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地球環境にやさしいリサイクルはみんなの手で

記事更新日17.09

代表取締役会長 伊原 歳博

【問い合わせ先】
株式会社イハラ合成
名古屋市昭和区白金3-2-26
TEL 052-882-1838
HP http://www.ihara.co.jp/information.html
印刷用ページ

今回は廃プラスチックのリサイクルから誕生した「あいちの製品」紹介です。
伊原商店は昭和50年に創業し、再生プラスチック回収加工販売を開始しました。その後、有限会社イハラ合成を経て、平成10年にルーダー機を導入してPCの再生ペレット加工を開始しました。また同年、株式会社イハラ合成として組織変更し、平成14年に武豊工場を新設しました。この武豊工場にて伊原歳博会長からサビ取りブラシ、バリ取りブラシについてお話を伺いました。


  


■ 自動車産業から出る多量の廃プラスチック

愛知県内にはトヨタ自動車以外にホンダ、三菱の自動車工場があります。そのため、愛知県には自動車部品を製造する大小さまざまな企業が存在します。製造部品の中でプラスチックを使用した部品も多数あります。自動車産業は品質管理を図っているため、恒常的に不良品が排出されますが、その再利用にも知恵を絞らねばなりません。この排出されたプラスチック部品を再生し新製品として蘇らせるものこそ、もう一つの「あいちの製品」と言えるのではないでしょうか。


■ 大学と「高性能リサイクルプラスチックに関する研究」を開始

汎用性プラスチックを回収してリサイクル原料として加工販売する企業は、景気の影響を大きく受けます。事実、リーマンショックでは経営のかじ取りに苦労しました。そこで新たな高性能プラスチックの回収加工へとシフトするために、数多くの大学研究室へ足を運び、名城大学:榎本和樹先生、信州大学:後藤康夫先生、あいち産業科学技術総合センタ−:福田徳生先生からご指導を頂き、 また、中部生産性本部「革新的製品創出サロン」からは、浅井滋生顧問、四本喬介コ−ディネ−タ−からもご助言、ご協力を頂き、今回の製品開発ができました。


■ 製品紹介

写真の左は「サビ取りブラシ」 右は「バリ取りブラシ」です。比較参考に置いた缶コーヒーの大きさから細くて小さなブラシであることが分かります。


 
 

■ ブラシの凄いところ

廃棄される高性能ガラス繊維強化プラスチックには、細くて腰が強いガラス短繊維(長さ数百μm)が練り込まれています。このガラス繊維強化プラスチックから線材を作り、さらにブラシにして加工物を研磨すると、練りこまれたガラス繊維が加工物を傷つけることなくサビやバリに当たって、それらを取り除くことができることがわかりました。しかも、廃棄プラスチックを線材にリサイクルする過程で、線材中のガラス繊維を線材の長さ方向に揃えることができるため、サビやバリ取り効果も向上していました。


  


■ 廃プラスチックからブラシへの工程

不用品プラスチックの回収(写真1)
金属(真ちゅう、アルミなど)を手作業で取り除きます。(写真2) 
除かれたプラスチックを粉砕する(写真3)この工程で磁力を当てて鉄を分別します。
粉砕するサイズを徐々に小さくする工程を数回繰り返します。 そして細かく粉砕された廃プラスチックの水分を取り除く乾燥工程に移ります。この時の水分率も、その後再生されるペレットに大きく影響します。
乾燥を終えたペレットに熱を加えて二軸機で伸ばして再生ペレット(写真4)にします。この再生ペレットを社外の協力工場へ移送して、ブラシを製造します。
  

  


  


  


  

■ GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)の改良

再生ペレットをブラシに加工する際、二度ねじっても断線しないように強度を高める改良も行いました。そして2017年10月には合計3万本の「サビ取りブラシ」販売を見込んでいます。
  

  


■ 廃棄ガラス繊維強化プラスチックにノウハウが隠れている

企業秘密のため、廃棄ガラス繊維強化プラスチックにどのようなノウハウが隠されているのか知ることが出来ません。そこでガラス繊維強化プラスチックの線材化について多数の大学・研究機関へ相談しました。しかし、決まって「それは難しい」「それは不可能」との返答でした。しかし、「やってみなければわからない」の精神で取り組み、試行錯誤を繰り返した結果、大学・研究機関の研究者の関心を呼び、協力も得られ、ガラス繊維強化プラスチックの線材化という独自の成果を生み出すことができました。

伊原会長はアイデアマンであり、「実験先行、出来た理由は後付けで考えよう」といつも言われています。逆転の発想で考えることが伊原会長のモットーとのことです。
  

■ ネットで販売されているバリ取りブラシとの違い

肉眼では見えないバリを削ることができます。しかも製品をキズ付けることがありません。タバコと同じ大きさの部品にボールペン程度の円形の穴が加工されています。この中にバリがあります。当然、肉眼では見えないバリです。今後は複雑な形をした部品に合わせたブラシの製造にもチャレンジします。
  

  


■ 究極のリサイクルを提案する製品

自社工場から出た廃プラスチックからサビ取り、バリ取りブラシを作り、そのブラシで自社製品を磨くことを伊原会長は提案しています。当に究極のリサイクル製品と言えます。
  

■ 取材を終えて

伊原会長は、トラックの運転手を経てこの会社に入りました。父親の病気がきっかけで、プラスチックの知識は全くありません。されに驚くことに学校も文系です。全くバックボーンがない中から製品を生み出すバイタリティに驚くばかりです。
取材の翌日には、愛知県技術開発交流センターにて試作品の試験データを測定する予定であることを伊原会長が説明されました。あいちの製品づくりには産学官連携の連携が必要であることを痛感しました。

中部大学総合工学研究所特任教授の武田邦彦先生と旧知中とお聞きしました。工場で勤務する従業員の方が「私の会社は何を造っているのかよく解からない」と言われたことが発端で、武田先生をこの武豊工場へお招きし、「はたらくこと」をテーマにご講演をいただきました。この従業員のご子息が武田先生のファンでもあり、2015年9月に開催されとのことです。
取材日の夜、お世話になっている先生方と食事会があると嬉しそうに話される伊原歳会長の笑顔が印象的でした。

参考 株式会社イハラ合成
    愛知県技術開発交流センター(刈谷市:産業技術センター内)

 

取材・文 YA(ワイエイ)ビジネスサポート 杉本 安行

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