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『原材料費を高くせよ』
〜ターゲットを絞り高価格戦略で市場を切り拓く
犬塚敦統 記事更新日.06.11.10
七福醸造株式会社 代表取締役社長 
■問合せ先
七福醸造株式会社
〒444-1213 安城市東端町南用地57(本社)
TEL 0566-92-5213(代) FAX 0566-92-6210
http://www.shirodashi.co.jp/
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■信用不安の中、チャンスはやってきた

白醤油の専門メーカー七福醸造株式会社社長の犬塚敦統氏は、昭和49年最大の危機に直面する。オイルショックの余波を受け、それまでの急成長から苦境に立たされた。資金繰りは苦しく、銀行から毎月借入をしては、仕入代金や給料の支払いに充てていた。信用不安が噂され、ここぞとばかりに足を引っ張る同業者まで現れる始末。社長は悔しさをエネルギーに変え、全国を新規営業で回り、取引先開拓を始めた。自身の給料も低く抑えるだけでなく、そのほとんどを会社に入れてもなお業績改善の歩調は遅く、定年間近の2人と、やり直しの利く若手2名との計4名を泣く泣く解雇する事態となってしまった。

このとき、犬塚社長が今思い出しても悔しい事件が発生する。4名に退職金が支払われたと聞くや「我もわれも」と大量の辞表が積まれたのだ。『社員は、この会社の将来に希望を持ってくれていない』。愕然とした。現実の問題として退職金に回せる資金もなく、従業員に納得してもらうしかなかった。

しかし、チャンスはやってきた。

■日本初、白だし醤油

白醤油は小麦9割、大豆1割で作られる(ちなみに濃い口醤油は一般的に5:5である)。愛知県碧南市が発祥の地とされ、今も愛知県の特産品である。色が淡く、糖分が高く、上品な味が特徴。茶碗蒸、おでん、丼物、吸い物、鍋物、玉子焼をはじめ色、味、香りを求める様々な料理に使われる。

七福醸造株式会社は先代社長が昭和25年に醤油・味噌等の製造を目的に創業、現在では白だしではトップシェアを有し、また、日本唯一の有機JAS白醤油醸造認定工場にもなっている。

白醤油にだしを合わせた「料亭白だし」を初めて世に出したのも当社で、現在も主力商品となっている。

■新商品のアイデアはお客様に聞け

経営建て直しのチャンスは取引先にあった。

ホテルのある観光地高山のホテルは繁忙を極めていた。白醤油ユーザーであるホテルの料理長。「白醤油にだしが入っていれば便利なのだが」。

当初は白醤油の風味・香りを上手くひきたたせる「だし」がなかなか見つからなかった。「原料が味の決め手」と原料探しに全国をまわり、鰹節、しいたけ、昆布のだしと白醤油をあわせ試作を繰り返した。結局、料理長のOKが出るまで4年を要した。

昭和53年「料亭白だし」として販売を開始。その便利さから、多くのホテルや料亭に利用されるヒット商品となり、業績は持ち直した。

■高級化・高付加価値戦略
「毎年材料費を上げろ、値引きはしない」

しかし、ヒット商品が出ると大手メーカーが目をつけ参入を試みるのが世の常。

「大手とは喧嘩してはいけない。中小企業は大量生産にも対応できない。高級モノに特化しなさい」と師と仰ぐコンサルタント一倉定先生の教えを忠実に守り、本物志向・高価格・高付加価値商品に特化する。原料は料亭白だしの40%以上増、もちろん価格も40%アップ、商品名も「特選料亭白だし」とした。

業務向けの反応は、現場を預かる料理長・板前には「料亭白だし」の良さが浸透しており、「特選」になっても比較的高いリピート率を得ることができた。

「当社では、毎年原材料費を上げないと製造責任者は減俸になるのです。他社が追いつけないほどの商品をつくっていくことが必要なのです。必ず価値を感じてくださる方はいらっしゃいます。本物をつくっている自信があるからこそ、値引きは一切していません。取引が終了になる場合もありますが、当社の製品を安売りするつもりはありません」。高級化・高付加価値化の戦略は明確である。

■人間力を『磨け』。
環境整備、社内から地球環境まで

当社は、経営戦略とは別の角度から注目を浴びている。「人づくり」である。

キーワードは『心を磨く』。

当社の1日は「環境整備」から始まる。工場・事務所・階段、それぞれに担当場所を『磨き』あげる。掃除ではない。『磨く』のである。社長自らも便器を磨き上げる。きれいにすることが目的ではなく、きれいに磨き上げることで「自分の心を磨く」ことを目的としている。年に数度は工場のラインも止める「集中環境整備」を行い、日ごろでは手が届きにくい部分まで感謝の気持ちを込めて磨く。「心を込めて真剣にやることにより物が磨かれ、自分の心も磨くことになるのです」。

「自分の心を磨く」ことを目的に磨かれたトイレ

身の回りの「環境整備」にとどまらず、地域の学校へ出向いてのトイレ掃除、地域のゴミ拾い(当社ではゴミを拾うは徳を拾う、として「徳拾い」と言っている)の他、地球環境 を守るのために間伐・巻枯らし、砂漠での緑化活動など、様々な「地球環境問題」に積極的に取り組んでいる。

当初は、社員教育の目的で始めた年1回の100kmウォーキングは、噂を聞きつけた社外からの参加希望者が増え続け、今年の第11回大会の参加者は600名以上にまで膨れ上がった。不可能と思えることに挑戦し、自分の殻を打ち破るもよし、サポート隊として体力の限界を超えても歩き続ける参加者の後押しをするもよし、いずれにせよ関わる人が助け合い一体となることで、感謝をすることに「気づく」心を得ることができる。

明確な経営戦略と『磨かれた』心。これが、当社の両輪である。

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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