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オンリーワンの「加飾」技術を求めて
佐藤啓子 記事更新日.08.05.08
東海ホーロー株式会社 代表取締役
■問合せ先
東海ホーロー株式会社
〒448-0006  刈谷市西境町広見63
TEL 0566-36-8822(代)  FAX 0566-36-8838
http://www.toukai-h.jp/
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■ホーロー製水道メーター目盛盤製造のオンリーワン企業
戦後間もなく、水道メーターの針を読むための目盛盤(銘板)の研究に没頭する男がいた。後の東海ホーロー株式会社の創業者佐藤義彦氏である。

どの企業でも「自社しかできない」という技術の開発に余念がない。しかし、当社は、戦後間もない時期に、すでにホーロー製水道メーター目盛盤製造でオンリーワンの地位を確立する。その後、アルミ・樹脂・ガラス材等への銘板材料の変化にも対応、水道だけでなくガスメーターへも事業フィールドを拡げ、現在でも、文字盤印刷技術について業界内での定評を得ている企業となった。

■戦後まもなく、オンリーワン技術を確立
水道メーターには湿式と乾式がある。湿式とは、古くから採用されているメーターの分類の一つで、目盛板の部分が水に浸っているものをいう。対する乾式とは、目盛盤が水に浸からない形式のものをいう。

戦後長らく、水道メーターは湿式が主流であった。したがって、常に水に浸った環境下に置かれる銘板の目盛が消えないように、銘板はホーローが使われていた。一般的なホーローとはガラス質の釉薬を、鉄などの金属表面に被覆して高温で焼成した物である。さびにくく、耐食性(腐食に強い)、対摩耗性(すりへらない)などの特徴を持つ。

但し、当社で開発した水道メーター用ホーロー製目盛盤は鉄板ではなく銅板を使用したもので通常のホーローに七宝焼きを融合させた様なものである。

水道メーターは、計量法により8年で取り替えることが定められているため、8年間という期間、目盛印刷を維持する必要があった。しかし、目盛を印字した後、ホーローとして焼成しても長期間水に浸っているため、退色するケースがあった。

そこで創業者は、絵の具に工夫するなどの試行錯誤の末、退色の少ない銘板への印刷技術を確立した。銘板の目盛には赤黒の2色が使われているのだが、他社製は時間の経過とともに、赤色が退色(黄変)していわゆるお化けメーターとなってしまうのに対し、創業者の作った銘板だけが、赤色を保ち続けた。

■全国展開、業界を席巻
創業後、しばらく、作業所のあった多治見市から名古屋市にある大手水道メーターメーカーまでリュックで銘板を持ち込み、その代金をリュックに詰め帰路に着く、ということを続けていたが、品質が高い評価を受け、この大手メーカーの近隣に工場を構えるまでになった。昭和22年、東海ホーローの前身「中京ホーロー株式会社」の誕生である。

戦後早々に、今で言う「オンリーワン技術」を持つ企業となったわけである。
その後、その他の大手水道メーターメーカーへの納入も実現、昭和35年には西日本地域への拠点とすべく、大阪工場も設立、シェアを伸ばしていった。全国の水道メーターメーカーからオーダーが集中しだしたため、生産が間に合わず、メーカーの担当者が当社でできあがるのを待ち、まだ熱い状態の「できたて」を、自社へ持って走る光景も珍しくなかった。

■銘板材料の変化に伴い、技術も進化
その後、ガスメーター事業へも参入すべくオフセット印刷部門を開設しアルミ銘板製造にも着手。計量器事業のいう特殊な業界の中でオンリーワン企業として長く安定経営を続けてきたが、水道メーターが湿式から乾式タイプへと主流が変わるのに合わせ、銘板もホーローから樹脂へとシフトしつつあった。平成6年には、創業者のご息女である現社長の佐藤啓子氏へのバトンタッチをしたこともきっかけとなり、シルクスクリーン印刷にも着手し樹脂銘板製造へも事業分野を拡大することになる。

