この情報誌事業は社員からの発案であった。しかし、発案を受けた社長は、赤字になることがわかっていたため却下する。これより2年も前に密かに社長自身がマーケティング調査をし、赤字になると結論づけていた。それでも創刊はされた。すでに社員が広告主をいくつも見つけてきており、後には引けなかったのである。案の定、創刊から6カ月は大赤字。「会社をとるのか、クレヨンをとるのか」。社長の言葉に対し、「必ず黒字化するから」と言う社員の熱意に半年の猶予を与えた。当時の社長であれば「それ見たことか」と即時中止しても不思議ではなかったが、社員の言葉を聞いて、賭けてみたくなった。6カ月後、社員は通常業務をこなしながら、広告主の獲得に奔走、採算ラインをついにクリアした。
超ワンマン社長の加藤社長。「それまでは、私のやるのと同じ通りにやればいいのに、何故できないんだ、と怒ってばかりの社長でした。社員は何一つ自分たちではできない、と勝手に思い込んでいました。しかし、この地域情報誌事業では、私が自分で調査し、赤字になると結論づけた事業を、社員たちが自分たちで発案し、自分たちで採算ラインに乗せたのですからこれはもうビックリです。これ以後、ワンマン社長はやめました。社員の自主性を尊重すれば大きなエネルギーが生まれるんだ、と」。
こうして、地域情報誌事業は売上の7割を占めるまでになった。
現在は「会社は社員全員のもの」という意識付けを定着させるため、経理、財務公開を基本として、全体に関わる業務以外のことは「運営委員会」で全員が参加意識を持って行なっている。廃棄物の管理、車の管理、花の管理など7つの委員会が設置され、営業もデザイナーも内勤者も関係なく、担当する社員が全社員のため、自分たちの会社のために働く。
社員の自主性のエネルギーは、超ワンマン社長を変えるほどに強力になるのである。
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