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売上9割減からの復活〜自社製ポリ袋洗浄機が企業をつなぐ
間瀬隆夫 記事更新日.08.09.01
株式会社カネミヤ 代表取締役
■問合せ先
株式会社カネミヤ
〒475-0807 半田市八軒町128
TEL 0569-23-2871(代)  FAX 0569-23-2872
http://www.kanemiy.co.jp/
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2003年、株式会社カネミヤの間瀬隆夫社長は困り果てていた。「脱下請」で開発を始めた、初の自社ブランド製品を展示会に出展しようとしたが、出展料の30万円がなかった。下請けの仕事がなくなり、売上は9割減。金融機関からは100万円の融資さえも断られた。社長個人が支払うことで、ようやく新製品の展示にこぎつけた。今では、当社の売上の3/4以上を占め、大企業が注目する環境事業は、こうして立ち上がった。

■設立12年目の大ピンチ、環境事業へ参入

潟Jネミヤは、間瀬社長が金属加工機械メーカーの営業から独立・設立した。

当時、職人の勘と技で行っていた板金加工の仕事を、三次元CAD、CNC工作機、三次元測定器などを導入して、無人化・自動化することに成功。誤差5/100ミリという精密板金加工技術である「シートメタル」技術を確立した。この技術により半導体組立機の大手メーカーと取引を開始、電子部品をプリント基板に配置する機械「チップマウンター」の部品を受注していた。業績は順調に伸びていたが、2001年ITバブル崩壊の余波を受け、半導体関連の仕事がストップし、売上の90%を失った。

90%の売上減というピンチに対し、間瀬社長が出した方針は「自社ブランド製品による建て直し」であった。「それまでずっと下請けの仕事をしていましたので、下請けでいることの難しさや簡単さもわかっていました。しかし、下請けでは自分たちで主導権を握り、方向性を決めていくことは難しい。たいへんなのはわかっていましたが、自社ブランド製品の開発を始めたわけです」と当時を振り返る間瀬社長。

では、何をするか。当時「有望」とされていた産業は、「ナノ」「バイオ」「IT」「環境」などであった。しかし、「ナノ」や「バイオ」はわからない、「IT」は今まで関わってきたが、こりごりだ。「環境」ならば、自分たちが今まで培ってきた技術が活かせる場があるかもしれない、と方向性を定めた。

当時、環境分野では「生ゴミ処理機」で参入する企業が多く、当社も製造トライをしたが、試作段階で市場評価が芳しくなかった。そこで方向転換し、コンビニ弁当からヒントを得て、廃棄される食品を、包装材と食品とに分別することができればニーズがあるのではないか、と考えた。

■徹底したマーケットリサーチで見えてきたビジネスチャンス

こうして、2003年、パック・袋の分別を瞬時に行なう包装自動分別処理機「Bun−Bun」が開発された。簡単に分別できることへの評価は高かったが、セールスにはあまりつながらなかった。

しかし,食材の搬送等に使用されているポリ袋は内部が植物性油や液体等で汚れているが, この汚れが取れるような洗浄機があれば今まで廃棄物として出していたごみがプラスチック原料に生まれ変わる事が判りました。

そこで、従来なかった軟質プラスチックの洗浄機の開発に乗り出す。現場ニーズをつかみきれていなかった「Bun−Bun」の教訓を活かし、開発段階からマーケティングリサーチを徹底した。その結果「水の使用量を極少に」「早い処理」「コンパクトに」という3つのニーズを満たす必要があり、また、そこにビジネスチャンスがあることも分かった。例えば「コンパクト」ということでは、ターゲットとする食品会社のバックヤードはあまり広くなく、7m以下に抑える必要があった。しかし市場のライバル機は20〜30mにわたる「プラント」しかなく、バックヤードに置けるコンパクトさを実現すれば、導入できるメーカーが大きく増えるはずだということが見えてきた。

■反応上々の展示会

翌年、ポリ袋自動分別洗浄処理機「Bun−Sen」を開発・販売開始。全長を7mに収め、固定刃により袋を切り裂きながら、洗浄水を噴霧し、回転羽根に取り付けられた特殊接触体で摩擦洗浄することで、1袋2秒の高速洗浄が可能になった。洗浄水は噴霧するため、水使用量も1時間当たり20リットルを実現。工業用洗浄器の1時間当たり1t〜2tと比較すると1/100となり、「速い」「安い」「コンパクト」という市場ニーズに応えることに成功した。

