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ケルビン 株式会社
「あいちの製品」

記事更新日21.11

児島 江里子

【問い合わせ先】
ケルビン 株式会社

愛知県名古屋市北区中味鋺2-119
TEL 052-508-6861
HP http://www.kelvinjapan.com/index.html
印刷用ページ
   
 

今回の「あいちの製品」は同時に2つの紹介です。1つ目は自転車の前かご「Rack Biz」(ラックビズ)です。2つ目は顆粒除菌剤「オークリン」です。一見すると何の脈略も見えませんが根底では各々「あいち」とつながっています。

終戦後の愛知県には平和産業として一貫生産体制を確立した岡本自転車、ツノダ自転車が東京のミヤタ自転車と並んで量産体制を確立しました。特にツノダ自転車の「つんつんツノダのテーユー(T.U)号」は有名になりました。その後、東南アジアから大量に安価な自転車が輸入されると衰退の一途となりましたが自転車も「あいち」とつながっています。

前かごの素材は特殊なプラスチックです。このプラスチックは飛行機の内装素材(座席の上にある荷だな)、新幹線の窓枠や座席前にある折りたたみテーブルなどに使われていました。どちらも愛知県内に製造工場があるため「あいち」とつながっています。

顆粒除菌剤は液体消毒用エタノールに代わる要素があり、その製造過程で瀬戸(瀬戸物で有名)の焼成技術が関係しており「あいち」とつながっています。
  ■ 会社所在地
ケルビン株式会社(以下:ケルビン)は名古屋市北区中味鋺2-119の住宅街にあります。名鉄小牧線「味鋺駅」、地下鉄鶴舞線「庄内緑地公園駅」の中間にあり徒歩圏内から外れております。車の場合は名古屋高速の楠料金所から10分ほどの距離です。

  ■ 会社概要

創業は2013年12月と新しいです。代表取締役は児島江里子氏(以下:児島社長)です。専業主婦から創業とお聞きして驚きました。自転車の前かごにバッグを置いても収まりが悪い。また前かごがあるために駐輪場での出し入れに苦労する。自転車の前かごを何とかできないのか、これが始まりでした。その後、社長のご主人である児島教雄氏(以下:児島顧問)が技術顧問として入社され二人三脚で事業を軌道に乗せました。

上記の製品以外に「安全保護具・その他」(安全装備品・LED応用機器、安全保護具・その他)と「道路保安用品」(道路保安用品・LED応用機器、工事保安機材・消火器)があります。
■ 製品紹介 自転車の前かご「Rack Biz」(ラックビズ)

●誕生のキッカケ
東日本大震災以降は全国的に自転車通勤需要が増えました。通学・通勤カバンを自転車の前かごに入れるけど収まりが悪いからカバンに傷がついてしまう。これを何としたい、もっと大事に収納できる前かごがあればと児島社長は考えました。ご実家が製造業を営んでいたことがモノづくりへの抵抗感を低くしたと児島社長は言われました。

あいち産業振興機構主催の創業塾に飛び込み、そこで生まれたネットワークが素材と型押しに結びつきました。軽くて強度あるプラスチック樹脂とそれを均一に折り曲げるプレス技術が愛知県内にありました。

●特許取得したSPF機構(従来の前かごの概念にない機構)
「Rack Biz」の最大の特徴は、業界初の試みであるSPF機構(サイドプレート・フォールディング機構:特許取得済み)の開発とその機能を搭載する事に成功した今までにない前かごであるという点です。強度としなりを備えた樹脂とそれを均一に曲げる加工技術が児島社長のネットワーク内で結びついたことが要因です。
プラスチック樹脂液を型に流し込む製法でなく樹脂を下からプレス加工します。その際にU字型形状に曲がる部分の厚さを均一に保つことに苦労しました。その結果、U字型形状時であっても、頑丈であり、かつ柔軟性を備えています。

