印刷業は地産地消の産業。
その印刷会社から生まれた製品
「ポケットフォルダー」はあいちの製品です。

記事更新日20.05

山下 俊治

【問い合わせ先】
株式会社 アオイ・グラビア
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名古屋市中区金山5丁目4番29号
TEL 052-881-1147
HP http://www.aoi-g.co.jp/
   
 

今回の「あいちの製品」は、印刷物に付加価値を付ける「ポケットフォルダー」の紹介です。
この製品は株式会社アオイ・グラビア.(以下:アオイ・グラビア.)が製造しています。アオイ・グラビア.は、商業印刷・包装資材の総合提案企業です。本社は名古屋市中区金山5丁目にあり、最寄り駅は金山総合駅です。総合駅南口から中央線の高架に沿って鶴舞に向い歩くこと7〜8分の場所にあります。

  ■ 愛知県は印刷業とチラシ広告が多い県
 

少しデータが古いですが、印刷産業の事業所数を都道府県別に見ると、東京都が5536事業所(全国の21.4%)と最も多く、次いで大阪府2945事業所(同11.4%)、埼玉県1676事業所(同6.5%)、愛知県1574事業所(同6.1%)と、都市圏が上位を占めています。(平成26年 経済産業省 工業統計より)

また、戦前から愛知県は、木曽地方の林業と木曽川の水資源を活用した紙製品製造業も盛んであり、北海道、静岡県、愛媛県の次に生産量が多い県です。

そして、紙である印刷物は非常に重たく、配送コストも掛かるため、地元で製造して地元で消費する地場産業でもあります。

印刷業界の特徴として、大阪府は戦前から「松下電器」「シャープ」などの大手企業もあり、白物家電に関連した包装資材や印刷が多い特徴があります。他方、愛知県は新聞チラシなどの広告印刷が多い土地柄です。

このようなことから考えると「印刷業」もあいちの製品を支える見えない産業です。また、パレット1枚に積んだチラシ印刷物の重量は約1トンと重たく配送コストも必要です。そのため地元で印刷して地元で流通させる地産地消スタイルが最適です。そのため印刷業は地産地消の産業でもあります。

  ■ 会社の歴史
 

戦時中、山下哲夫は飛行機関係の技術者でした。戦後の昭和28年(1953年)、その能力を活かして生産機械を改良して牛乳のテトラパックやアイスクリームカップなどの食品資材を手がける「山下ケース」を創業しました。全国規模の乳製品メーカーとの取引も生まれ、大阪に工場を構えました。 その後、山下哲夫が急死したことにより企業の存続危機を経て、昭和39年(1964年)にオフセット印刷によるパッケージ製造会社、株式会社アオイ・グラビア.を関連会社としてスタートさせ今日に至っています。


   

  ■ 凸版(とっぱん)印刷とは
 

「活版(かっぱん)印刷」のことです。凹凸のある印刷版の出っ張った部分にインクをのせ、紙に押し当てて印刷します。浮世絵のような木版画で使われている印刷方式です。

  ■ グラビア印刷とは
 

凹版印刷の一種です。微細な濃淡が表現できるので、写真画像の再現性の高さは、グラビア印刷の最大の特徴です。印刷版のへこんだ部分(凹版)にインクを詰め、紙に押し当てて印刷します。へこみの形や大きさ、深さを調整することでデリケートな濃淡を表現できる、写真の印刷などに適した方式です。グラビアアイドルはこのグラビア印刷から出てきた言葉です。

  ■ オフセット印刷とは
 

凹凸がほとんどない印刷版を使う平版(へいはん)印刷は、版上に親油性の部分と親水性の部分を作り、水で湿らせます。水は油性インクをはじき、親油性のある部分だけにインクがのるため、そこに紙を押し当てて印刷します。古くはリトグラフ(石版画)として発明されました。

平版についたインクを、ブランケットと呼ばれる樹脂やゴム製の転写ローラーにいったん移し(Off)、そのブランケットを介して印刷用紙に転写(Set)される仕組みは版と用紙が直接触れない印刷方式から、「オフセット」という名がつきました。オフセット印刷は、高速で印刷できるため、短時間で大部数を印刷するのに最適です。
必要な分量だけのインクを紙にしっかり密着させることができるため、他の印刷方式と比較してシャープな仕上がりになります。そのため、写真やイラスト、文字などの細部まで、鮮明に表現できます。

  ■ トムソン加工(打抜き加工)
 

刃を組み込んだ木型を使い、紙やフィルムを型抜きする工程のことを言います。立体形のスナック菓子箱を広げると1枚の紙が複雑に切り抜かれています。この切り抜く作業をトムソン加工といいます。

