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「あいちの製品」
老舗合羽メーカー船橋株式会社

記事更新日21.03

舟橋 昭彦

【問い合わせ先】
船橋 株式会社

名古屋市中村区名駅五丁目23番8号
TEL 052-571-6346
HP https://2784.co.jp
印刷用ページ
   
 

今回は3つの視点から捉えた「あいちの製品」です。
船橋株式会社(以下:船橋)の創業は、大正十年。老舗のカッパ・防水エプロンメーカーです。創業は布おむつのカバーから始まりました。大八車の幌やシートなど生活様式の変化に合わせて商品も変化しながらも“人や大切なものを雨や水から守る”というモットーは変えずにこれまで100年続けてきました。現在は消防団や高速道路などの作業員が着る反射材を多用したカッパ、自転車通学用のカッパ、給食センター食肉加工場で使用するエプロンへと成長を続けています。
合羽エプロンの製品市場規模が小さいこともありますが愛知県内で同様の製品を製造するメーカーは数社のため、合羽エプロンも「小さなあいちの製品」と言えます。また、「名古屋工業大学・愛知県中小企業診断士協会・あいち産業振興」三機関協働学び合いプロジェクトに取り組んでいるため「これからのあいちの製品」と言えます。
そして、後半に紹介する医療・介護用防護ガウンはトヨタ自動車の支援を受けて生産数の増加に至りました。ものづくり愛知のノウハウと連携から生まれた「ものづくりあいちの製品」でもあります。

  ■ 会社所在地
 

船橋株式会社は名古屋市中村区名駅五丁目、堀川に掛かる錦橋から北へ100m進んだ場所にあります。 堀川端にあるビルは営業、開発拠点のため、工場は名古屋市中村区向島町(地下鉄中村公園駅から南)にあり、昭和51年に第三期縫製工場完成させ現在も稼働しています。

  ■ 会社概要
 

大正10年 初代社長舟橋勝治が名古屋市中村区志摩町に於いて防水布製造販売     を創業
昭和26年 船橋防水布株式会社設立
平成15年 舟橋昭彦が社長に就任、舟橋浩は会長に就任
平成30年 三機関協働事業(愛知県、名工大)産官学で新防水エプロンの開発     を開始
令和2年  タフブラードがPVC Awardで優秀賞を受賞
令和3年  創業100周年を迎える

  ■ 工場のダイバーシティから始まる
 

コロナ禍前の工場は全体で20名ほどの規模で20代が2名、80歳を含む70歳以上のキャリアのあるベテランが4名、障がい者1名の人員でした。コンパクトに多様性のある働き方が機能している現場に愛知県の関係部署から職員の視察がありました。その時に職員が三機関協働学び合いプロジェクトを紹介したことが始まりでした。これはPVC(塩ビ)素材(軟質・硬質を含む)の優れた特長を活かした商品を広く公募する「PVC Award 2019」へと繋がりました。(通された部屋にさり気なく記念の楯が置いてあります。)
※三機関協働支援事業は、名古屋工業大学、愛知県中小企業診断士協会及びあいち産業振興機構の三機関で、中小企業の抱える課題解決への取り組みを支援するとともに、事業に関わる全ての者が相互の学び合う人材育成を目的としております。
https://www.aibsc.jp/support/1189/
※「PVC Award 2019」の詳細はこちらから
http://pvc-award.com/
※「新しい時代をCreateするPVC製品」受賞作品)
http://www.pvc-award.com/result.html

  ■ 不快・不満解消プロジェクト(三機関協働支援事業)
 

食肉加工工場では牛・豚の解体、カット作業を行います。その時に牛脂、豚油、牛・豚の血液、次亜塩素ナトリウム(工場で洗浄によく使われる薬品)がエプロンの劣化の原因になります。このような不満に対応するためにプロジェクトが立ち上がりました。それは「世の中にはない機能を持った食肉加工場用の無縫製防水エプロンの開発」です。1年目は業務用エプロン使用現場の見学・情報収集、2年目は世の中にないエプロンの実現に向けた調査研究、3年目は機能を持った食肉加工場用の無縫製防水エプロンの開発でした。
船橋が食肉加工場向けに開発したカッパ型エプロン、タフブラードは撥水性が高いことは実験結果で得られているため、次亜塩素酸ナトリウム液にウレタンとタフブラードを浸す実験を行いました。その結果、ウレタンは素材の結合が切れる(アミンや水酸基の発生)のに対しタフブラード素材に大きな変化が見られないことが判明しました。

食肉加工は室温が高い現場が多く、このタフブラードエプロンを着用しての作業は、エプロン内に体温がこもり非常に暑くなります。そのため引き続き三機関で解決策を模索しています。

  ■ 医療・介護用防護ガウン
 

コロナ禍に入って尾張旭市にある旭労災病院から医療・介護用防護ガウンの相談がありました。新型コロナの現場では、医療スタッフ1人が1日で32枚の使い捨てガウンを必要とします。そのため医療・介護の現場では臨時でごみ袋をガウンの代用にせざるを得ない状況でもありました。また、マスクの品薄は社会問題にもなりました。
医療・介護用防護ガウンは身体の前後を包む構造が求められます。そのためカッパや防水エプロンづくりのノウハウがある船橋に旭労災病院が白羽の矢を当てました。 最初は使い捨てのポリエチレン素材から探しました。コロナ禍であり海外からの原材料品の輸入も制限があったため、着目したのが春以降閑散期に入った農業用のマルチシートの活用です。素材も0.02oと適していました。しかし、船橋だけでは提供できる枚数を増やすことができません。そこで中日新聞の朝刊(2020年4月14日)に「新型コロナ感染防護ガウン」を取り上げていただきました。

