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 古(いにしえ)の伝統と半歩先の未来
記事更新日15.03

代表取締役      富田 清治
営業企画室長    富田 晋介

【問い合わせ先】
株式会社南山園
愛知県安城市藤井町南山20番地
TEL0566-99-0128・FAX 0566-99-3199
HP http://nanzanen.jp/
印刷用ページ

 

 今回はお茶に『古(いにしえ)の伝統と半歩先の未来』を込めた「あいちの製品紹介」です。
西尾の抹茶は愛知県地域ブランドに定着しています。そのブランド化の一翼を担った企業が株式会社南山園(以下南山園と称す)です。

南山園は西尾市内を流れる矢作川の右岸にあります。その矢作川左岸も含めた一帯の温暖で肥沃な土地に茶畑がひろがっています。同地域には、抹茶生産のルーツとなったお寺(紅樹院には、西尾茶の原樹が大切に保存)があります。

社名である南山園(創業昭和10年)の由来は、創業地である安城市藤井町南山の地名説と漢詩からの引用〔陶 淵明(とう えんめい 中国の南朝宋の文学者)の有名な漢詩 飮酒二十首 其五の中にある一節「悠然見南山」(訳:悠然として南山を見る 遠く遥かに廬山が目に入る)〕による説があります。

 

南山園は自社の茶畑から採れる茶葉を原料として、加工・販売まで一貫生産体制です。しかも、ISO22000認証取得の衛生的な環境で、安心・安全な抹茶を生産しています。
また、自社茶園だけではなく、契約栽培農家様に対しても栽培日誌の作成を義務化しています。いつどの様な栽培管理を行ったか確認出来る様になっており、原料茶から抹茶までのトレーサビリティ体制を確立しております。

※ISO 22000
HACCPの食品衛生管理手法をもとに、消費者への安全な食品提供を可能にする食品安全マネジメントシステム(FSMS)の国際規格です。食品の安全な提供にまつわるさまざまなリスクを低減し、顧客からの信頼を獲得できます。


※HACCP
1960年代に米国で宇宙食の安全性を確保するために開発された 食品の品質管理の方法です。Hazard Analysis(危害分析) and Critical Control Points(重要管理点)の略で、食品の製造工程において発生する危害を分析し、その危害を抑え込む方法を決め、その方法を継続的にチェックすることで、安全な食品を作り出そうとするものです。

 

■ 茶畑から始まる抹茶生産
 南山園の抹茶生産は、畑の土作りから始まります。肥料会社と共同開発した独自の有機肥料を使っています。1年間かけて手入れ(メンテナンス:除草、深耕、整枝作業等)をする結果、地上1.2mくらいまで成長させ、5月の茶摘みを迎えることができます。

茶の木の寿命は人間より長いですが、美味しい葉を求めるため数十年毎に植え替えを行っています。

4月から5月にかけて茶畑に段階的に覆いをして、お茶の木に日光を当てないように栽培します。

日光を遮られたうす暗い畑の中で栽培する事により、葉に渋みの成分であるタンニンが少なくなり、旨み成分であるテアニンが多くなります。ちなみに昔は葭簀(よしず)と藁(わら)を使って遮光していました。
■ 抹茶とは

  「抹茶」の原料となるお茶は「碾茶(てん茶)」といい、「玉露」と同じように長期間覆いをかけられて育てられます。また「碾茶(てん茶)」は一般的な煎茶等とは異なり、揉まないで作られるお茶です。即ち、覆いをかけて育てられ、揉まない茶葉を石臼で粉砕加工して作られる「お茶」が抹茶です。





■ 宇治抹茶の定義 VS 西尾の抹茶の定義(ブランドの確立)

 碾茶(抹茶の元)生産量では宇治茶が勝っています。また、宇治茶として強いブランド力を持っています。しかし、詳しく見ると意外な事実がありました。純粋な地元産のお茶の生産量では西尾が勝っているのです。

宇治茶は、「歴史・文化・地理・気象等総合的な見地に鑑み、宇治茶として、ともに発展してきた当該産地である京都・奈良・滋賀・三重の四府県産茶で、京都府内業者が府内で仕上げ加工したもの」です。換言すると「茶葉 (荒茶)の産地」 (原料原産地)が京都府・奈良県・滋賀県・三重県であっても、京都府業者が京都府内で仕上げ加工すれば、「宇治茶」になります。(地域団体商標 (第5050328号)商標権利者:京都府茶業会議所)

 一方、西尾の抹茶は「愛知県西尾市・安城市・幡豆郡吉良町で生産された茶葉を同地域において、てん茶加工・仕上げ精製し、茶臼挽(ひ)きした抹茶」を指します。

西尾市と周辺地域の特産である「西尾の抹茶」が、特許庁の地域ブランド(地域団体商標登録制度)に認定されました。茶の分野で抹茶に限定した地域ブランドとしては全国で初めてです。(西尾市茶業組合)

■ 旬には24時間操業(生産には匠の技が必要)