  ■ 生産工程
 

1)原料の紙 裁断
入荷した原材料の紙を必要なサイズに裁断します。


   

   
 

2)デザイン
2階のデザイン室でパソコンを使って行います。持ち込まれたデザインを尊重するため、早い納品へとつながります。デザインされたモノを薄い板状のアルミプレートに加工します。つまり原版の完成です。


   

   
 

3)高速印刷機へセット
10年前に投入した大型印刷機と最近導入した大型印刷機の2台を使用しています。版を大型機械に設定すると1台で1日15,000枚〜18,000枚の印刷ができます。乾燥時間が短いUVインクを使用することで早い、大量、綺麗な仕上がりを造り出しています。

   

   
 

4)折り曲げ・製本
印刷されたモノを折り曲げる、冊子又は製本までの加工をこの自動化機械が対応します。

   

   
 

5)トムソン加工
トムソン加工をするには、型を作らなければなりません。木に溝を掘り、その溝の部分に同じ形に曲げた鋼の刃を埋め込んで作られた木型(トムソン型)のことです。その木型を用いて、印刷機と同じ様に印刷用紙を給紙して、 セットした木型で1枚ずつ打ち抜き加工します。
どこをどのように切り抜くのか、当に職人の世界でもあります。一つとして同じモノでない木型が壁面に納められて管理しています。

   

   
 

6)その他
工場内にはシール印刷を行う「有限会社 アオイシール」があります。また、名古屋市中川区にはビジネス伝票を製造する「株式会社 大日本ビジネスフォーム」もあります。写真は工場内にあるシール製造機械です。

   

  ■ ポケットフォルダー
 

印刷業界はパソコンとインターネットの普及により印刷会社の機会稼働は下がっています。そのため使われていない印刷機が膨大に存在しています。そこに目を付けたビジネスモデルが「ラクスル」です。印刷会社にある非稼働印刷機を活用することで、印刷会社の「稼働時間上げ」をし、その代わりに価格を安く抑えて顧客に「印刷を安く」という価値を提供しています。
そこで、安い印刷物を入手した利用者はそれを各々の顧客にどのように提供するのかを考えました。書類を入れる安価な透明なクリアーケースでは見栄えが今一つです。そこで利用されているのが「ポケットフォルダー」です。
A4サイズの紙媒体を挟むことができます。しかも、中にトムソン加工による切り込みと折り曲げ・製本技術を活かした糊付けが施されています。もちろん、紙の材質や表紙のデザインなどは様々なニーズに対応できます。  
ラクスルに対抗するのでなく、ラクスルを活用するエンドユーザーのニーズを汲み取った製品です。
そのため、ポケットフォルダーはBtoBだけでなく、BtoCを目指した製品でもあり、ネットからの注文が着実に増えている製品でもあります。

   

  ■ ユニークな製品
 

以下の製品は印刷技術と折り曲げ・トムソン加工技術とシール貼加工技術と組み合わせた製品です。このようなノウハウから前述で紹介した「ポケットフォルダー」が製造されています。

また、ビジネスホテルを利用する時、フロントでカードキーを渡されます。カードキーは紙製(内側に連絡注意事項が書かれている)のフォルダーに添えて渡されます。このような製品から派生したルームカードキーケース(カードフォルダー)などもあります。

写真はTカードをルームキーに見立てたホテル用カードフォルダー

   

   
 

写真はセブンイレブンのナナコカードを代用して説明するカードケース(カードを開くと中にカードが入っています。上部の切り込みを引っ張ると中からカードが出てきます)

   

   
 

写真はお伊勢さんの土産物屋さんの一角にある販売キッドです。シールとそれを入れる紙フォルダーをセットした製品です。

   

  ■ 取材を終えて
 

新型コロナが猛威を振るっている中、社会的距離を保ちつつ、適度に窓を開け、次亜塩素酸機能がある加湿器を準備頂き、ご配慮頂いた中で手際よく取材に応じて頂きました。

名刺交換で頂いた名刺はユニークであり、大変印象に残りました。アメリカで開発されたフラッパー名刺という商品です。名刺は2枚の紙が折り重なり、会社名がある表面の切込みに沿って折り曲げると、中から社内一貫生産と記した会社の説明があり、更に折り曲げると関連企業先のアドレス、そして折り曲げると最初の名刺の顔に戻ります。

・研究熱心
いつも新しいものを作るために、展示会やWeb検索をしています。いろいろな技術の組み合わせで、「何か楽しいもの」、「何か役立つもの」ができないか考えています。ポケットフォルダーもそんな発想から生まれた商品です。

   

   

株式会社アオイ・グラビア. http://www.aoi-g.co.jp/


文責 YA(ワイエイ)ビジネスサポート 杉本 安行