一粒一粒に値段のある有松絞りの奥深さ

記事更新日17.05

代表取締役 山上 正晃

【問い合わせ先】
株式会社 山上商店
名古屋市緑区有松3573番地
TEL 052(623)2186
HP http://www.arimatsu-shibori.com/

今回は有松絞りを活かした製品紹介です。400年前からこの愛知県に根ざした特産品、そして伝統産業でもあります。伝統を残しながらモダンな感性にあふれた製品でもあります。さらに、一粒一粒に値段のある有松絞りの奥深さに驚き、国内だけでなく、有松絞り製品を積極的に海外へも情報発信しているあいちの製品紹介です。


  



名鉄名古屋本線の有松駅を下車し、東海道宿場町の風情を残した街道を10分ほど歩くと株式会社山上商店があります。まちづくり関連の行政対応ができており、地元の郵便局にも有松絞りの暖簾が掛かっています。
創業は昭和元年(1925年)です。(創業100年を超える企業が多く残っている地域であり、驚くことではないようです。)


  


■ 3代目

祖父の時代は反物を中心に商いを行い、浴衣へとシフトしました。父の時代は浴衣、羽織、小物雑貨(団扇、ハンカチ、スカーフ、日傘など)を扱いました。そして現在の3代目は新たなブランド「CUCURI」を立ち上げて企画・生産・販売を行っています。具体的には生地、裁断、縫製に関する全てをデザインするコンセプトにより製品づくりをしています。冒頭にあるニューヨークNOWもその一つです。



■ 和装アパレル

全てがモダンアパレルではありません。ベースは和装アパレルです。会社の2階には扱っている商品のサンプルなどがあります。


  


■ 有松絞りとは

絞りの町有松は、江戸時代の初め、徳川家康が江戸に幕府を開いてまもない慶長13年(1608年)に、絞り開祖竹田庄九郎らによって 誕生しました。有松絞りの歴史は、尾張藩が有松絞りを藩の特産品として保護し、竹田庄九郎を御用商人に取り立てたことからはじまりました。

旅人が故郷へのお土産にと、きそって絞りの手拭、浴衣など を買い求め、これが街道一の名産品となり、その繁栄ぶりは、北斎や広重の浮世絵にえがかれましたが、鳴海の宿は有松を描いたもので、「名産有松絞り」と記してあります。

昔の繁栄と、日本建築の美しさを今に伝える町並みは、200年を経過した貴重な文化財です。その景観は、名古屋市の町並み保存指定第一号として、また全国町並み保存連盟の発祥地としても知られています。(有松・鳴海絞会館 ホームページより転用)
・2013年3月:東海道の無電柱化を実現、江戸時代の佇まいがよみがえる。
・2016年7月:国の重要伝統的建造物群保存地区に指定。

■ 有松絞りの工程

柄(図案)の決定 型彫り(模様を切り抜いて穴をあけて型紙を作る絵刷り(出来上がった型紙を布の上に置き、刷毛で青花を模様に刷り込んで写す)括り(くくり:地元の農家へ次々と廻されて、加工される。

また技法により様々な加工方法及び道具を使うため100種類以上の技法があると言われる) 染色(専業の染屋によって各種の染色が行われる) 糸抜き(糸抜きは布の破損に注意して手早く行う)仕上げ(蒸気を絞りの裏から当てながら縮んだ布を広げる)
(有松・鳴海絞会館 ホームページより引用)

山上商店にて括りと糸ぬきのサンプルを拝見しました。写真の下部が糸ぬき前 上部が糸ぬき後です。しっかり巻かれた糸と抜かれた生地の肌触りに感動しました。


  


■ 国際絞り会議

1992年に発足された会議で記念すべき第1回目が名古屋(国際会議場と鳴海・有松地区)で開催されました。日本の有名デザイナーが絞りの凹凸を活かすことを提案し、木綿以外の化繊にも対応できる圧窯の開発が進みました。

山上商店にて化繊の有松絞り生地に触れました。その立体感に驚くとともに独特感も味わいました。この折り目は消えることがなく、まるで形状記憶の様です。
    


■ 生地を形にする

100以上ある技法の中から主に40前後の技法を使って生地に形を与えます。写真は板を使って絞る工程の説明です。無地の生地を規則的に畳み、2枚の板で挟むことで生地に畳みシワを形状固定させます。その後縫製して製品化したものです。

    


    


■ 20代〜40代の女性をターゲット

2014年にCUCURIブランドを立ち上げました。2015年、その評判からJR高島屋の8階ローズパティオにて展示販売の機会を得ることが出来ました。翌年2016年も同様の機会を頂きました。当初は40代を想定していましたが、20代後半の女性からも好評を得ました。今では20代後半から40代を対象に製造しています。

■ デザイナーとの出会い

その当時、有松絞りのことをあまり知らないデザイナーの「今井 歩」さんと出会ったことがCUCURI誕生につながっています。型から生地、そして縫製加工とトップダウンでモノづくりする従来の工程に捉われず、ボトムアップの発想でデザインします。つまり、有松絞りを使ったこのような服を作りたい、だから絞りの技法はこれでやろうという発想に至ります。

■ 取材を終えて

山上社長は地元の繊維専門商社「瀧定名古屋株式会社」に勤務し、2012年に三代目として立ち上がりました。100種類を超える括りと染色だけでなく、化学繊維を使うこと、形状加工(ヒートセット、塩縮、縮絨)やオパール加工を組み合わせるなど、新しいことに向かっています。その結果、株式会社山上商店は、平成28年度第1回 あいち中小企業応援ファンド助成金の対象に選ばれ、その資金を使って伝統工芸有松鳴海絞の技法を用いた新商品開発と販路拡大へとつながりました。

括りの一粒一粒に手間ひまとお金がかかっているから大切に扱う必要があること、そしてB級品(一部の染色の不良や糸ぬき作業ミスによる僅かなキズなど)に加工を加えて「B級品」を大切に扱っている話を通じて、地場産業と伝統産業を守るそして広げる姿勢を感じました。

参考 株式会社山上商店ホームページ
    有松・鳴海絞会館
    マガジンハウス

 

取材・文 YA(ワイエイ)ビジネスサポート 杉本 安行