●SPF機構の詳細なメカニズム
「Rack Biz」本体の左右の側板(サイドプレート)を直立させた状態の時は、従来型の箱型形状の前かごとして使用でき、折り畳めば「U字型形状」の前かごとして使用できます。また、自転車通勤時や買い物時など、その時々の状況に応じて、形状をかんたんにシフトチェンジできるよう、側板は楽に折り畳むことができ、そしてまた、楽に起こすことが出来ます。U字型の形状であれば、カゴの大きさに依存する事なくすんなりと収納させる事が可能なのです。

●他に類を見ないほどの圧倒的な本体カラーバリエーション
前かご本体のベースとなるカラーは全6色。更には、側板部分を色違いにすることにより合計36通りのカラー構成が可能となりました。「Rack Biz」は、「ベーシックカラーオーダーシステム」で選択した本体カラーを基に、デザイン柄3種類をオプションにて選択が可能となっています。更には、選んだデザイン柄の色を全11色のカッティングシートの中から2色を選択してカラー構成すると1276通りのデザインになります。

●素材は、高耐衝撃性に優れた素材(割れにくい、劣化に強い)
「Rack Biz」本体に採用された素材は、「カイダック」と呼ばれる今世紀を代表するプラスチック樹脂です。FRP素材にも匹敵するほどの強度を持ち合わせ、航空機の内装や医療機器など多彩な分野で活躍している素材です。U字型形状時であっても、頑丈であり、かつ柔軟性を持たせ、しかもサビにも強く、耐候性にも優れています。

●その他
「Rack Biz」はどのような自転車にも取り付けることが可能です。また、「Rack Biz」は乗せたカバンを安定させる紐が付いています。しかも、その紐が前輪のスポークに絡まない長さに設定されています。これらは安全と細やかな配慮です。

■ 製品紹介 顆粒除菌剤オークリン

愛知工業大学情報科学部教授の鳥居一平氏(以下:鳥居教授)は、十数年前から除菌剤の研究を進めていました。鳥居教授は、コロナ禍における社会への貢献として、世間で広く使われているエタノール系消毒剤や次亜塩素酸水では対応できない細菌やウイルスがあることに注目され、水酸化カルシウムを基にした「安価で強力な、しかも安全な除菌水溶液“オークリン S“」を開発しました。 児島顧問は、さらに流通コストや保管上の問題を解決するために、アダプトゲン製薬の協力で顆粒化に成功し、より強アルカリ性を得るために、特殊焼成の可能な窯元を瀬戸で見つけました。
鳥居教授、児島顧問、そして2社の情熱と技術により、原材料すべてを均一に化学変化させる特殊高温焼成法と、強アルカリ性(pH13.2)で皮膚刺激のない、濃縮顆粒状製法を確立させることができました。

●強いアルカリ性(pH13.2)
炭酸カルシウムを特殊高熱焼成技術と顆粒製法「アダプトゲン製薬株式会社と共同開発」により、通常の微生物が発育不可能な強いアルカリ性(pH13.2)を示し、殺菌・抗菌・消臭・防虫・有害な化学物質の分解軽減など、多くの機能を有しています。人体に無害で環境問題を引き起こさないことも大きな特徴です。現在、焼成・顆粒製法の特許出願中と、PMDA(独立行政法人、医薬医療機器総合機構)へ医薬部外品申請中です。

●製品の特長
・自然界の素材により皮膚刺激指数がゼロです。
・水道水(海水も可)で簡単に作れ、付属のpH試験紙でアルカリ性を確認できます。
・顆粒状のため保管場所、保管費用、そして運送費用を大幅に削減できます。
・水に触れても発熱せず、長期保存(品質保証期限5年)できます。
・他の除菌剤と比べて安価に提供できます。

●総合評価比較
この表からも顆粒状除菌剤の性能が優れていると理解できます。


※消毒用エタノールではノロウィルス等ノンエンベロープウィルスを除菌できない。
※次亜塩素酸水は紫外線(日光)に当たると分解し効果がなくなる。
※次亜塩素酸水は適切な温度で対処しなければ効果が発揮できない。