 抹茶になるまでの工程は次の通りです。

@摘まれた茶葉は、限られた時間内に蒸気で蒸して乾燥させます。蒸すことにより茶葉の酸化を止め鮮やかな濃緑色となります。

A蒸しあがった茶葉は、乾燥炉の中で乾燥させます。こうして出来上がったものを抹茶の原料「碾茶(荒茶)」といいます。

B荒茶には、葉脈・茎が含まれています。この、葉脈や茎・古い葉や枯れた葉を取り除き、葉肉の部分のみをとりだし、形状を整えます。これを、「碾茶(仕上茶)」といいます。

C碾茶を石臼で「抹茶」に挽きあげます。できあがった抹茶は、非常に細かい微粒子です。 約4ミクロンという細かなお茶の粒子が出来上がります。石臼で挽いたものが、口当たりや味・香りがもっとも優れています。石臼は、昔から形の変えない唯一の道具です。(近隣である岡崎の御影石を使った石臼を使用するため、抹茶は地場産業の合体でもあります。)

農産物でもある茶葉は鮮度が命です。そのため、茶摘みのピーク時は24時間操業も行います。他方、蒸し加減を判断する、碾茶の性質を判断してブレンドするなど、茶師と呼ばれる匠の仕事です。この茶師が多数在籍していることも南山園の強みです。

茶摘みは年に2回、30日間程かけて行われます。簡単には匠の域には到達しません。技術の伝承、人の育成に如何に長い時間を要するのか。これは職人の世界そのものです。また、石臼は時間とともに臼の溝が摩耗します。ノミを使っての手入れも自前であるため、職人の技が受け継がれています。

ここには近代的な工場管理システムを有しながら足元を大切にする精神があります。自動車や時計を製造する大企業には、必ず手作りで製品が作れるマイスターが存在しています。その思想が製品品質に信頼を与え、世界から絶賛されているのが「クールジャパン」です。南山園の抹茶製造はまさにクールジャパンと呼ぶことができます。
石臼で挽かれた抹茶の粒子は4ミクロンという細かさです。しかもそれを丁寧に袋に詰めています。使用される用途やお客様によってニーズが異なるため、細かな対応ができるように加工し、手詰めをしています。



■ 半歩先を見据える姿勢

2007年から2008年にかけて牛肉偽装事件、中国冷凍餃子異物事件等食の安全が再認識させられた事件が発生しました。食品安全に対する危機感を感じた社長は、当社商品の安全性を証明するため、認証取得を検討しました。  

実際調べてみると、認証取得のために求められる基準の高さは想像を超えるものでした。当初は既存工場内での導入を想定しましたが、様々な基準を満たすため、新工場を建設するに至りました。

2007年、HACCP(ハサップ)対応碾茶精製・抹茶製造工場の操業を開始しました。食の安全が揺らぐ雪印事件があり、HACCPの存在が再認識され、取り上げられる機会が増えた時期でもあります。この工場には、抹茶業界初の光学式異物除去機を導入しました。その結果、2009年にHACCP(ハサップ)の食品衛生管理手法をもとにしたISO22000認証を取得することができました。

併せて「ロハス」が流行語となりました。
環境を考えて敷地内に高さ30mの風車(名前は風茶くん)を設置しました。最大出力時で民家40軒分の電力をまかなうことができます。 また、工場から出るごみから堆肥を作り、肥料として茶農園へ還元する仕組みを構築しています。

■ 会社に和室(製品が日本の文化)

 本社2階には20畳ほどの和室があります。取材した当日も従業員を対象にしたお茶のお稽古が開催されます。定期的に外部から講師を招いて茶道を学んでいます。お茶は日本の文化でもあり、製品に隠れた伝統を学ぶことは品質の向上へとつながります。


■ 製品について(差別化の工夫)

・2012年 2013年 2014年 3年連続して、「抹茶 青海の昔」がモンドセレクション金賞を受賞しています。

・JR名古屋タカシマヤ店をはじめ日本各地及び海外出店しているパティスリー・サダハル・アオキ・パリのチョコレートに南山園の抹茶が使用されています。(取材した2月の前半はバレンタイン商戦でJR名古屋タカシマヤは賑わっていました)

・今日では抹茶は様々な用途に使用されています。南山園では、用途に合った抹茶を多数揃えています。例えば、加熱をしても鮮やかな緑色を保つ抹茶や、吸湿を抑えたデコレーション専用抹茶、抹茶を使用したスポンジ生地のふくらみを改善したスポンジ生地専用抹茶などです。

■ 直営店舗(お客ニーズを直接把握)

 茶々屋アピタ安城南店と茶々屋ヴェルサウォーク西尾店の2店舗を運営しています。取材当日はアピタ安城南店に足を運びました。スタッフ女性がお茶の試飲サービスを行っており、奥には抹茶をふんだんに使った甘味を楽しめる茶店があります。

■ あいちの製品

 ものづくりが強い愛知県は「製品」に培った工夫や伝統、技や先端技術を上手く取り入れています。今回の南山園は製造ラインをしっかり持ち、しかも技術力ある匠がラインを支えながら地球にやさしいエコを織り交ぜて近代的衛生技術が品質を保証しています。農業品でありながら工業品の考え方を製品に取り入れた「あいちの製品」です。

 

http://nanzanen.jp/
http://www.aichi-brand.jp/corporate/type/beverages/nanzanen.html

(愛知ブランド企業)

 

 


 

取材・文 YA(ワイエイ)ビジネスサポート 杉本 安行

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