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企業におけるコンプライアンス
小栗吉雄 記事更新日.08.03.05
小栗FP行政書士事務所
■PROFILE
1948年生まれ。名古屋市出身。 中央大学卒業後、安藤建設株式会社(東証一部)入社。購買、経理、マンション企画・販売等を経験。在職中の1974年「宅地建物取引主任者」取得。1979年「行政書士」取得。1980年行政書士事務所を開設し、行政手続業務の他企業コンサル業務も開始。1991年コンサルティング会社「(有)トータル・プランニング」設立。1994年CFP®取得。2003年「1級ファイナンシャル・プランニング技能士」取得。2004年名古屋市立大学大学院修士課程修了(現在、同大学研究員「資産選択行動の研究」)。  

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連絡先  
小栗FP行政書士事務所  
〒464-0052 名古屋市千種区田代町四観音道西39  
TEL 052-761-1766 FAX 052-761-2060  
メール:oguriskj@lilac.ocn.ne.jp
 
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1.コンプライアンスの必要性
最近、食品、建材、合成樹脂、再生紙等、偽装問題が大きく報道されています。これまでにも粉飾、データ改ざん、保険金不払い等の不祥事がありました。

業界団体である経団連は「企業行動憲章」を、経済同友会はCSR(企業の社会的責任)普及の理念の下「社会的責任経営」を発表し、社会に信頼されるコーポレートガバナンス(企業統治)を啓蒙してきました。しかし一向に企業の不祥事がなくなりません。各業界の独特のムラ社会には、いまだに長年の商慣習がはびこっているのかもしれません。

2000年大店法(大規模小売店法)の廃止の頃からわが国では法律改正や新しい法律が公布されてきました。これらの一連の動きは、グローバリズム(米国からの規制緩和の要望)も含め法化社会が到来したことを告げています。つまり、企業に対しては、国による保護・規制はできるだけなくし、自由な経済活動をさせる代わり、その活動には法令等を遵守し責任を持ちなさい、ということです。一方、消費者に対しては、法律は整備したので商品購入の際は自己責任で判断しなさい、ということです。

海外に目を向けますと、現在中小企業を含め多くの企業が海外へ進出しています。各企業においては、国際ルールはもちろん進出先の国の法令、規則等に違反しないようにし、現地の文化・慣習を尊重し、現地社会に配慮した社会貢献活動もできること(現地化)が求められています。こうした国内外ともに複雑化・多様化した社会では、より地域社会に順応した経営が求められ、単に法令等を遵守するだけのコンプライアンスということではなく、企業倫理や社会貢献等を含む広義のコンプライアンス経営が重要となってきました。

2006年5月施行の「新会社法」においては、大会社(資本金5億円以上又は負債200億円以上の株式会社)に対し、内部統制(注:1)の方針を決定することが義務付けられました。そしてその具体的な基準(指針)は、2006年9月施行の「金融商品取引法(日本版SOX法)」によって定められました。今年2008年4月からいよいよ財務報告に関わる内部統制が始まります。内部統制の定義には、四つの目的があり、そのひとつに「事業活動に関わる法令等の遵守」というコンプライアンス項目があります。そして六つの基本的要素の中には「リスクの評価と対応」というリスクマネジメント(注:2)項目が入っています。この基準は大会社向けですが、中小企業にとってもコンプライアンス構築には参考となります。下図にシステム構築の際のイメージを作成してみました。

 
*内部統制の基本的枠組み:四つの目的【「業務の有効性及び効率性」「財務報告の信頼性」「事業活動に関わる法令等の遵守」「資産の保全(COSOのフレームワークにはない)」】、六つの基本的要素【「統制環境」「リスクの評価と対応」「統制活動」「情報と伝達」「モニタリング:監視活動」「IT:情報技術への対応(COSOのフレームワークにはない)」】(COSO:米国トレッドウェイ委員会)
出所:2005年12月企業会計審議会内部統制部会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」
2.コンプライアンス体制の構築
1)企業の業態別リスクの把握
企業経営におけるリスクマネジメントは、危機にさらされた場合を想定し、企業が存続していくために被害を最小にして乗り切る経営方法です。リスク管理のためには、リスクを部門別に把握し、分析・評価をし、危険度ごとに分類します。

