「あいちの製品」
東邦技研 株式会社

記事更新日21.07

佐橋 範昭

【問い合わせ先】
東邦技研 株式会社

愛知県名古屋市港区油屋町1-33
TEL 052-384-5211
HP http://www.tohofw.co.jp/
   
 

今回は同じ場所で同じ製法(摩擦圧接法)を使って製品を作り続けている「あいちの製品」紹介です。
摩擦圧接法という聞き慣れない方法から生み出される製品は機械部品の一部になるため、一般の人が日常生活の中で直接目に触れることがありません。作り続けて50年が過ぎ、今日のトレンドであるSDGsの視点からも気になるあいちの製品です。また、愛知県内でこの摩擦圧接法を使って製造している企業は非常に少ないため、「ニッチなあいちの製品」と位置付けることもできます。
  ■ 会社所在地
東邦技研株式会社(以下:東邦技研)は名古屋市港区油屋町1-33にあります。 名古屋競馬場の西南側辺り、あおなみ線「荒子川公園駅」から西南約1kmの所です。昭和の時代は住宅より田んぼと工場が目立った場所でしたが今は住宅とマンションが増えて街並みも大きく変化しています。

  ■ 会社概要
 

現在の場所に昭和44年10月に設立して今に至っています。代表取締役 佐橋範昭氏(以下:佐橋社長)が4代目です。摩擦圧接法は1965年ごろ我が国に導入され、その特異性を認められて各業界に採用される中で、どのような金属でどれくらいの圧力が必要となるのかという実験をしてデータを構築する壁がありました。この壁があるため各企業が採用したくても採用する事ができず困っていました。この問題を解決し、同工法の普及に貢献すべく、初代が立ち上がりました。

   

  ■ 製品
 

・搬送機用ローラー (大型のベルトコンベアーのローラーなど)
・印刷機用ローラー (新聞印刷などで使う巨大なロール紙から紙を供給する際に使うローラーなど)
・大きな材料から削り出している製品 (材料の大部分を削れば歩留まりは悪くなります)
・溶接欠損で問題になった製品に替わる製品 
・異種金属を溶接・ヤキバメにしている製品
・モーターや変圧器(トランス)内部にあるコイルを巻く芯棒

   

下3枚の写真はすべて摩擦圧接後、複合機(NC旋盤と本格的マシニングセンタ複合)にて加工したものです。説明を受けましたがどの部分が接合しているのか、肉眼では分かりませんでした。

   

  ■ SGDsに対応した摩擦圧接法
 

摩擦圧接法は1960年ごろソ連の宇宙開発技術の中から生まれました。それが日本に紹介されて今日に至っています。

摩擦圧接法とは、接合する部材(たとえば金属や樹脂など)を高速で擦り合わせ、そのとき生じる摩擦熱によって部材を軟化させると同時に圧力を加えて接合する技術です。従来行われているアーク溶接やガス溶接等と比較すると、摩擦熱以外の熱源を必要としないこと、溶接棒やフラックスが不要であること、接合時にガスやスパッタが出ない事などから自然環境にやさしい接合法といわれています。 摩擦圧接法が我が国の生産工場に導入されて既に40年余り経過し、現在ではさまざまな産業分野に導入されています。しかしながら、その技術の本質を知ることなく安易にこれを用いることは、技術水準の向上を望めないばかりでなく、かえって不良品ばかりを生産することになりかねません。

(引用:一般社団法人摩擦接合技術協会HP)

脱炭素が求められている今は「ものづくり」においてSGDsを意識しなければなりません。他の溶接方法に比べて環境負荷が低い特徴があるため、「時代が摩擦圧接法に追いついた、フォローウィンドウが摩擦圧接法を押し上げている」佐橋社長の説明が印象に残っています。

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  ■ 摩擦圧接法の強み
 

・鉄と鉄などの同種類金属の接合はもちろん、ステンレスと鉄などの異種金属の接合もできます。
・丸棒とパイプなど形状の異なるモノの接合もできます。
・接合面全体が密着しているため引っ張っても、曲げても、ねじっても、切れない・折れない・ねじれない強度を保っています。

他方、少なくとも一方は円形断面に近いものでなければならないこと、接合する部材は高速回転に耐え得るものでなければならないこと、金属が薄肉でないことなどの条件も必要になります。

   

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  ■ 製造工程
 

材料が入荷して、依頼品に該当する部材セット仕分けを行います。そして摩擦圧接法加工、NC旋盤と本格的マシニングセンタの合体により、丸、平面、穴加工に至り、最後は検品、出荷の流れになります。

・材料の入荷と保管

・摩擦圧接法を使った作業
写真は作業準備の1コマです。中央に接合する異なる金属を置きます。圧力を掛けながら高速で回転させて接合します。この機械で10トンの圧力を掛けます。機械前の箱から製品の一部が見えています。

大型機械です。数十トンの圧力を掛けることができます。

摩擦圧接法による作業が終わった製品です。大きさが異なる二本の筒状金属を接合させました。

工場の搬入・搬出口に立たれた佐橋社長

  ■ 隠れた技術の凄さ
 

主な取引先では三菱電機(矢田、新城)、東芝(桑名)、川本ポンプ、愛知電機などの大手企業があります。特にモーターやトランスではコイルを巻く芯棒が必要になります。金属を削って芯棒を作ると歩留まりの関係上コスト増になります。そのため異なる素材で異なる円形素材を摩擦圧接法によって作ります。このモーターの芯棒を作ることができるのが県内で東邦技研だけです。

  ■ 取材を終えて
 

接着させれば削りはなくなるためもったいないが起こらない。エネルギー脱炭素社会に持ってこいの技術でもあります。円柱形であれば並列に3つ並べて接着可能になります。そのためには、どの金属とどの金属はどれくらいの圧力で接合できるのか、その時の接合面積はどれくらいであったか、データ蓄積が必要になります。

中国へ進出した日本企業が現地で摩擦圧接法を使った製品を製造しています。日本のJIS規格に適合した金属部品でないため品質にバラツキが出て、取れる、外れることが2年に一度はあるようです。その都度、困ったその企業は佐橋社長の元へ相談に訪れることもあります。このようなお話をお聞きすると、50余年に及ぶデータ蓄積が生んだあいちの製品でもありました。

東邦技研株式会社http://www.tohofw.co.jp/
一般社団法人摩擦接合技術協会http://www.jfja.or.jp/index.html

文責 YA(ワイエイ)ビジネスサポート 杉本 安行