「販売・マーケティング」
厳しい時代の、商店街活動と小売業の役割【第一回】
長谷川 道春 記事更新日.10.09.01

株式会社ブレーンプランニング代表取締役
マーケティング プランナー

■PROFILE
愛知県特許等活用製品事業支援事業委員会等 知財 関連各委員、
有望ビジネス事業化サポート事業 委員長((財)あいち産業振興機構) 他
豊田商工会議所専門指導員 他、県下商工会議所で経 営相談にあたる。
地域興し、商店街活性化計画推進、一店逸品運動企 画指導、繁盛店づくり。
企業、団体等で講演、研修セミナー講師。商品開発、 販促計画などに取り組む。
経済紙(誌) 等で執筆多数。
連絡先:〒461-0001 名古屋市東区泉一丁目8−2 澤田ビル
電話 052-951-3321  FAX 052-971-3336
E-mail info@brain-p.co.jp
http://www.brain-p.co.jp  
T.住みよいマチづくりに欠かせない、商店街の存在
1)人口の都心回帰は、商店街にとってチャンス!
歩いて行ける範囲を生活圏と捉えた都心の利便性が見直され、中・高年者や単身者を中心に都心回帰がすすんでいる。主な要因として、
・コンパクトシティ構想や、中心市街地の適切なダウンサイジング戦略等、ヒューマンスケールな職住近接型の街づくりがすすんだ。
・都心部の居住環境の充実、地価の下落により住宅(マンション)の価格が手頃となった。
・買い物が便利、医療機関や公共施設、文化施設の充実の他、公共交通網が整備されてマイカーが不用、友人達と集まるのに便利、等がある。
都心回帰の傾向は大学も例外でなく、都心にキャンパスを戻したり、サテライトキャンパスを置く大学が増えている。こうした都市生活者の増加は、衰退傾向にある中心市街地、とりわけ商店街にとって、新しい需要に応えるビジネスチャンスの到来と言える。

2)電話1本で「さあ、どうしよう!?」を、解決する「ご用聞きビジネス」を!
人口の都心回帰で、街中での買い物の機会が増えているが、旧態然とした商店街は"活気がない、生鮮食品がない、サービス精神に欠けている、営業時間もバラバラ"等、不満が多く、日々の暮らしの支障となっている。
特に、出掛けられない・動けない高齢者や、ハンディキャップを持っている人、単身者・共働き世帯では、日常生活に必要なモノが買えない「買物難民」現象を生み、社会問題となっている。

■お客さまの困った!に、ご用聞きで顧客を囲い込む「配達・引き売りサービス」が伸びる
日常生活に必要な商品(特に生鮮食料品)やサービスが、いつでも受けることができる「配達サービス」が、高齢者や共働き世帯、単身者を中心に需要が伸びている。
@「行きたくても、移動手段(足)がない」
A「重いモノが持てない」
B「買い物に行く時間がない」
C「食事が作れない」等のニーズに
「電話一本で商品を届けてくれる」「かゆい所に手が届く」キメの細かい生活支援サービスである。
江戸期の商人が、生き抜く知恵と努力で生み出した「ご用聞き」「引き売り」「配置販売(富山の薬売り)」は、かつては、どこの地域にも見られた風景であった。
近隣の顧客(お得意さま)を相手に注文を聞き、商品を届ける商法は、顔が見える信頼関係を基盤として、顧客をしっかり囲い込む巧みな仕組みである。
先人の知恵に学び、IT(情報通信技術/パソコン・ケータイ電話等)や、電話・FAXを使った「新しいご用聞き・配達ビジネス」は、生活者のワガママに応える新しい販路戦略であり、待つ商売から、お客さまに近づく行動的商法は、商店街や商店にとって新しい販路(市場)を拓くチャンスとなる。

◆「事例紹介」
●Jマート(上条ストアー(協)):食品スーパー
(春日井市上条町2-172 電話:0568-83-4881)
 ・「愛・未来・夢・福祉号」で、配達サービス(無料)。
地域密着ローラー作戦で、商圏内シェアの拡大に 成果を出している。
(現在は高齢者・障害者が対象であるが、近日に一般 消費者にも対応する予定)

●高丸食品:納豆・食品
(大府市共和町清水口22-1 電話:0562-46-5025)
URL / http://www.medias.ne.jp/~fwng0718/
・毎日、定時に決まった場所への「引き売り」で、 お客さまとの会話も弾み、固定客も増え売り上 げも順調!
・取り扱い商品は自家製「納豆」の他、大豆加工 食品、無添加食品など「コダワリ食品」一式。
・毎週土曜日は店頭で朝市を開催し、「宅配」サー ビスも好評で急伸中。

3)「所有と使用」の分離により、魅力ある商店街に!
商店街の活性化は、ハードの整備に重点を置いた「マチづくり」では成功しない。来街者が減り、空き店舗ができたのは「街に魅力がなくなった」からではないか。一方、地域の資源(立地)と知恵を活かし活気を取り戻した商店街が、各地で見られるようになった。商店主は、地域型商店街の果たすべき役割と使命を自覚し、責務を果たすことで、街の再生は可能となる。

■行くだけで楽しい、ぶらぶら歩きが嬉しい、ワクワクする商店街とは…
@「街並みがキレイ! 素敵な暮らしを見つけることができる」
A「個性的でおしゃれな店や話題の商品が揃っており、この街だけで用が足りる」
B「本物・手作り、高い品質の商品がある」
C「お値打ちに買い物ができる」
D「心のこもった接客サービスと、気配りが行き届いている」
E「買い物以外の楽しみ、イベントや祭りがある」
F「地域に根ざした伝統や文化に触れることができる」等。

●まちづくり会社で、元気な街を運営
多くの商店街で近代化がすすまない理由のひとつに、「地主=商店主」の権利構造がある。
この壁を取り除き、地域を再生する手法として商工会議所や第三セクターが主体となったTMOや、商店主たち民間の関係者が中心となって立ち上げた「まちづくり会社」がある。
商店街をひとつの事業体として運営(経営)し、継続的、持続的に地域を動かし変えるデベロッパーとして、空き店舗や後継者の居ない施設に有力なテナントを誘致する。「所有と使用」の分離による「魅力ある専門店の集積」をすすめ「地域の歴史・文化を伝承する催事」等で、街の空洞化を防いでいる。
また、次世代の人材育成、地域住民との交流の場やイベントを実施することで、わざわざ行きたくなる楽しいショッピングエリア(商店街)にするのが目的で、「まちづくり会社」や「TMO」は地域活性化の担い手である。

●近代商法が忘れかけている何かがある「会津復古会」
商店街に逆風が吹くなか注目される活動に、会津若松市の「会津復古会」(昭和46年9月20日発足)がある。 頑固一徹、昔ながらの商人道を守る老舗の集団で、昔ながらの店構え、風に舞う「のれん」が目印となっている。のれんをくぐると、温かな雰囲気と飛び交う会津弁、心あついおもてなしには、近代商法が忘れかけている何かがあり、地元はもとより、新しい旅の発見として観光客にも人気となっている。