プレス加工で未来へと続く愛知の製品
記事更新日16.05

代表取締役 石川 守彦

【問い合わせ先】
株式会社三洋電機製作所
愛知県小牧市大字横内字下割子287-3 
TEL 0568-72-6261・FAX  0568-73-3473
HP http://www.sanyo-dss.co.jp/index.html


今回は愛知の産業に関係が深い、自動車部品とパチンコ部品に関係する「あいちの製品」です。今も「あいちの製品」ですが、工夫とアイデアでこれからも続く「あいちの製品」でもあります。

株式会社三洋電機製作所(以下:三洋電機製作所)は、名古屋高速小牧北出口、又は名神小牧I.C.を降りて、国道41号線を犬山方面へ進み、3つ目の信号(T字路)を右折、200m直進した左側にあります。車でのアクセスが抜群な立地にあります。

1953年8月名古屋市北区に、自動車用電装部品及び乾電池ブザーの製造を目的として、三洋電機製作所を設立しました。

1969年7月名古屋市北区浪打町に浪打工場を新設し、金型製作を強化しました。そして1983年4月小牧工業団地に土地(6,893u)を取得し、金型・プレス工場(1,046u・現第2工場)を新設しました。

2000年12月小牧工場に事務所棟(282u)を新設、本社を名古屋市北区から小牧市へ移転し、翌年4月浪打工場での生産を小牧工場へ全面移管しました。

三洋電機製作所は、乾電池ブザー(警報機)、スイッチからスタート。そしてデンソーへホーンホルダの納入を開始して「自動車部品」との関わりが始まりました。その後はパチンコ台のハンドル部分にも関わりが生じました。当にこの2つは愛知県を代表する産業でもあります。

会社の沿革を説明する熱心な石川社長が取り出したのが少し色あせた箱です。それは創業当時に思いをはせる火災報知器です。


  


■ メッセナゴヤ2015に初出展

「プレス加工の限界に挑む」をモットーに、3つの提案を準備して初めて出展しました。

@ 汎用プレス機を使い、精密せん断工法による、全せん断無切削化ギヤ
A 工法転換による、プレス化製品
B SUS材のパンチング、絞り加工など

その中でサーボプレス300tを使用した「開発品」に注目が集まりました。


  


サーボプレス300tは、二軸を独立で制御することにより、従来のメカプレスでは不可能な高い精度を実現する性能を備えています。
メカプレスと違い、スライド速度を遅くしても許容仕事量は低下しないので、深絞りが必要な製品の加工にも十分に対応できます。また、スライドの駆動部をサーボモータで制御することでスピード・位置・加圧力を任意に設定する事もできます。


  


  


■ 開発品の穴を見て

メッセナゴヤ2015の期間中、上述の開発品を手にしたに来場者が必ず口にすることがあります。この硬さの材質でこの歯車形状をプレスする技術も凄いです。それ以上に中央の円形はどのようにプレスするのか?このような質問を多数頂きました。
これは企業秘密であり、公表できないと石川社長は丁寧にお断りしています。ここに製品づくりの隠れた工夫が潜んでいます。

  


■ 深絞りに角絞りを融合する

材質SPCE 板厚t1.6をプレスした開発品です。SPCEは加工性に優れた冷間圧延鋼板の中でも、特に成形性・加工性に富んだ鋼板で、深絞り加工用の鋼板ともいわれます。深絞りに角絞りを加えることは容易ではありません。
角絞りは、正方形が基本形状です。長方形になると直辺部は短辺と長辺とに区別され、角絞り製品の加工は短辺を基準として考えます。短辺と長辺の差、絞り高さおよびコーナー R が主な加工難易判断の要因に挙げられ、それをクリアーして出来上がります。


  

■ 提案事例
    


引抜き材からプレス加工に変更提案した製品です。2cm四方の大きさです。工場内では自動化によりガチャン、ガチャ、ガチャと複数回プレス音が響いた後でこの製品が出てきます。本当に驚きです。


    


抜きからカシメ接合までを手掛けた製品です。高さ6cmほどの円柱形です。思わずアニメ「サザエさん」が頭に巻いているカールを思い出しました。材質SECC、板厚t0.3を抜いて平らに保ち、それを瞬間にカシメ接合します。これもガチャン、ガチャ、ガチャと複数回プレス音が響いた後でこの製品が出てきます。従来は溶接接合した製品です。工程削減とコスト削減を実現しています。

    



■ 製品展示室

本社の2階に製品展示室があります。写真向かって左がポートメッセで展示した開発品です。中央は岐阜大学と産学官連携による提案型企業を目指して取り組んでいる製品です。右側はこれまでに実績を得てきた製品です。

    


※産学官連携 岐阜大学工学部と共同研究。


■ 製品を支える金型製造技術

プレスには必ず金型が必要です。それを自社で製造、メンテナンスを行っています。ここにプレス製品を支える理由があります。


■ 取材を終えて

若い経営者です。しかし話し出すと製品に対する工夫と思い入れに満ち溢れ、話が止まりません。プレスは量産品であるために、アイデアでコスト削減を生み出す必要があります。企業秘密ではありますが、時々コロンブスの卵的な発想で製品のコスト削減を生み出しています。

工場内を案内頂きました。プレスだけではありません。関連する溶接組付についても工程設計から設備設計まで自社で行っています。具体的には自動溶接工程、ナット自動溶接工程、単発溶接工程です。また、空間を区切ってのセル組付工程も取り入れています。

株式会社 三洋電機製作所


 

取材・文 YA(ワイエイ)ビジネスサポート 杉本 安行