掲載の結果、自動車内装関連や水着・婦人服縫製業など愛知県、岐阜県、三重県の6社から協力を頂き「7社連合」とトヨタ自動車の全面支援を得て医療ガウンの製造が始まりました。
 ・トーヨーニット(三重県)・碧海技研(愛知県)・フタバ産商(岐阜県)
 ・宝和化学(愛知県)    ・岡川縫製(岐阜県)・垂光(岐阜県)
※TOYOTA NEWS#78|医療用防護ガウンを1日でも早く
https://toyotatimes.jp/insidetoyota/078_2.html

  ■ 町の草野球チームに大リーガーがやってきた
 

新聞記事を見て最初に手を挙げたのがトヨタ自動車でした。その理由はオール日本製でものづくりを行うことが必要と考えていたからです。10年前の東日本大震災でサプライチェーンが機能しなかった経験から国内の部品で国内生産することは非常に重要とトヨタ自動車は考えています。コロナ禍では海外から原材料調達が難しい状況だからこそオール日本製が求められます。
船橋と有志の「6社」はグローバル競争の最先端にいるトヨタ自動車から「品質・生産量・コスト・短納期」のやり方を目の当たりにしました。当に大リーガーの実力を目の前で見た驚きです。始まった5月は7社合同で20万着製造しましたが、現在は1日5万着、月100万着を製造しています。
生産工程では様々な改革がありました。薄いビニール生地を一度に8枚引っ張って裁断する仕組みづくりなど、お話を聞くとトヨタならではと思いました。
詳しくはトヨタイムズをご覧ください。
※トヨタが老舗カッパメーカーに伝えた「本気のものづくり」
https://toyotatimes.jp/chief_editor/051.html

  ■ ガウンには改良が詰まっている
 

医療・介護用防護ガウンは使い捨てのため着脱が容易である必要があります。しかしコロナウィルスからの防護に備えなければなりません。まず飛沫から防護するために首元を狭め、袖や丈を長めにする(膝よりも下にある)、作業中に袖がまくり上がらないよう袖口はゴムではなく親指を引っかける。そして脱ぎやすいことが条件になります。加工は熱溶着で針を使っていないため穴もありません。
写真は事業企画室の大谷さんが取材時に試着したものです。

透明なガウンは制服や名札が見えやすい一方で万が一の時に破れに気づかないことがあります。そのため色付きのガウンもラインナップに増やしました。また、介護現場でヒアリングをしてみると利用者さまを抱きかかえたとき、利用者さまの手が横から偶然入ることもありました。そのため全身を覆うことができるガウンを企画し、ユーザー様から安心して作業できると好評です。

防護ガウンは長時間着用すると蒸れることが最大の課題でした。
当初のガウンは20分も着ると汗でガウンが肌にまとわりつきます。そのため凹凸のあるエンボス加工された素材を使うようになりました。そしてカッパの透湿素材にヒントを得て、通気はできるがウィルスを防止できる素材を活用しました。
他方、ポリエチレンよりも強度が求められる現場には破れにくい不織布を活用しました。具体的には透湿フィルムと不織布を貼り合わせます。
写真はシューズカバーです。ガウンと併用し全身を防護します。これも靴の上、スリッパの上、靴下の上と着用状況が異なることを想定しサイズバリエーションを増やすとともに、地面との接着面は縫い目がでないように考えて縫製してあります。それも防護性を高める工夫です。

  ■ 取材を終えて
 

社長の机の後ろに応接室があります。通されて直ぐに目に留まったのがトヨタ自動車の豊田章男社長と並んで写っている写真です。取材を進めるとその理由が判明しました。トヨタイムズ編集長の香川照之さんがテレビCMしている続きは「トヨタイムズ」でのフレーズがあります。トヨタが老舗カッパメーカーに伝えた「本気のものづくり」をネットで見ました。 医療・介護用防護ガウンを行政へ納付する期日が迫っている中で取材に応じて頂きました。ものづくり愛知の製品が医療・介護現場を支えていることを改めて知りました。

   
 

トヨタ自動車(株)豊田章男社長が防護ガウンの生産現場に訪問してくださいました! いつもお世話になっているトヨタ自動車の社員さんの上司がいらっしゃるとお聞きしていたため、突然のサプライズに驚きを隠せませんでした。 お会いしてみると非常に気さくな方で、写真撮影にも快く応じていただけました。防護ガウンの生産当初から多大なるご支援をしていただいているだけでなく、このように社長直々に激励をしてくださり、非常に嬉しく思っています。
2020.06.19 ふなはし通信より https://2784.co.jp/blog/%e3%81%9d%e3%81%ae%e4%bb%96/p1113/
船橋株式会社 https://2784.co.jp/company/

 

文責 YA(ワイエイ)ビジネスサポート 杉本 安行

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