今回は調味料のソースとケチャップの製品紹介です。愛知県には全国ブランドのソースメーカーが2社ありますが、その紹介ではありません。地ビールがあるように「地ソース」と呼べる「あいちの製品」を紹介します。

太陽食品工業株式会社は、名鉄「須ケ口駅」から200ｍの所にあります。名鉄「須ケ口駅」は、名鉄名古屋本線と名鉄津島線が分岐する駅です。駅又は車窓（進行方向左の窓）から見える茶色の煙突が目印です。その下には赤レンガの建物も垣間見ることができます。煙突も赤レンガの建物も現在は稼働していませんが、太陽食品工業株式会社のシンボルです。

愛知県知多郡名和村（愛知県東海市）出身の曾祖父が昭和3年に創業しました。東海市はカゴメ株式会社の創業者である蟹江一郎氏の出身地でもあります。曾祖父は蟹江さんに触発され、この須ヶ口に工場を設立し、ソースを作り始めたと現社長の石川達也社長（4代目）は伝え聞いています。

B1グランプリ富士宮焼きそばに太陽食品工業のソースが使用されています。富士宮焼きそばには、酸味が少ないソース、さっぱりしたソースが好まれます。 戦後、初代創業者と２代目がスクーターに乗って、豊橋、浜松、静岡、沼津、富士宮へと営業活動され、富士宮焼きそばに「日乃鳥ソース」が使われ始めました。

名古屋市西区、北区と一宮市内にある「串カツ」店はウスターソースにこだわり、小ぶりな串カツを提供する老舗の一つです。味噌カツ文化の中にあってソースに漬けて食べる関西の雰囲気があります。「二度づけ厳禁」と書かれて、ソース専用容器がテーブルの上に鎮座しています。ここにも太陽食品工業株式会社のソースが使われています。 （西区の店舗は最近オーナーが亡くなり閉店しました。名物の火が消えることは大変残念です。）

人参、玉ねぎ等をペーストにしたものを準備します。これを大釜に投入し、水を入れて煮込みます。これに黒糖、食酢、塩を入れて、秘伝のスパイスを投入します。10種類を超えるスパイスを調合するレシピは門外不出であり、社長を含めて一部の者しか知りません。大釜に入れる直前に香辛料調合室で調合します。

大釜で煮込み終えると、冷ましの工程へ移ります。60余年使用している木製大樽の出番です。大釜からソースを木製大樽へ移し替えます。木製大樽の強みは温度の下がり方が優しいことにあります。ステンレス等の金属釜は温度が上がるスピードも速いが冷めるスピードも速いです。 他方、木製大樽はジワリジワリと温度が下がります。100℃から25℃へのゆっくり温度が下がる工程にも味の秘訣があります。 そして更にソースを熟成させる次の木製大樽へ移し替えます。この樽は最近新しい樽に交換しました。そして最後は小樽へ移し替え、更に熟成させます。合計約4週間の熟成期間が味へのこだわりと差別化を産み出しています。

現在は愛知産のトマトでなく、トルコ産のトマトピューレを使っています。甘さのあるトマトケチャップを求めた結果、トルコ産トマトに行き着きました。釜にトマトピューレと水を入れ煮込みます。これに香辛料等を加えます。1個の釜で製造しているため、火加減やトマト状態等に職人の細かな気配りが届きます。火を止めて温度が下がったら瓶詰、缶詰工程に入ります。
　　

ラベルデザインのレトロ感と創業80年とが一致しています。
　　

愛知県には全国ブランドのソースメーカーが2社あります。その2社とは一線を引いて、小さいながらも、地道にコツコツと製品を造っているメーカーです。稼働していない赤レンガは中に釜があります。釜の蓋には1962年と印字されていました。半世紀の時間が流れている物証に触れた瞬間でした。 大手小売店でなく、地元の中堅小売店であるヨシズヤの一部店舗、ヤマナカフランテの一部店舗、フィールの一部店舗で扱っています。また名古屋駅前の大名古屋ビルヂング内にあるセレクトショップでも扱っています。

3代目の両親が早くに亡くなり、3年前祖母の逝去から4代目として経営を引き継いだ社長の年齢は、23歳と聞いてビックリしました。「受け継がれた本物の味」を守るべく、日々奮闘しておられる石川社長の益々の活躍を期待しています。

太陽食品工業株式会社ホームページ