「あいちの製品」
株式会社オオサカヤ

記事更新日21.05

瀧本 真

【問い合わせ先】
株式会社 オオサカヤ

愛知県半田市青山2-19-5
TEL 0569-26-0120
HP https://osakaya.gr.jp/index.html
   
 

今回は愛知の伝統とものづくり精神を使った「あいちの製品」です。
愛知県は、明治維新の前から全国的に知られた綿織物産地でありました。尾西中島縞木綿、三河木綿、知多晒は、幕末にはすでに関東でも販売されていました。知多晒は晒し加工した綿織物のことであり、それを愛知県内の縫製工場を使って製品化する工程は「あいちのチカラ」を結集した「あいちの製品」です。
株式会社オオサカヤ(以下:オオサカヤ)は名鉄河和線青山駅のある半田市の南部にあり、青山駅から徒歩5分のところにベビー服製造事業「育児工房」の商品を保管・発送する事務所があります。そこからさらに西の住宅街をはいったところに子供服のセレクトショップ「Kiriri(きりり)」があります。

上:「育児工房」 下:『Kiriri(キリリ)』
  ■ 3つの事業
オオサカヤの事業は3つに区分されており、今回はベビー服製造「育児工房」を中心に取材しました。
・ベビー服製造(育児工房)
国内伝統産地の素材とオーガニックコットンを採用し、国内縫製工場で生産するMade in JAPANの高品質なベビー服です。生産設備は持たずほとんどの工程を愛知県内を中心としたそれぞれの分野の専門工場に製造を委託するいわばファブレスメーカーですが、これは業界としては一般的なスタイルとのことです。ちなみに1999年に育児工房を商標登録しています。
・国内ブランド子供服小売『Kiriri(キリリ)』
国内有名ブランドの子供服をセレクト販売しています。日常からお出かけ用まで様々なシーンでご利用いただけるウェアを手ごろな値段でご用意しています。
・ブランド子供服ショップ運営代行
近隣ショッピングセンター内に大手子供服メーカーが出店している、子供服ショップの運営代行を行っています。
  ■ 子供服生産額も愛知県は高い
 

取材の最初に瀧本 真社長(以下:瀧本社長)が以下のように述べられました。
子供服製造業の集積は大きく2つに分かれます。一つはデザイン・企画を中心とする関東です。もう一つは縫製工場を抱えた関西です。関西には「ファミリア」「ミキハウス」の大手メーカーがあります。(子供服販売では西松屋、子供服以外ではワールド、千趣会も関西です。) 愛知県はどちらかと言えば関西よりであり、子供服の生産金高は大阪に次いで全国2位と聞いたこともあるようです。
取材後、都道府県別の子供服生産金額や出荷額などの統計データを探しましたが見当たりませんでした。しかし、愛知県には繊維の街『一宮』、三河木綿・メリヤス、そして「リオ横山」「タキヒョー」のメーカーなどがあり、子供服生産高が全国2位というのもうなずけます。

   

  ■ ベビー服は地産地消のものづくり
  子供服の1つとしてベビー服は位置づけられています。そのため市場規模は小さくなり、生産ロットも同様に小さくなります。様々な生産拠点が近い距離にあることは、規模が小さくノウハウも十分でなかった事業開始当初はプラスになりました。現在でも生地の内側に出ないベビーでは主流になっている刺繍やガーゼ生地を加工する和晒工場など、他の地域ではできない加工が県内に多くあり、こういった専門工場の高い技術を取り入れた製品づくりにこだわっています。
※和晒(わざらし)は和晒釜という大きな釜に織り上がった綿布の原反(げんたん)を、引っ張りも伸ばしもせずそのままの状態で、丸4日間もかけて、じっくり綺麗にしてゆく工法です。 綿繊維の一本一本、奥まで処理ができるので様々な不純物をしっかりと取リ除くことができます。また、綿繊維にストレスを与えない加工のため、繊維の1本1本の形状が壊れることがなく、他のガーゼにはないふわっとソフトな風合のガーゼをつくることが出来ます。
  ■ ものづくりの創意工夫
  『品質を落とさないコスト削減』にも継続的に取り組んでおり、製造工程を研究して改良することで無駄を省きコストを下げているそうです。詳細については企業秘密とのことで詳細は分かりませんが、ポイントは『機械でやることと人間がやることを仕分けして人件費の比率を下げる』ことで原価を下げるのだそうです。 『金額でみるとわずかなものかもしれませんが、販売価格の低い商品の場合、率でみるとこれが結構大きいんです。』(瀧本社長) 製造工程の工夫は常に様々な部分で取り組んでいるとのことで、アパレル業界という無関係にも見える世界でありながら、「ものづくり愛知」の考え方が随所にありました。
写真は育児工房が生産・販売するベビー服です。製品へのこだわりは縫製にも及んでいます。 ベビー服は細かい部分が多くちょっとした縫い目の粗さが大人の服より目立ちやすい特性があり、細かい作業を粘り強く行うことが必要です。 安心・安全が優先されるベビー服では海外市場からMade in JAPANのベビー服は人気が高く育児工房でも問い合わせが多いということですが、日本の工場の良さが生きる分野ではないでしょうか。

