「世界初!深宇宙探査機打ち上げにチャレンジ!!」
伊藤智啓 記事更新日.09.08.03
株式会社 蒲郡製作所 代表取締役
■PROFILE

1960年生まれ 武蔵工業大学機械工学科卒
1982年 蒲郡製作所入社。
1996年 代表取締役就任。
2004年 「IT経営百選」奨励賞 受賞
2005年 IT経営成熟度向上プログラム支援対象企業認定
2006年 「IT経営百選」優秀賞 受賞
2008年 中部IT経営力大賞「奨励賞」受賞
2009年 IT経営力大賞「IT経営実践企業」認定
2009年 元気なモノ作り中小企業300社に選定

社長ブログ:  http://blog.livedoor.jp/kotabimax/ 
経営者会報ブログ: http://gamasei.keikai.topblog.jp/index.html 


連絡先 :  株式会社 蒲郡製作所
〒443-0042 愛知県蒲郡市御幸町28番10号
TEL: 0533-68-1155  FAX: 0533-68-1156
ウエブサイト  http://www.gamasei.co.jp/  



 当社では、今、地元蒲郡にあります愛知工科大学の奥山准教授と共に、金星まで飛んでいく深宇宙探査機“UNITEC‐1”の製作にチャレンジしています。
「深宇宙」とは、聞き慣れない言葉ですが、通常は、地球から200万キロメートル以上離れた宇宙空間を示す言葉だそうです。

ところで、今回のプロジェクトの何が世界初なのでしょう?
民間が自力で打ち上げた人工衛星は、過去にもたくさんありました。
つい先日も話題になった“まいど1号”は、皆さんの記憶にも新しいことと存じます。
UNITEC‐1がこれまでの衛星と違うのは、民間が製作し、打ち上げる人工衛星では、世界で初めて地球の引力圏を脱し、金星まで到達して、その後は、太陽系を回り続ける人工惑星となる点です。

ここで、当社が今回のプロジェクトに参加することになったいきさつをお話しようと思います。
蒲郡市では、昨年より、市内にある愛知工科大学と地元企業の産学官連携を深めて、それぞれが活性化するようにと「がまごおり産学官ネットワーク会議」という組織が結成されました。
まだまだ知名度が低い組織ですが、活動後、一年を経過し、バイオ関連や農業分野での幾つかのテーマについて取り組みが始まっています。
私は、その会で実働部隊の長となる委員長を仰せつかっております。

6月の初め、大学からの新しい要望があるからとお電話をいただき、愛知工科大学へ伺いました。そこには、今春新しく赴任された奥山先生がおみえになり、現在、世界初のチャレンジとなる金星探査衛星の製作を進めていること、蒲郡市内で星や宇宙に興味があり、アルミニウムの加工が得意な町工場を探していることをお話いただき、ネットワーク会議を通じ、対応できる会社を紹介してほしいとのご依頼をいただきました。
私は、お話を伺った瞬間に、体育会のノリで、「協力します。」とご返事していました。

当社は、今年で創業55年になります。
蒲郡市内にある光学機器、医療機器関連メーカー様の協力企業として、私の父が創業しました。以来、一貫して、精密機器部品の製造企業として、多品種少量の部品加工に従事してまいりました。その間、作った部品点数は、数十万種に及び、社内には経験に基づいた提案力、技術力があります。
当社では、5年前から社長ブログを始めました。
ブログでは、毎日の出来事やモノ作りへの思い、経営姿勢など、いろいろなことを書き綴っています。一昨年の春頃から、私は、時々“NASA(アメリカ航空宇宙局)と仕事がしたい!”とお話するようになりました。
この頃は、航空宇宙の仕事をすることなど考えも及びませんでしたが、私の中には、NASA=技術力の高い仕事というイメージがあり、いつかはNASAに認めていただけるような技術力の高い難しい部品加工をこなせる企業になりたいと夢見るようになりました。
そうしていると、まもなく私のブログをご覧になった国立研究機関の方から、「私はNASAじゃないけど、衛星のパーツを作っています。ぜひ協力して欲しい。」と部品の製作依頼をいただき、後日無事納品致しました。

