しかし、自動車の心臓部の一つともいえるトランスミッション部品を「コストダウンができる」という理由だけでは受注できるべくもない。「品質水準を満たす」が大前提である。求められる水準は、例えば「歯形の0.5ミクロンの凹みは不良」とされるレベルである。 歯車の生産工程では、歯切りを行った後、強度を上げるため熱処理を行うが、この時、変形ひずみが生じる。0.5ミクロンの凹みが許されない世界では「ひずみは生じるものだから仕方がない」では許されない。ここでは熱処理後の変形ひずみ分を予測して歯切りを行うという技術力が求められる。
精度ばかりではない。歯車の強度に余裕を持たせようとすると、否応無く大きくなったり、重くなったりしてしまい、軽量化を進める自動車産業のニーズに応えられない。
「重さ、大きさを最小限に、しかし精度や安全性という品質は最大限に、という極限設計のニーズを満たすために、どの工程が油断しても要求水準には達しないとことろまできています。」
こうした要求レベルを満たすため、技術力向上に向け、技能士の資格取得の奨励なども行っている。
中村社長がポツリと発した言葉。「従業員の努力の他、協力工場様や刃具、鋼材メーカー等の仕入先様の協力によって、全ての工程で、品質・コストを含めた技術力が維持できています。その意味では、日常の積み重ねで、月産400万個の歯車を量産できているということ自体が大変な技術だといえるのかもしれませんね。」
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