オフセット印刷やシルクスクリーン印刷を社内に取り込み、水道及びガスメーター銘板製造への展開を進める中でひとつの問題に直面した。印刷後のプレス抜き加工は外部委託していたが、 スクリーン印刷の性質上、印刷時にスクリーンの「版」に伸びが生じてしまうため、等間隔に開けられたガイド穴どおりに打ち抜いていくと、徐々に打ち抜いた銘板と印刷面とがずれてきてしまうのだ。又、このガイド穴加工だけでも多大な工数を要していた。

これに対処するため、銘板の印刷面の一部にマーキングを行い、プレス打ち抜き時にカメラで印刷部のマーキング部分のXY座標を読み取らせ、この点を基準にNC制御で位置決めして打ち抜きを行う独自技術を開発した。これにより、プレスずれがなくなっただけでなく、プレス用のガイド穴が不要になったため工数削減にも成功。更に製品間ピッチを詰めることが可能になり、1シート当たりの製品個数取り数が増え、材料歩留まりを向上させることにも成功した。

又、最近では部品点数を減らしてコスト削減を図りたいという顧客の意向を受け、従来は銘板の上に組付されていたガラスへ直接印刷するという試みにもパット印刷やシルクスクリーン印刷などで独自の印刷条件を設定し、機能的にも満足した製品を提供している。 現在では、都市ガスメーターの90%以上、プロパンガスメーター6社中5社に当社の目盛板が使われるまでになっている。

■三次元曲面へのホットスタンプで「加飾」企業へ
現在、新技術として取り組んでいるのが三次元ホットスタンプ(通称3DHS)である。
この新技術により、従来は2次元(表面)だけに箔を熱転写する技法であったホットスタンプの世界を3次元的に相手物の側面まで箔を熱転写する事を可能にした。

使用する箔は木目調や柄、金属蒸着などの汎用の箔で対応可能であり、相手物は樹脂成形品を対象として加飾する。

三次元曲面への加飾は、水圧転写(図柄が印刷された特殊フィルムを水面上に浮かべ、プラスチックや金属などの立体に水圧を利用して図柄を転写する印刷技術)やインモールド(樹脂成形時に、金型の中にシートを入れて樹脂を注入し一体成形する技術)、樹脂メッキなどの方法によってきた。

これを、当社では、材料メーカー、設備メーカーと連携し、三次元成形樹脂の表面へシワなく箔を加飾することに成功した。

たとえば、写真のエアコン外装部品の例では、角の部分は箔にシワが寄らず、前面から側面にかけ、自然に模様が転写されていることがよくわかる。

 又、この工法はリサイクル性にも富んでいる。一旦箔が転写された相手物(樹脂成形品)を粉砕して再成形しても物性が落ちないという事が立証されており、メッキとは異なった地球環境に優しい新しい工法としても着目されている。

ホーローへの加飾技術を開発し、オンリーワン技術を守り続けた創業者とは対照的に、就任後、樹脂やアルミ、ガラス等の様々な材料の銘板への挑戦、三次元曲面へのホットスタンプ加飾技術開発と、常に新たな挑戦を続ける佐藤啓子社長は言う。

「当社は『加飾』技術に強みを持ち続けた会社です。耐水性に優れたホーローへの加飾技術に始まり、プレス技術と連動させ歩留まりを飛躍的に向上させた樹脂やアルミ銘板への加飾技術、そして、この三次元成形樹脂表面への加飾技術へと、材料の変化に対応しつつ、常にオンリーワンの加飾技術を求め、挑戦してきました。銘板業界の中で印刷技術とプレス技術を併せ持つ企業はたくさんあります。しかし、樹脂成形とプレス技術、さらに三次元曲面への加飾技術の3つを併せ持つ企業となると、まだまだ数少ないようです。当社では加飾=製品のお化粧と考えます。当社はこのお化粧にこだわった、お化粧を追及する会社です。この技術力で、家電製品など外観物の樹脂成形部品の製造・加飾といった、新しい分野への挑戦を続けたいと考えています。」

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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