昨年の11月には、国立天文台から国際的なプロジェクト「ALMA計画」に使用する電波受信装置の部品を受注し、現在も製作を続けています。
「ALMA計画」(アルマと読みます。)とは、南米チリの標高5千メートルの高地に、80台の直径12メートルの電波望遠鏡を設置し、この80台のアンテナを干渉方式という特殊な方法で組み合わせ、ひとつの巨大な電波望遠鏡を合成して、現在存在する最も解像力が高いハワイにある“すばる望遠鏡”の10倍の高性能な望遠鏡を作ろうという壮大な計画で、アメリカ、ヨーロッパ、日本が参加しています。これが完成すると、大阪から東京に落ちている10円玉を見分けられるほどの性能が実現します。
遠くの光が見えるということは、時の流れをさかのぼり、宇宙の誕生を探ることも可能です。ALMA計画が実現すると、天文学のみならず、宇宙空間に漂う物質を調べたり、生命の起源を解明したりと物質化学、生命科学の分野での貢献も期待されています。
このように、当社では、いろいろな方々とのご縁をいただき、徐々に、星、宇宙にかかわる仕事との関係が深くなってきました。

話を戻し、改めまして深宇宙探査機UNITEC‐1について、もう少し詳しくお話しようと思います。
今回の衛星打ち上げの試みは、東京大学の中須教授を理事長とする20の大学、高専が集まったNPO法人“大学宇宙工学コンソーシアム”が進めているプロジェクトです。
各大学、高専は、それぞれの役割を分担し、来年5月に、鹿児島県にある種子島宇宙センターより、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が打ち上げる金星探査機Planet‐Cに相乗りさせていただき、HU‐Aロケットで宇宙へ放出される予定です。
うまく軌道に乗れば、約200日後には、金星の近くまで到達する予定です。この間、UNITEC‐1に搭載されている複数の大学が開発した宇宙用コンピュータは、深宇宙での強い宇宙線にさらされながら、どこまで耐えうるかの実験が行われます。また衛星は、常に微弱な電波を発信し続け、これをアマチュア無線愛好家が受信することで、世界中の方々にプロジェクトに参加いただくことも予定されいてます。

今回、当社が作る衛星の部品は、添付図にあります構造系の内側パネル、上面、下面パネル、側面パネル、衛星固定用のガイドポールが主なものです。側面パネルは、CFRPと呼ばれる炭素繊維樹脂で、それ以外は、特殊なアルミニウムです。これらは、ミッションの成功を左右する重要な部品であり、責任の重さを感じています。
今回の取り組みが成功すると、今までの数十分の一の予算で、人工衛星開発ができることが実証されることになり、日本の航空宇宙産業の発展に大きく寄与することが期待されています。

今後の予定ですが、7月末に組み立てが終わっており、8月末を目処に、ロケットで打ち上げる際の振動に耐えうるかどうかの振動試験や強い宇宙線にコンピュータが耐えうるかどうかの試験などを終え、9月から11月にかけて、実際に宇宙へ行くフライトモデルの製作を行います。
その後、3月までいろいろな試験を繰り返し、打ち上げに備えます。

当社は、今後も継続して衛星開発に取り組んでまいります。
応援よろしくお願い致します。

株主には、経営者、社員、機関投資家、一般株主があり、これらが企業の求心力に結びついたとき、企業価値を高めるのである。そして企業は経営者の強いリーダー・シップによりこれらの人々と共有している“志”や、目的・目標を育んできた相互信頼が大切であり、目的を分かち合う人間集団の場であってこそ、その力は発揮される。


■関連サイト紹介

UNITEC‐1のサイト

愛知工科大学 奥山研究室

アルマ計画(国立天文台)

社長ブログ

経営者会報ブログ