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車いすも隠れたあいちの製品。
それを支える発泡材チューブも隠れた「あいちの製品」

記事更新日19.11

松倉 利夫

【問い合わせ先】
山口化成工業株式会社

愛知県豊川市御津町広石五反田34番地
TEL 0533-76-3105
HP http://yg-kasei.co.jp/
印刷用ページ
   
 

今回は発泡材に関する「あいちの製品」です。 山口化成工業株式会社(以下:山口化成工業)は、豊川市御津町にあります。最寄り駅はJR東海道線「愛知御津駅」です。駅から徒歩で北へ15分の所にあります。

   
 

取材前に「あいちの製品」との関係について想像を巡らせました。山口化成工業は過去に漁業に必要な海洋フロート(延縄漁や養殖いけす、浮き桟橋などに使用されている発泡スチロール製のモノ)を扱っておりました。三河湾も近いためニーズがあり、それが全国へ出荷されたと思い描いておりました。しかし、実際に松倉社長から話を伺うと全く異なっておりました。

   
 

この辺りは三河木綿の産地でもあり、綿花から糸を製造する過程で蒸気を使用していました。綿花が斜陽になりその蒸気を発泡材生産に活用したことにより発泡材製造工場が増えました。合わせて高度経済成長時に大阪の商社がこの地を訪れて海洋フロートを大量に発注されました。生産された海洋フロートをトラックで国鉄豊橋駅に送り、そこから鉄道で全国へ出荷され主力商品となりました。 その後、漁業人口の減少に伴い海洋フロートの需要も減少したため、山口化成工業は生産を中止しました。1970年代は木綿つながりで隠れた「あいちの製品」であったと想像できます。

   
 

山口化成工業は、主力製品として家電製品の梱包材、住宅の断熱材などを製造していますが、新たな製品開発が必要と考えて今回の車いすのタイヤにたどり着きました。

  ■ 車いすは隠れた「あいちの製品」
 

21 年工業統計表品目編によると、愛知県は医療機器に関連するものとしては、眼鏡レンズ・コンタクトレンズ、医療用機械器具の部分品、歯科材料の出荷額が全国 1 位となっています。その他には、福祉用具としての車いすや、衛生繊維製品などもポテンシャルが高いことが示されています。
健康長寿関連分野の工業製品出荷額国内シェア(車いす)は全国シェアの7割を愛知県が占めています。
現在は愛知県から岐阜県養老郡へ移転した株式会社松永製作所と北名古屋市に本社がある日進医療器株式会社が愛知県にあったことがその要因でした。
(平成24年2月愛知県医療関連産業ニーズ・シーズ調査事業報告書より)


   

  ■ 展示会で見つけた素材
 

数年前に県外で開催された展示会に出展したときに松倉社長はその素材と出会いました。松倉社長は、展示会期間中に何度もそのブースに足を運びお願いした結果、最後は了解されました。この素材を使うと強度があり、そして弾力もある発泡材が出来上がります。しかし、具体的な製品が思い浮かびません。
発想法を学び、それを実践した結果、自転車のタイヤにたどり着きました。形状も整い、タイヤに装着して実験です。しかし、時速50kmのスピードに耐える強度が出せません。自転車以外のタイヤはないのかと松倉社長は発想を巡らせました。

  ■ 同じタイヤでも車いす
 

通常の車いすは時速6km以下です。タイヤの強度は求められませんが、パンク修理に時間とコストがかかることが悩みでした。街の自転車ショップでは対応できず、メーカーが修理します。車いすの利用者さま、レンタル会社がパンクした車いすをメーカーへ送る負担は計り知れません。そこに商機がありました。
乗り心地は良好であり、しかもパンクすることはありません。しかも空気と同様に軽いです。これが車椅子ノーパンクチューブ「エアリー」の誕生です。


   

  ■ タイヤの中に挿入
 

白い棒状のモノが車いすのタイヤの中に挿入されます。1本のタイヤの中に棒状4本をつなぎ合わせます。つなぎ目が4箇所になりますが、微妙な振動も体感には全く問題はなく、まさに空気のような乗り心地です。


   

  ■ 製造工程
 

生産工程がシンプルなこともあり、手作業が多いです。また、製造は100%内製化しています。生産工程は、原料ビーズ入荷 ⇒ 一次発泡 ⇒ 熟成 ⇒ 金型準備 ⇒ 成型加工 ⇒ 乾燥 ⇒ 検品・出荷 です。
写真は今回の車椅子ノーパンクチューブ「エアリー」でなく一般的な発泡材工程です。

   
 

パウダー状の粉が入った大袋が入荷します。

   

   
 

それを一時発泡機に投入します。

   

   
 

加熱して膨らんだ原料は上部から排出されて熟成層へ送られます。

   

   
 

多品種少量生産のため膨大な金型を保持しています。過去は自前で金型を作っていましたが今は外注に出しています。金型の素材はアルミを使っています。

 

   
 

金型の設置が終わると成型加工です。天井付近で熟成保管させている素材を機械へ投入します。ここで加熱加工します。加圧水蒸気で加熱し注文品へと形成されます。積み上がった白いものが乾燥前製品です。

   

   
 

成型品の中には水分が残っています。それを1〜2日間60℃の乾燥室へ投入します。工場内には乾燥室が4つあります。 

   

   
 

乾燥後は検査・出荷となります。製品によっては製品どうしを接着したり、他素材を取り付けたりする作業も工場内で行います。

   

   
 

車いすのタイヤに入れる棒状の発泡材ストックです。素材と熱処理温度にノウハウが隠れています。

   

   
 

工場内では多品種少量生産を行っております。取材当日は床断熱材を発見しました。

  ■ 弾力を活かした健康グッズ
 

某ドーナツショップのポンデリングに形状が似ている健康グッズです。手で握ることで筋力と血流が脳を刺激する効果を期待できる製品です。認知症防止を狙って、高齢者施設や高齢者の運転免許更新時に販売できないかと松倉社長は考えています。車いすのタイヤに使用した素材の転用です。


   

  ■ 取材を終えて
 

車いすタイヤの売上高は全体の2割〜3割です。しかし、これからゴムチューブから発泡材に替わる可能性は高くなり、生産割合は大きくなります。車いすに至った発想が理に適っていました。頭の中からあらゆることを絞り出して空っぽにした後で出てきた発想に商機を見出しました。製品のことを話し出しては、何度も事務所の一角にある扱い品置場へと席を立つ松倉社長の姿が印象に残りました。
人柄と発想法は巻末の「東三河ビジネスプランコンテスト受賞者へのインタビュー」をクリックするとその詳細が分かります。発泡材そのものは全国どこにでもありますが、それを車いすのタイヤに活かすと隠れた「あいちの製品」につながりました。

写真は事務所の一角にある「これまでに生産した特徴ある製品紹介棚」と松倉社長をモデルにした製品紹介パンフレットです。



   

 
山口化成工業株式会社
http://yg-kasei.co.jp/
豊川ものづくり企業ガイドブック2015
http://www.toyokawa-cci.org/monodukuri/companies/companies.php?cod=23
東三河ビジネスプランコンテスト受賞者へのインタビュー
http://www2.sozo.ac.jp/pdf/kiyou35/contents/35-6Hanaoka.pdf

 

文責 YA(ワイエイ)ビジネスサポート 杉本 安行

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