株式会社 岩越製粉
「あいちの製品」

記事更新日22.01

岩越 充洋

【問い合わせ先】
株式会社 岩越製粉

愛知県北名古屋市六ツ師558
TEL 0568-21-0207
HP https://www.ekiten.jp/shop_5247374/
   
 

今回のあいちの製品は寒梅粉です。あまり聞きなれない粉ですが米粉の一種で和菓子に使われます。 寒梅粉は、丁度寒梅が咲く季節に新米を粉にすることから寒梅粉と呼ばれています。現在、愛知県内で寒梅粉を製造しているのはこの株式会社岩越製粉(以下:岩越製粉)です。そのため「残ったあいちの製品」でもあります。

ちなみに米粉(べいふん、べいこ、こめこ等)は、米を製粉した穀粉の一種です。団子、餅、煎餅、麺類、米粉パンなどの原料となります。健康志向からグルテンフリー食品の認知度が高まりつつあり、米粉食品が見直されています。

米を原料とする粉は多種類あります。例を挙げると、米粉は「ういろ」、道明寺粉は「桜餅の皮」、白玉粉は「あんみつやお汁粉に入っているお団子」です。お米ではありませんが小麦粉は麩まんじゅうです。麩まんじゅうとは生麩で漉した餡をくるんだ饅頭です。小麦粉に水を加えて練り、デンプンが抜けたグルテンという物質を蒸したものが生麩なのです。
  ■ 会社所在地
岩越製粉は愛知県北名古屋市六ツ師558にあります。最寄駅は名鉄犬山線「徳重・名古屋芸大駅」から1.9km、「西春駅」から2.3km です。戦前・戦後は稲作と麦畑が広がっておりました。その後は住宅が増えたこともあり、岩越製粉は細く入り組んだ道の奥に位置することになりました。目印は国登録有形文化財「旧加藤家住宅」です。

  ■ 会社概要

昭和29年創業、67年の歴史があります。岩越充洋社長の祖父が始めました。創業前は織物(ガチャマン)を営んでおりましたが下火になり商売替えを検討していました。祖母が名古屋市西区新道の出身で豆菓子に寒梅粉を使っていることを知っておりました。また、名古屋市中川区辺りはもち米の産地でもあったことから寒梅粉の製造に切り替え今日に至っております。

一宮市(尾州)の織物産業の歴史は平安時代以前からと言われ、約1300年の歴史があります。 戦後は、一宮市及びその近郊では織機がガチャンと動けば、万儲かると言われたガチャマン時代とも言われていたそうです。

■ 残ったあいちの製品

愛知県内に寒梅粉を製造する企業はごくわずかです。そのため「残ったあいち製品」になりました。以前は道明寺粉(どうみょうじこ)も製造しておりました。道明寺粉とは、水に浸し蒸したもち米を干して粗めにひいた食品です。桜餅の皮に当たる部分と説明すれば想像できると思います。

また、2007年ごろまではもう一台の円柱形窯も使用して落雁用の寒梅粉を製造していました。2本の円柱を加熱させ、その隙間に餅を入れて瞬間にせんべいにします。高温短時間製法のため純白な粉が出来上がります。これがお菓子の落雁の原料になります。

平成の初め頃までは結婚式の引き出物に落雁菓子が使われましたが今日ではその需要が減ったことや機械の老朽化もあり製造を中止しました。

■ 喫茶店文化にも寒梅粉が関係

愛知県の喫茶店文化として昔からコーヒーに豆菓子を付けています。当時はピーナッツを包む皮に小麦粉が使われていました。小麦粉は歯ごたえが堅いため寒梅粉を使った皮へと進化しました。この寒梅粉を使って豆菓子を製造したのが丸福製菓株式会社で、この豆菓子がコメダ珈琲に採用されました。 また愛知県で有名な春日井製菓の「えびピー」「いかピー」の皮にも寒梅粉が使われました。 隠れたところに寒梅粉が活躍していました。

