグループの目標を適格に指示すること
・ 個人またはグループの役割認識をさせること
・ 能力向上の環境を創ること
・ 成果と同時にプロセスも評価すること
・ 経営者、管理者自らがチャレンジ・努力すること

などです。また、こうした教育訓練は、外部からの教育・研修も必要ですが、その場合、講師にその目的をハッキリ示し、企業の現状を良く理解させた上で計画・実施する事が重要です。

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