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精密加工の最終工程《研削加工》の品質を守れ
竹内賢一 記事更新日.07.02.14
株式会社エフエスケー 代表取締役社長
■問合せ先
株式会社エフエスケー
〒478-8641 愛知県知多市新知字中殿1番地
TEL 0562-55-3115  FAX 0562-56-0474
http://www.fsk-j.co.jp/
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■ものづくりの基盤技術を支える企業

「サポートインダストリー」。ものづくりを支える基盤技術。 大企業がどれだけ優れた製品を作ろうとも、それは大企業の力だけではない。金型・めっき・切削をはじめとするものづくりを支える高度な技術・企業集積の上に成り立つ、いわば「ものづくりのインフラ」があればこそ。研削加工も加工の最終工程を支える基盤技術である。

研削加工とは、部品などの工作物の表面をごくわずかに削り取り、必要な寸法精度・形状・面状態にする仕上げ加工である。付加価値の高い高精度部品の加工には欠かせない。この研削加工で「削り取る」道具として使用されるのが「研削砥石」である。

この研削砥石を製造販売し、中でも軸付砥石分野では国内の50〜60%のシェアを占めるニッチトップ企業が株式会社エフエスケーである。

■研削砥石とは何か

「砥石」といえば、包丁を研ぐときに使用する長方形の石を連想するが、それは研削砥石とは異なる。

イメージ作りのため誤解を恐れず言えば、サンドペーパーのザラザラの部分を固めたものとでも表現されようか(写真参照)。

研削砥石は「砥粒、結合剤、気孔」の3要素で構成される。 「切れ刃にあたる砥粒をどれだけの量(砥粒率)、どの程度の密度(気孔率)で、どの程度の保持力(結合剤率)で固めるか」。当然であるが「砥粒率+気孔率+結合剤率=100%」となる。砥粒率を一定にすれば、結合剤の量が少ない(結合剤率が低い)ほど、気孔が多くなり(気孔率が多くなる)、砥粒の保持力が小さくなる。

切れ刃である砥粒には、石英(水晶)よりも硬いアルミナや炭化ケイ素、ダイヤモンド、CBN(立方晶窒化ホウ素:ダイヤモンドより硬度が劣るものの、耐熱性に優れる特性を持つため、摩擦熱が高くなる焼入れ鋼の研削に使用される)などが主に使用される。一方、それを保持する結合剤は、陶磁器と同様の成分の「ビトリファイド」結合剤と、プリント基板で使用されているフェノール樹脂を基材とした「ベークライト」結合剤が主に使用されている。

このように各率の組み合わせと砥粒・結合剤の選択により、様々な研削砥石が作られる。

■研削加工のメカニズム

この砥石を加工対象物と接触させることで、切れ刃にあたる砥石の表面にある砥粒が対象物を削る。砥粒が磨耗し先端が丸くなってくる(切れ味が落ちてくる)と摩擦が大きくなる。摩擦力が砥粒の保持力を超えると、砥粒が脱落、次の砥粒が砥石の内部から現れる。このように切れ味が落ちると自然と新しい切れ刃が現れ、一定の研削力を維持するメカニズムを持っている。

形状は研削加工機械により様々で、円盤状の砥石であれば、研削加工機械の回転軸に固定し高速で回転、加工対象物を接触させることで研削する。精密自動車部品、ベアリングに代表される内面研削等、複雑な研削を行なう場合には、砥石の中心に軸がつけられた軸付砥石が使われる。(写真参照)

■ユーザーニーズに応え、ビジネスモデルを変化

株式会社エフエスケーは、1940年6月不二製砥所として伊藤茂氏により設立された。 その60余年の歴史のうち、前半30年と後半30年で、大きくビジネスモデルを変化させてきた。 前半は、軸付砥石国内シェアNO1となる「ナンバーワン商品」の30年、後半は、様々な精密研磨の個々のユーザーニーズに対応する「技術開発型企業」としての成長、いわば「オンリーワン商品」の30年である。

