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革新的取り組みと創業110年伝統の力
加藤泰稔 記事更新日.06.09.01
株式会社馬印 代表取締役社長
■問合せ先
株式会社馬印
〒454‐0011 名古屋市中川区山王三丁目16番27号
TEL(052)322−2811(代)  FAX(052)322−3344
http://www.uma-jirushi.co.jp/
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■白墨メーカーからの出発
株式会社馬印は平成18年9月、創業110周年を迎える。

110年の歴史を刻むには、旧来のビジネスに固執することなく、転機を乗り越えていかなければならない。 110年前の明治29年、加藤白墨製造所を創立。馬印の商標で学校用チョークの製造販売を開始した。

戦前からすでに国内販売だけでなく東南アジアへも学校用チョークの輸出をするほど手広く事業を展開していた。戦災で一時事業を中断するも名古屋市内で再開し、昭和30年台中ごろには再び輸出を行うまでになっていた。

創業以来、石膏製チョークの製造現場では、作業員が基本に沿って、外気温・水温・石膏量・攪拌回数などのパラメーターを調整しながら、経験値の積み重ねにより安定した製品を作り続けている。

現在では、石膏製チョークだけでなく炭酸カルシウムを原料とした製品も製造している。 石膏製は、書く際のタッチが粘っこく、はらい・はね等がきれいに出るため漢字の書き味が非常に良い。一方の炭酸カルシウム製はタッチが滑らかで、英数字が書きやすい。それぞれの用途によりどちらにも根強いファンが存在する。

石膏製チョーク

■第一の転機〜業界の壁を打ち破れ
第一の転機は昭和46年。

国内向けに木製黒板の製造販売を開始したことだ。

チョークと同じ販路が利用できることを狙った異業種進出である。当時チョークメーカーが黒板製造を行うことは、業界では相当のとまどいがあった。いまだに、黒板とチョークの両方を手広く製造している企業は当社だけである。業界の横展開が当然のように行われる現在でも珍しい事業形態、ということは、当時の社長(現会長)にしてみれば黒板製造の設備投資を含め「革命的な」決断であったといえる。

この決断は、スチール製黒板、ホワイトボードと黒板事業の拡大へとつながり、現在では、ホワイトボードが売上の6割、黒板、掲示板、チョーク、黒板拭きが3割を占めるなど、事業転換を成功させた。

■第二の転機〜独自技術を作れ
第二の転機は平成6年。

この年、ホワイトボードへのレーザー罫引システムが完成、「半永久的に線が消えない画期的な罫引加工」として加工販売を開始する。

この罫引システム完成までには10年近く要している。きっかけは異業種交流会。同地域のレーザー加工機メーカーの協力を得て開発した。

ホワイトボードの表面加工方法には2種類あり、一つは、鉄板の下地ボードにホワイトのコーティングをしただけの「スチールボード」。もう一つは鉄板にニッケル下地処理をし、その上に2層の釉薬を施した「ホーローボード」である。

ホーローボードはマーカーインクがしみこまず消去が容易であること、傷がつきにくいなどの長所があり、その結果、スチールボードよりも寿命がはるかに長いという特徴を持つ。しかし、ホーローボードに塗料罫引を施しても、ボードの寿命に対し、細い線は短期間で罫線が消えてしまう。書いたり消したりが頻繁な月間予定表・週間予定表ではその傾向が顕著になるので、太い線が必要となる。何とか、長寿命のボードに見合う耐久性のある罫線を引けないか、と考えだされたのが、レーザー罫引法である。

この罫引加工は、ホーローボードのホワイトの下地色を含む3層のコーティング層をレーザーにより上の層を溶かし、下処理の黒を表出させることで罫線に見立てている。黒色を表出させる絶妙な加工技術は平成6年に特許となっている。 レーザーによる溶融加工であるため、罫線は半永久に消えないし、0.2ミリの極細線や、細かな間隔の罫引、さらには直線だけでなく、曲線や円等の図形もきれいに仕上げることができるようになったことで、多様な罫引が可能になった。

製版を要し、相当枚数がなければコスト高となる「シルク印刷方法」や、時間がかかり線の細さに限界のあった「手書き方法」といった従来の罫引方法の欠点を克服した。 現在、力をいれているのは「オーダーメイド品」受注。縦横のサイズや黒板の罫線をユーザーのニーズに合わせて加工オーダーを受ける。ここで強力な武器となるのが、レーザー罫引技術である。細い線が引けるため、ホワイトボードの板面が機能的に有効使用することができる。他社にはまねできず、差別化の重要な要素となっている。

■伝統の力
社長談。「当社の強みは女性のがんばりです。営業を強力にサポートしてくれています。これがとても大きい。女性社員を強力な戦力とすることができているのは、『伝統』のおかげです。いつのころからか『基本に忠実な仕事を確実にこなしていく』ということが女性社員の間で定着していきました。これは先輩方のご指導の積み重ねのたまものです。とても貴重な財産ですから、この重要な戦力を一層活性化するため、今年から評価の方法も変えています」。

今年9月に開かれる110周年行事。歴代の工場長から営業サポートの礎を築いてくれた女性まで数多くの先輩が招かれる。伝統の力を築いてくれた先輩に感謝する気持ちを持ち続けたいと考えている。

その礎のもと、将来像を描く。「海外生産拠点をつくることも一時は考えましたが、まずは国内拠点を固めてから、と考えています。お客様からのご意見を確実に製品に反映させ、喜んでいただける体制づくり、という足元固めを進めています。また、ホワイトボードの用途開発にも力を入れていて、製造部門、営業、営業アシスタント、設計に加え、会長も巻き込んで組織横断的にプロジェクトを組み検討を重ねています」。

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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