●作り方
 1.市販のペットボトル容器等に1Lの水道水を入れて、オークリン約1gを入れる。
 2.よくかき混ぜ(振る)、顆粒を溶解して5分間放置する。
 3.付属のpH試験紙で強アルカリ性を確認する。

●考えられる使用用途
 ・災害時の避難場所に保管設置が容易であり、しかも長期保存が可能です。
 ・多数の人流が発生する公共交通機関等で大量に使用する場所に適している。
 ・船舶は積み込める生活物資に限りがあるため、軽くて場所を取らない顆粒状は適している。
 ・自衛隊(携行できる、船舶・潜水艦では保管負担が軽減)
上記以外にも飲食店で消毒用エタノールに代わる使用もできます。

  ■ 女性・主婦目線から生まれたヘルメット
 

ヘルメットは愛知県に関係する「あいちの製品」ではありませんが、女性目線でのヘルメットもあり、愛知県で初めて製品化した点では素晴らしいと思い紹介します。

取引先の銀行員が雨の日も暑い日もオートバイのカブに乗ってケルビンへ訪問されます。ある雨の日に会社の外で銀行員がヘルメットを脱いでいるときに、ヘルメット内にたまった雨水が顔に滴り落ちる様子を児島社長は見ました。業務を終えて再びその水が浸みていたヘルメットを被る銀行員の様子が目に焼き付きました。何とかしたい気持ちが沸いてきました。

取り外しができるインナーを開発すれば良いと思いつき製品化に至りました。インナーを外して絞れば雨水の解消になります。また、夏では頭が蒸れやすいため通気性の良いスポンジ素材インナーも開発しました。

ヘルメットを被っての夜間作業もあります。作業中に書類記入もあるためヘルメットにベルト型ライトやツバに差し込む外付けライトはあります。いずれも外付けのため、ヘルメットから落ちる可能性もあります。落下が新たな事故を誘発可能性もあります。それなら最初からヘルメットのツバに特殊表面処理を施した接着方法でLEDライトを取り付けた製品を開発しました。ヘルメットのツバとLEDライトは異なるプラスチック素材です。特殊表面処理に適したプラスチック素材を見つけたのが児島顧問でした。

ヘルメットを使われる人は定期的に除菌・消臭スプレーをヘルメット内に噴霧します。児島社長は考えました。清潔に保つなら繰り返し洗濯可能なパイル地パットの脱着機能を備えればよい。それに洗い替え用を別売りすれば良いと。

これ以外にテレビドラマで女優が被っているヘルメット姿から生まれた製品もあります。女優が被っているヘルメットの止め紐の余りがだらりとあごの下で垂れ下がっていました。見栄えが良くない上に、この紐が作業現場で巻き込まれる危険も0%ではありません。これを解決した製品を開発しました。それがK-FiTシステムあご紐です。

●ヘルメットはアッセンブリ加工
外注先からヘルメットの部品がケルビンに納入されます。それをベテランスタッフが手作業で加工します。もちろんヘルメットに付けるロゴも手作業で行います。写真はロゴ印字作業と乾燥の様子です。

ヘルメットの内側もベテランスタッフが手作業で組み立てます。写真はその工程です。

  ■ 取材を終えて
 

今回は点と点がつながり、それに主婦・女性目線が加えられた「あいちの製品」でした。また、「カイダック」と呼ばれるプラスチック樹脂については、樹脂メーカーの部長さまがU字型形状試作・開発に立ち会われたとお聞きしたときは、モノづくり愛知のネットワークをフルに使った製品であったと感じました。

紙面に限りがあるためケルビン及びオークリンの製品の詳細はホームページをご覧ください。 また、「軽量・コンパクト型LEDライト搭載ヘルメット」と「夏用インナーセット」、「顆粒除菌剤オークリンカタログ」もホームページにないため、付録として説明書を付けました。

付録(ヘルメット・夏用インナーセット)
付録(オークリン)

ケルビン株式会社http://www.kelvinjapan.com/company.html
顆粒除菌剤オークリンhttp://astra-1.com/

文責 YA(ワイエイ)ビジネスサポート 杉本 安行

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