  ■ 製造工程
 

朝3時にもち米を水に浸す作業から始まります。これはステンレスタンク2杯の量です。

タンクからざるに救って水を切り、機械の上から通してもち米を砕きます。餅米を砕くことで、次の工程の蒸練機で餅にするのにムラがなく、まとまりやすくなります。

砕いたもち米を蒸してこねる機械へ投入します。豆菓子の食感と香ばしさを両立させる為に餅米以外の粉を混ぜた独自配合の割合で蒸して仕上げております。動画では餅の焼き上がりに重要な作業の「空練り」をしております。1回の蒸しこね時間は30分です。ひたすらこれの繰り返し作業です。

つき立ての餅と同様になったモノを窯へ投入します。餅を上から投入して練器で少しずつトンネル窯(5mほどの窯)へ押し出すことで、焼き上がりが良く、製粉しやすくなります。
トンネル窯の中は鉄板のキャタピラーが上下に回っており、餅を挟んで焼いてせんべいに仕上げます。

  

上下の長方形のものが鉄板です。

この窯は昭和に開催された東京オリンピックごろに製造された年代モノです。そのため、この窯に火を入れるのに1時間要します。なぜなら窯中の鉄板に火を通す必要があります。鉄板は上下にありわずかな隙間に蒸した餅状態のモノが押された平らに伸びます。これが煎餅と呼ばれるモノです。

焼き上がった煎餅を砕いて製粉します。キャタピラーに挟まれてこんがりと焼き上がったせんべいは、荒砕きした後で製粉されます。その後、袋綴じされます。



袋綴じをした後、倉庫に入れて約2週間ほど寝かせます。これが豆菓子メーカー様へ出荷され、あの香ばしさと旨さを持った豆菓子へと生まれ変わります。

  ■ 直売用の餅つき機械
 

年季が入った石臼の自動餅つき機と新しい餅つき機が並んでいます。また、その後ろに「のし餅」の木枠が置かれていました。



  ■ 直売店
 

ナチュラルフーズ岩越
https://www.facebook.com/naturalfoods1054/
北名古屋市東庁舎(旧師勝町役場)より200メートル東へ進んで左手にございます。主に餅や赤飯、おはぎなどを製造販売しております。2021年3月で開店37周年を迎えました。主に蒸したてつきたての餅・赤飯・おはぎを工場(岩越製粉)から直送して販売しております。

一生餅(子供が生まれると一生食べることに困らないようにと子供に一生餅を背負わせる儀式) 毎日つき立て杵つき生餅 / 手作り丸餅 あんころ餅 / 赤飯 / おはぎ(北海道産小豆) 黒蜜きな粉餅 / 仏壇開き 墓開きのまる餅 / 正月用ののし餅

※ナチュラルフーズ岩越で扱うあんころ餅、おはぎは定期的に大曽根商店街朝市に出店しています。

  ■ 取材を終えて
 

写真撮影でマスクを外した時のお二人の笑顔が印象的でした。また、愛知県で残った寒梅粉製造を守る親子の絆を感じました。

製造動画をご覧できます。
こちらから

国登録有形文化財 旧加藤家住宅
この地方では知られた素封家で、「大加藤」と称された加藤家の旧宅。加藤家は、地主として栄え、江戸時代末期から明治の中頃までは酒造業も営んでいました。  この旧加藤家住宅は、江戸から明治にかけての地主層の建物としては典型的なもので、約370坪の敷地に、主屋、長屋門、土蔵、中門、高塀などがあります。また、大正から昭和にかけて建てられた、離れ・茶室が国の登録有形文化財となっています。
https://www.aichi-now.jp/spots/detail/3048/

麩饅頭で思い出すのが以前にあいち製品で紹介した大口屋さんです。 多くの著名人からも愛され続けている自慢の麩まんじゅう「餡麩三喜羅(あんぷさんきら)」
https://www.ooguchiya.co.jp

株式会社岩越製粉https://www.ekiten.jp/shop_5247374/

文責 YA(ワイエイ)ビジネスサポート 杉本 安行