高度成長期の畳といえば黒い縁(へり)の1種類。それでも売れた。縁の色にバリエーションが出来ただけで目新しかった時代である。畳店も、ゼネコンや住宅メーカーからの注文に頼っていれば、問題なく受注でき、それにつれ畳製造機も順調に売上を伸ばし、シェアを拡大していった。
他社との競争の中、シェアの拡大を図ることができたのは、当地域に産業インフラに恵まれ、織機や縫製機器の協力会社が数多くあり、技術力も量産への対応力も高かったことも要因の一つである。
しかし、住宅の洋風化が進展し、1993年をピークに畳の製造品出荷額は減少し始める(工業統計表より)。
そうした傾向に追い討ちをかけたのが「畳床のワラからダニが発生する」という現象であった。従来の日本家屋にないほど住宅の密閉度があがり、大掃除の際の畳上げの習慣も減りダニの発生しやすい住環境になったため、一挙に顕在化することとなった。
ダニ対策は、畳床にワラではなくスチロール材、木材チップなどを使うことで一定の成果を得るのだが、住宅に対する価値観の多様化による需要減少の流れは変えられなかった。
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