展示会での反響は上々。「乳製品のベタベタした付着物はとれるのか」「肉の包装シートの血や脂はとれるのか」「チーズ包装物の付着物はきれいになるのか」など様々な要望が大手食品メーカーから出された。

「大手メーカーの安全基準は各社異なるため、それごとに仕様を合わせていかねばなりません。部品のほとんどが自社で内製化しているため可能になりました」。

■「機械を売る」のでなく「リサイクルの仕組みを売る」

しかし、機能が優れている、というだけでは新参者の中小企業がビジネスとして成功は難しいと間瀬社長は感じていた。「考えても見てくださいよ。田舎の聞いたことのない中小企業が『いいものができたから、買ってくれ』と大企業へ売り込みに行っても、相手にされませんよ」。

そんな『田舎の中小企業』の打った手が、再生樹脂メーカー、有限会社秋葉樹脂との事業提携である。

同社は1000tの生産能力があるにもかかわらず、材料が250tしか集まらず、低操業度に苦しんでいた。そんな折、カネミヤの分別洗浄機の評判を聞きつけ、機械の見学に訪れた。洗浄されたポリ袋を見てびっくり。「これだけきれいになっているのなら、リサイクル材として充分使える」。

早速、この洗浄機で発生したポリ袋を、カネミヤグループが有価物として納入ユーザーから購入し、秋葉樹脂へ販売するビジネスモデルを構築。

これにより、単なるリサイクル機販売の『セールス』ではなく、「リサイクルの仕組み」で企業を結ぶ『ビジネス』へと変貌した。

これに、大手食品メーカーは飛びついた。「洗浄機を買ってポリ袋を洗浄しても、有償で購入してくれる先が見つかる保証はどこにもないではないか」と導入に二の足を踏んでいたが、カネミヤが有償で引き取ってくれるとなれば話は別。中には、有償の引き取り契約を結んで、引き取りを確実にしてから洗浄機の販売契約を結ぶ企業まで現れた。

何しろ、今まで1kg40円を支払い、引き取ってもらっていたポリ袋が、逆に1kg5円でカネミヤへ売れるので、都合45円の収益改善となるのである。引き取り量によっては1年ほどで機械が償却できてしまう。引き取られたポリ袋は秋葉樹脂でペレット化され、某文房具メーカーのサインペンなどへ国内でリサイクルされる、という安心感もある。

喜んだのは食品メーカーだけではない。樹脂再生を行なう秋葉樹脂も喜んだ。樹脂集めに苦しみ低操業度にあえいでいたのが、大手食品メーカーからきれいな樹脂が大量に安価に安定して入手できる。今では1200tの再生を行い、社長が「工場から出られない」とボヤくほどの活況となった。

■大企業で次々採用、国からも高い評価

2004年の発売から約4年で、すでに100台近くが出荷され、多くの食品メーカーで導入され効果をあげている。日本水産の2007環境報告書で「廃棄物削減の取り組み」の特筆する事例として紹介される他、伊藤ハムの「ゼロエミッションの確立事例」として業界誌にも取り上げられた。

その後、牛乳パック回収洗浄バージョンも開発、古紙問屋提携し、ポリ袋と同様のビジネスモデルを展開している。明治乳業がすでに3機目導入の検討に入っているほか、地元の乳業メーカーでも活躍をしている。

2006年には、連携事業の新しさが評価され、中部経済産業局から新連携事業の認定を、循環型社会の形成に貢献する企業として、財団法人クリーンジャパンセンターから会長賞も受賞した。

さらに、経済産業省の「2007年 元気なモノ作り中小企業300社」に選定されるなど、業界を超えて注目を集める企業となった。

「排出業者、再生樹脂業者、そして当社、この三者が無理なく儲ける仕組みが、当社のビジネスの特徴です。『もうかるリサイクル』でなければ、いくら『環境のため』という大義名分があっても浸透しません。このモデルをもっと多くの企業に浸透させるために、さらなる小型機の開発もしなければと思っています。月10万円程度の廃棄コストの食品会社でも3〜4年で償却できる程度の高性能な小型機になれば、もっと多くの企業で導入いただけると思います。そうなったときには、地球環境がガラッと変わっていく可能性もあると考えています」と将来像を語る間瀬社長である。

 
取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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