この場合リスクマップを利用するとわかりやすい。そして危険度に応じて「回避」(撤退等)、「転嫁」(保険付保等)、「除去」(危険分散等)、「保有」(自家保険等)等の対応をします。そのリスクの中にはもちろん法務リスク(不正・違法業務、セクハラ、過労死、時間外労働等)があり、その対策は大企業・中小企業ともにコンプライアンス上重要な位置を占めます。下表において比較してみますとコンプライアンスとリスクマネジメントは企業経営において密接な関係があり、両者を統合したシステムを構築することが必要となります。

2)コンプライアンスとリスクマネジメント
項目 コンプライアンス リスクマネジメント
目的 社会的責任、企業存続 企業存続
基本方針 法令遵守、企業倫理 全体リスク管理
組織の整備 統括部署、委員会設置 RM部設置 トップ直轄
リスク評価・分析 法令、規則等
各業種関連法等
各部門別業務リスク
全社整備
(グループ会社含む)
マニュアル(規程)
ルール、文書化
監査、教育、研修
IT(情報管理)    
通報窓口(企業内外とも)等
リスク管理規程
製品管理、取引業者選定
設備投資
IT(企業秘密・個人情報管理)
ホットライン     等
リスクの開示 苦情・クレーム
不正・不祥事
苦情・クレーム
不正・不祥事
3.コンプライアンス組織の確立
1)コンプライアンスサイクルのルーチン化(日常化)
    
(1)コンプライアンスルール・システムの構築
リスクの評価と対応策を下に、ITを活用し情報処理の有効性、効率性を高めるコンプライアンスマニュアルを策定し、企業内に浸透させる組織を確立する必要があります。この体制は企業単体ではなく取引先を含めたグループ企業全体でルールを構築する必要があります。資本関係のない取引先の場合、コンプライアンス組織の整備された企業と取引をしていくことが、結果的には自社の信用も高めることになります。中小企業で取引先が不安定な企業では、コンプライアンス組織を構築することで取引先からの信頼度が増し事業展開の決め手となります。
 
    
(2)コンプライアンスルール・システムの実行
コンプライアンス体制を実践していくためには、各部門を管轄する取締役等のメンバーでコンプライアンス委員会(又はリスク管理委員会)といった組織を設置し、社員に定期的に研修・教育等を行います(モニタリング)。又この業務を社外の法律事務所やコンサルタント会社へ委託する事も考えられます。そこまでの費用を捻出できない中小企業では、経営トップまたは特別選任の役員がこの業務を担当することになります。
 
    
(3)コンプライアンスルール・システムの定期的監査
全社的に法令、倫理、規程等が遵守されているか、また現在実施しているコンプライアンスルール・システムに不備な点はないか等、定期的なチェックが必要となります。中小企業のトップでコンプライアンス担当兼任者は、毎日のごとく業務全般をチェックすることが大切です。
 
    
(4)コンプライアンスルール・システムの評価・見直し
消費者からのクレーム、会社内外の通報内容等を点検し、自社のコンプライアンス体制の不備や新たな対応が必要な時は、迅速にルール・システムを改め、改善の上新体制を構築し直します。そしてその経緯をすべて社会に開示(ホームページ)します。その誠実な行為によってより信頼度の高い企業として認知されることになります。

2)不正・不祥事発生時、発生後の対応
    
(1)発生時
ただちに対策本部を設置し、関係者へ誠実な態度で陳謝し、現在判明している調査内容を報告します。未調査の部分は、現在調査中で判明次第直ちに発表する旨を伝え、決して憶測で調査内容を発表しないことが大切です。
(事前に不正・不祥事発生時の対応マニュアルを作成しておけば慌てることはありません。)
    
(2)発生後
不祥事が二度と起きない抜本的な体制を構築することを宣言します。
<まとめ>
中小企業においては、コンプライアンス経営のための新しい組織や人員を配置する費用が捻出できない場合が多いと思われます。そうした経営環境にある企業は、経営トップ自らがコンプライアンス担当者を兼任する必要があります。日常業務において自らがコンプライアンス宣言をし、法令等遵守の先導者となることが大切です。経営トップ自らが法令等を遵守する姿勢は、社員一人ひとりに醸成され、コンプライアンス意識が確立され、やがてそれが企業風土となります。そして誠実なコンプライアンス企業として社会に認知され、企業ブランドも確立されることになるでしょう。
参考文献
 亀井利明著 「ソーシャル・リスクマネジメント論」日本リスクマネジメント学会発行(2007.10.15 )
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