木下社長が創業者である父親から会社を引き継いだのは、17年前。就任直後から、「技術力のあるメーカー」を「狙った市場でニッチトップとして生き残り続ける企業」へとイノベーションするため、経営マネジメントに力を入れてきた。「今では、毎月の会議には多くの資料を用意できるようになりましたが、当初は経営資料といってもほんの数枚でした。
外部環境の変化に対応した施策を展開して管理項目を増やしたり変えたりしながら、マネジメント力を向上させてきました」。現在では、年度計画に基づき、方針管理の徹底とその実行の舵取りをする取締役会の付属機関である機能別会議によりPDCA(木下社長は「反省から始まるので『CAPD』です」と表現する)を回している。
来期の年度計画を立てる前に、まず、今期の実績はどうだったか、それに対する評価はどうだったか、今後解決すべき課題は何か、新たな問題点はないか、ということについて反省をする。それを踏まえて来期はどのような計画とするのか、を考え、年度計画を立案する。全体方針を策定した後、全体方針に沿った目標が、各部・個課に至るまで策定される。
策定された計画に対する舵取りは、月一度の機能別会議で行われる。
機能別会議とは、日々のオペレーションを行う縦割り組織の「部門別管理(いわゆるライン)」とは別に、部門横断の「横串」を入れるために設けられた会議である。取締役会の付属機関として位置づけられ、月々の実績を踏まえ、どのような手を打つかを考える役割を持っている。経営全般についての経営会議、製造部が中心となる生産会議、品質管理部が中心となる品質会議、営業・商品開発室が中心となる開発会議を立ち上げ、単なる報告の場ではなく、議論をする場として、各部・室の責任者を全員集め実施してきた。現在では品質システム会議、環境システム会議、安全衛生委員会、改善提案推進委員会を加え8会議にまで増えた。
実績に対する評価・処遇も制度として確立している。管理職では経営への貢献度合(方針管理への噛み込み具合)、メンバーにあっては提案制度(個人での改善提案)や3ヵ月ごとの「社長診断」(チームごとのQC活動)などをもとに、「同一労働、同一賃金」を実践している。「評価順位は改訂の度に(ほぼ毎月)食堂に張り出されます。例えば、中途入社で当初は給料が安くとも、評価が高ければどんどん上がりますし、逆に降格事例もあります。部長で一番の若手は47歳です。年功序列型賃金は17年前からありません」と木下社長。
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