   

  ■ こだわり工程
 

育児工房では国内の専門工場に依頼してほとんどの生地を別注生産しています。その生地を使った製品を企画して委託工場に指示を出します。出来上がった製品が育児工房に届き、 ここから全国のお店に出荷されます。製品には1つ1つにバーコードを印刷したタグが貼られています。このバーコードはJANコードの規格に沿って作成されており、瀧本社長が作成したパソコンのプログラムで出力されています。

   

  ■ 良いから真似られ悲運
 

会社内の奥の棚にベビー服が吊るしてありました。瀧本社長がその中から数点を取り、最終的に2つを渡されました。手に取った感じはどうですか?と言われましたが、外観は同じように見えて、重量に差異がないように感じました。しかし、説明を聞くと納得でした。
一つは育児工房製品、もう一つは育児工房を模倣した他社製品でした。2つの間にある様々な違いの中で重さの違いはわずか数グラム。大人から見ればわずかな差ですが、育児工房ではここにこだわりがあるといいます。 赤ちゃんは平均して体重は約3kg、大人は60~80kgあるとするとその差は20~25倍はあり、育児工房では『赤ちゃんの1gは大人の20g』と考えて1gの違いにもこだわっているそうです。また類似品との違いは見えない部分へのこだわりに表れています。育児工房では使う箇所の動きと特性を考えて生地の向きまで考えており、写真のようなわずかな伸びの違いが表れます。類似品にはないわずかな違いですが、0歳児が感じる着心地はかなり違うと思います。

   

左:類似品 右:「育児工房」

  ■ 子供服小売『Kiriri(キリリ)』
 

写真は育児工房から車で5分の所にある店舗です。かわいらしい外観が印象的でした。店内に入ると正面に 育児工房」製品が陳列されています。
徐々に奥に行くにつれて年齢が上がる陳列になっています。一番奥は小学校高学年です。 また、高い位置に展示してあるランドセルと遠足の両方に使えるカラフルな背負いカバン(重量はランドセルの1/5 価格も重量と同様にリーズナブル)の販売数は全国でトップクラスです。

   

   

  ■ 取材を終えて
 

子供服は使用する生地の量が少なく、さらにベビー服では生地の幅にもよりますが50mの生地で赤ちゃんの肌着が200~250枚ほどできるそうです。育児工房では通常1型100枚のロットで生産しているため、細かい仕事の積み重ねが特徴です。 100枚の中で更に40枚〜50枚で型を変えることもあります。軽自動車メーカーが車のドアミラーとタイヤハウスを違えて提案することをベビー服でも行っていると瀧本社長が言われたことが印象に残っています。
オオサカヤはパートタイマーが中心の企業でもあり、企画主体のベビー服メーカーであり、委託先工場と一緒に考え、その工場も喜ぶものづくりを実施しています。当にものづくり愛知県の考え方を結集した「あいちの製品」と考えると育児工房のベビー服は「隠れたあいち製品」です。


株式会社オオサカヤhttps://osakaya.gr.jp/index.html
育児工房オンラインストアhttps://shop.ikuji-kobo.jp/
ベビー服の通販サイト。日本製・オーガニックコットンのベビー服をメーカーから直接購入できます。 国内有名百貨店で販売される高い品質とオーガニックモデルの豊富さが特徴のMade in Japan Baby wear made with Organic Cottonです。

文責 YA(ワイエイ)ビジネスサポート 杉本 安行