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「本当に理にかなった」技術と経営でニッチトップを
木下良夫 記事更新日.08.07.01
シンニチ工業株式会社 代表取締役社長
■問合せ先
シンニチ工業株式会社
〒442-0863 豊川市平尾町天間48
TEL 0533-88-4151(代)  FAX 0533-88-5296
http://www.shinnichikogyo.co.jp/
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■自動車・電機業界に高いシェアを持つパイプメーカー
シンニチ工業株式会社は、ステンレスや鉄、チタンの薄板を材料にし、大径(主に60〜180o)薄肉(厚さ1o前後)パイプ製造技術をコアコンピタンスにもつ企業である。

1970年、現社長の木下良夫氏の父親が、それまで経営していた自動車関連メーカーをM&Aにより売却後、設立した。

当初は、土木建設工事現場で給排気水・送排泥管などの仮設資材として使用されるパイプや建機関連のパイプが、80年代後半〜90年代後半にかけては、エアコン室外機内のコンプレッサーの外筒などに使われる電機関連のパイプが主力事業であった。現在は4輪・2輪車のマフラーや触媒用外筒など、排気系に使われる自動車関連のパイプが中心である。電機関連では、一時期はコンプレッサー外筒用パイプの世界シェアがトップの時期もあり、現在でも国産のエアコンの多くで当社のパイプ材が使われている。また、自動車の排気系向けでも、高いシェアを有している。

■残留応力の少なさから支持を受ける
数多くあるパイプメーカーの中で、何故当社がこれほどの支持を集めるのか。 薄板は丸めてパイプ状にすること自体が難しいということもあるが、問題は丸めたパイプ自体にある。

金属の平板をパイプ状に丸め、つなぎ目を溶接するような成形や溶接を行なうと「残留応力」という、外的な力がなくとも、その金属内部に始めから存在する「ストレス」のような力が生じる。こうした残留応力のあるパイプに対し、曲げなどの加工をすると「ストレス」が表面化し、破れなどの破壊が生じることになる。

これに対し、当社のパイプは、長年培った独創的で先進的な塑性加工技術や溶接技術等により、残留応力がほとんどなく「薄肉にもかかわらず成形、曲げ、縮管、拡管加工をする際にも割れなどの発生が少ない」ことが特徴である。つまり、後工程でパイプを加工するユーザー企業からは、加工工程で割れなどの不良発生が少ない、歩留まりのよい「材料」として、支持されているのである。

■短所を長所に転換する生産ライン
では、「独創的で先進的な塑性加工技術や溶接技術」とは何か。

「企業秘密もありますので詳しくはお話できませんが、一言で言えば、様々な技術の基本、原理原則に立ち返り『本当に理にかなったことをする』ということです。基本をよく見直し、『加工性のよいパイプをつくる方法は何か』を見つめ直しているだけで、従来の理論にはなかった新しいやり方をするというような、特に奇をてらったことをしているわけではありません。また、大企業が使っているような最新設備が入っているわけでもありません。求められる生産量も異なりますし、資金力も違います。資金が豊富にあれば、材料を大量に調達して、大きな設備で速く、大量生産するというやり方もありますが、中小企業ではそうはいきません。そこで、生産スピードが多少劣ろうとも、生産量に応じた設備を安価に導入し、在庫を減らすことで、『財務的な生産速度(資産回転率)』を上げて行こうと考えたわけです。つまり、『スピード』というものの発想を「単なるラインとしての生産速度」から「経営としての速さ」へ転換しようと。そういう視点では、当社の『財務的な生産速度』は非常に速い。逆に『ラインとしての生産速度』は、決して速くありません。むしろ遅いぐらいかもしれません。しかし、この「遅い」という短所が他社と異なる『曲げなどの後加工をしても破断しない』製品を生む長所になっているのです。

顧客ニーズからすると、どれだけ生産性の良い現場で作られた製品でも、曲げたら割れるようなパイプは不要でしょうから、言わば、遅いラインの現場だからこそ、当社の活きる道があったともいえます」。

■年度計画をマトリックス組織でマネジメント
木下社長が創業者である父親から会社を引き継いだのは、17年前。就任直後から、「技術力のあるメーカー」を「狙った市場でニッチトップとして生き残り続ける企業」へとイノベーションするため、経営マネジメントに力を入れてきた。「今では、毎月の会議には多くの資料を用意できるようになりましたが、当初は経営資料といってもほんの数枚でした。
外部環境の変化に対応した施策を展開して管理項目を増やしたり変えたりしながら、マネジメント力を向上させてきました」。

現在では、年度計画に基づき、方針管理の徹底とその実行の舵取りをする取締役会の付属機関である機能別会議によりPDCA(木下社長は「反省から始まるので『CAPD』です」と表現する)を回している。

来期の年度計画を立てる前に、まず、今期の実績はどうだったか、それに対する評価はどうだったか、今後解決すべき課題は何か、新たな問題点はないか、ということについて反省をする。それを踏まえて来期はどのような計画とするのか、を考え、年度計画を立案する。全体方針を策定した後、全体方針に沿った目標が、各部・個課に至るまで策定される。

策定された計画に対する舵取りは、月一度の機能別会議で行われる。
機能別会議とは、日々のオペレーションを行う縦割り組織の「部門別管理(いわゆるライン)」とは別に、部門横断の「横串」を入れるために設けられた会議である。取締役会の付属機関として位置づけられ、月々の実績を踏まえ、どのような手を打つかを考える役割を持っている。経営全般についての経営会議、製造部が中心となる生産会議、品質管理部が中心となる品質会議、営業・商品開発室が中心となる開発会議を立ち上げ、単なる報告の場ではなく、議論をする場として、各部・室の責任者を全員集め実施してきた。現在では品質システム会議、環境システム会議、安全衛生委員会、改善提案推進委員会を加え8会議にまで増えた。

実績に対する評価・処遇も制度として確立している。管理職では経営への貢献度合(方針管理への噛み込み具合)、メンバーにあっては提案制度(個人での改善提案)や3ヵ月ごとの「社長診断」(チームごとのQC活動)などをもとに、「同一労働、同一賃金」を実践している。「評価順位は改訂の度に(ほぼ毎月)食堂に張り出されます。例えば、中途入社で当初は給料が安くとも、評価が高ければどんどん上がりますし、逆に降格事例もあります。部長で一番の若手は47歳です。年功序列型賃金は17年前からありません」と木下社長。

■要求が難しくなるほどチャンス
技術とマネジメントの両輪により、「狙った分野でトップになる」を実現させてきた。しかし、難しい要求が増えてきているという。「おかげさまで、100o以上の大径で1oの薄肉パイプで加工性の良いもの、といえば当社製ということで評価をいただいています。しかし、鋼種が耐食性の高い材質へシフトしつつあり、加工が難しくなっています。また、納品先での成型も、部品として組付けをしやすくするために、複雑な形状への加工が求められてきているようです。加工性の良いパイプが求められるようになればなるほど、当社の技術力がよりクローズアップされてくるはずです。営業・商品開発・生産技術・製造技術・品質管理等のマネジメントができている当社にしかできないものがあるのでは。チャンスだと考えています。」と語る木下社長である。
取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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