■軸付砥石で国内シェアトップを勝ち取る
(前半の「ナンバーワン商品」の30年)

創業当初より軸付砥石の製造を開始。軸と砥石のブレが少なく、高い評価を得てシェアを伸ばす。 規格はすでにアメリカで標準化されており、当社では、その品質を高めるだけでなく、規格品の全てを在庫で持ち即納体制をとるなど、顧客への対応力を高めた結果、国内シェアトップとなり、現在もその地位を守り続けている。

■精密研削加工、ゼロからの出発
(後半の「オンリーワン商品」の30年

加工対象物が精密化する中、時代は、規格品だけでなく、ユーザー企業の加工条件にピタリとマッチし、かつ、加工精度のよいオーダーメイドの砥石を求めていた。

しかし「規格品をやっていたから、そのノウハウでユーザー対応型も横展開で可能」というのは大間違い。 規格品時代は、ユーザーのニーズに応えはするものの、「多くの規格品の中からユーザー側で最適なものを使ってください」というスタンス。しかし、ユーザーニーズに合わせる「オンリーワン」商品はそうはいかない。加工対象物の種類・硬さ、加工部分・加工形状、加工機械の状況など、試行錯誤しながら最適点を見つけていかなければならない。

前段の、『研削砥石は「砥粒、結合剤、気孔」の3要素で構成され、切れ味の悪くなった砥粒が脱落することで新しい切れ刃が現れ、切れ味が保たれる』というメカニズムは、3要素が適切に選択された場合である。 材料が柔らかかったり砥粒の保持力が強すぎたりすると、古い砥粒の脱落がうまくいかず、切りくずによるが「目詰まり」が発生し研削ができなくまってしまう。

また、砥粒の保持力が強すぎると、砥粒の切れ味が悪くなっても脱落せず「目つぶれ」により研削できなくなる。逆に、保持力が小さい砥石に硬い材料を接触させると、砥粒がどんどん脱落し、砥石の消耗が激しくなり工具コストが大きくなってしまう。 加工対象物、加工の状況、さらに加工機が専用機であれば専用機ごとに「オンリーワン」の性能・形状が必要となる。

■「オンリーワン」商品ならではの勝算

「だからこそ、大企業と競合しても中小企業にチャンスがあるのです」と竹内社長は言う。 「当社は精密加工向けの小物の砥石分野を得意とした企業です。性能のみならず納期や緊急時の即納体制まで、様々なユーザーからのニーズ提示があります。知恵を出し、お応えするのが当社の使命です。資本力の世界では、中小企業はどうしようもありませんが、知恵の世界ですから大企業も中小企業もありません。特に性能については、ニーズの聞き取りが重要になります。時には、削る材料が何なのか企業秘密にされたまま相談を受けるケースもあります。この場合、材質・用途様々な角度からの聞き取りをしながら、砥石の提案を行っていきます」。

現在では「オンリーワン」の精密加工対応砥石が売上の40%となり、「ナンバーワン」モデルの25%を大きく上回るまでに成長した。

精密内面研削用砥石

■最終工程を預かる「サポートインダストリー」企業

業界での評価も高く、機械メーカーが研削加工機を納入する際、砥石の選定も任され一括納入するケースで、当社の砥石が選ばれるケースが多くなっているとのこと。

「研削砥石は『最終品質』を決める重要な加工パーツです。ユーザーにとっては最終仕上げ工程になりますし、機械メーカーにとっては、加工機の性能を余すところなく引き出すための重要な工具です。ユーザー企業だけでなく、機械メーカーからも高い評価をいただいているのはありがたいことです。今後ともサポートインダストリー企業としての使命を果たしていきたいと考えています」。

「サポートインダストリー」の使命を果たすべく、東南アジアへの企業進出に合わせ、製造販売会社をタイに設立、日系タイ工場・東南アジア地域向けに出荷、現地でのものづくり基盤に一役買っている。

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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