中小製造業は完成部品化で活路を開く(第2回)
小藤 省吾 記事更新日.11.02.01
小藤経営労務事務所
■PROFILE
1957年愛知県生まれ
中小企業診断士、社会保険労務士として企業の経営戦略、組織活性化、現場改善、労務管理のコンサルティングを行うと共に、企業、経営者団体の研修セミナー講師として活躍中。現在労使が力を合わせて作る「人を育てる人事制度」の普及、コンピテンシーを用いた組織活性化支援に力を注いでいる」

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■ネットワークで完成部品化を目指す
先回はこれからの中小製造業が仕事を確保していくには完成部品での納入で発注企業の手間を省き管理コストを削減する提案ができるかがポイントと述べました。

一次協力工場であれば協力工場を活用して完成部品化を図っている企業はありますが、二次、三次協力工場で完成部品として納入できる体制を整えている企業は数少ないと思います。
完成部品になるには多くの加工工程を経ています。中小製造業の多くは機械加工、焼入れ、研磨、製缶、溶接等それぞれの加工工程を専門に行っており一社だけでは完成部品として納めることはできません。
そこで考えられるのがそれぞれの加工工程を行っている企業がネットワークを組み完成部品に対応する共同受注方式です。これは決して新しい取り組みではなく、今までも機械加工を受注した企業が研磨や焼入れを知り合いの企業に頼んで行い取引先に納入することがありました。ネットワークによる共同受注とはこの状況をより進めて完成部品として納入できるようにすることです。
愛知県の中小製造業は自動車メーカーや工作機メーカー等の協力工場として厳しい要求に答えるべく物づくりに取り組み、その品質、技術力、コスト対応力は全国的にも高く評価されており、まさしく「ものづくり王国愛知」を支える存在といえましょう。今まで培ってきた技術や経験を活かしネットワークを組み完成部品に対応することは価値のある取組といえるでしょう。
 

■ネットワーク化の問題点と課題
中小企業のネットワーク化については、「中小企業白書2008年版 第3部地域経済と中小企業の活性化 第3章新たな連携やネットワークの形成に取り組む中小企業」で中小企業のネットワーク化の現状と課題をとりあげており、「経営資源に限りのある中小企業が持続的に成長していくために一層重要になっている」としています。

今まで数多くの企業が企業間のネットワークで共同受注体制を作り付加価値の高い仕事に取り組もうと努力をしてきました。またこれから共同受注体制を作り新規受注や新分野への進出を考えている経営者も数多いと思います。
しかし現実に取り組んでみると、また取り組もうとすると数多くの問題点が浮かんできて、十分な成果が上がられないまま活動が中止になったり、構想だけで終わってしまうケースが多いようです。
 


■ネットワークにより成果を上げるポイントは
すぐにでも仕事に結びつけようと取り組んだのに、会合ばかりで「いつまでたっても仕事に結びつかない」、窓口になったことにより取引先やパートナー企業との打合せに時間が取られ、時間や手間、経費を考えると赤字になってしまう、幹事役を引き受けたため「成果以上に自社負担が大きい」、連携したことで価格面での競争に柔軟に対応できなくなり「自社の業績向上につながらない」等の問題点が挙げられました。
また連携実績の有無にかかわらず「最適な相手が見つからない」ことを課題とする企業も多く、パートナー選びも大きな課題となっています。

この問題点・課題からネットワークによる共同受注で成果を上げるポイントには
@上げたい成果を明確にする
A最初から理想を求めず実現可能なことからスタートする
B特定の企業に負担がかからない仕組みをつくる
C危機意識や問題意識が共有できるメンバーをパートナーとする
Dコーディネーター的な役割を担うキーパーソンを据える
E企業の努力は求めるが無理な協力を強いらない
等が考えられます。

次回は成果を上げるポイントについて具体的に考えましょう。

(3月1日更新)