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社員が生み出した地域一番情報誌、超ワンマン社長を変える
加藤輝美 記事更新日.09.02.02
株式会社ケイ・クリエイト 代表取締役社長
■問合せ先
株式会社ケイ・クリエイト
〒493-0005 一宮市木曽川町里小牧寺東125番地
TEL 0586-86-0608(代)  FAX 0586-86-0670
http://www.k-create.co.jp/
印刷用ページ
■地域一番の情報誌「くれよん」を発行
株式会社ケイ・クリエイトは、折込広告、パンフレットの印刷企画を行なう企業である。地元では地域情報誌「くれよん」の発行元としても知られる。各家庭への配布を専門に行なうポスティング業者が戸別配布を行なっているが、「くれよん」の配布は業者を嘆かせる。「入れ忘れた家があると、『いつも楽しみにしているのになぜウチには入っていないんだ』という苦情がいっせいにケイ・クリエイトさんへ入るので、少しの間違いも許されない」。

現在「くれよん」は地元の一宮市、稲沢市北部、江南市西部の各家庭へ配布され200,000万部を誇る地域一番誌である。

■印刷工程を外注化、企画営業とコーディネートに注力
潟Pイ・クリエイトの加藤輝美社長は昭和60年に独立。食品スーパーなどに強みを持つ印刷会社で、8年半勤務した後のことである。

 「何か新しいことをしたい、社会の役に立つことをしたい、という思いはありましたが、34歳での退職でしたので退職金は65万円しかなく、開業資金はわずかな額しかありませんでした」。

そこで、在職時の人脈や経験値がある印刷業関連事業を始めることになるのだが、開業資金が乏しく印刷機を購入するような設備投資は不可能。そこで、印刷工程を外注化し、企画営業と外注先のコーディネートとに専念することで、他社との差別化ができないかと考えた。

「印刷業というよりは、広告代理店業です。創業当初は新聞の折込みチラシを専門にしていました。『食いはぐれのない業界』ということで、衣食住の業界を中心に新規開拓を進めました。前職でも食品スーパー分野のチラシづくりは得意だったこともあり、この分野では多くのお得意様を増やすことができました。こうして開拓した取引先が多数業績を伸ばされましたので、当社の業績アップにつながりました」。

■外注活用で「スピード」「デザイン」「できばえ」を実現
企画・コーディネートに専念、他の工程を外注化することで「スピード」「デザイン」「できばえ」を強く意識した印刷物をつくることにも成功。
特にデザインについては自社でデザイナーを積極的に採用し、「目に見えて分かる差別化」を図った。「デザインの斬新さについては自信があります。当社のチラシをみて、ぜひお願いしたいとお声をかけていただくこともあります。また、経営的にも、デザインは付加価値が高く、収益面でも貢献していました」。

外注化は「スピード」と「できばえ」を強みにするのに役立った。企画とデザイン部門、印刷部門の連携を進めることで、企画から印刷・納品工程の期間短縮に成功した。また、例えばデザインであれば、社内のデザイナーの得手不得手を考慮したうえで、不得手な分野には外部デザイナーに依頼、また、印刷会社についても、会社ごとの得手不得手を適切にコーディネートすることにより、「できばえ」に差をつけることができる。
こうして、「持たない経営」で業績を着実に伸ばすことに成功した。

■社員のベクトル合わせは、経営理念の浸透と経営者の姿勢で
「当社では経営理念を大切にした経営をしています」と加藤社長。
新入社員教育のオリエンテーションで1時間かけて経営理念の説明から始める。「何のために働くか、何のための会社か、という根幹の部分が経営理念だと思っています。ですから、折に触れ、経営理念が理解されているかを確認することにしています」。

しかし、それよりも大切なのは経営者の姿勢だ、と加藤社長は続ける。「社員は社長が思っている以上に、社長のことをよく見ています。その社長が『言っていることと、やっていること』がバラバラでは、誰も私の言うことを心底理解しようという気にはなりません。もちろん、自分ができていないこともあります。そんな時は『私もなかなかできないが、一緒に成長していこう』と言うことにしています。社長も人間ですからできないこともあります。でも、一緒に何とかしていこう、と正直に言うことで社員の納得も得られます」。

こう語る加藤社長、以前は自らも苦笑しながら語るほどの『超ワンマン社長』だったとのこと。
その社長が何故今のように社員の自主性を尊重し、「共に成長しよう」とまでいう社長になったのか。この転機は当社の事業の転機でもあった。

■超ワンマン社長、社員のエネルギーに驚く
平成12年6月、新事業である地域情報誌「くれよん」を創刊。各家庭にポスティングで配布する、いわゆるフリーペーパーである。当時の一宮市を中心に7万部の発行部数でスタートした。その後、ライバル誌の登場もあったが、今では地元の一宮市、稲沢市北部、江南市西部の各家庭へ配布され200,000万部を誇る地域一番誌にまで成長した。
この情報誌事業は社員からの発案であった。しかし、発案を受けた社長は、赤字になることがわかっていたため却下する。これより2年も前に密かに社長自身がマーケティング調査をし、赤字になると結論づけていた。それでも創刊はされた。すでに社員が広告主をいくつも見つけてきており、後には引けなかったのである。案の定、創刊から6カ月は大赤字。「会社をとるのか、クレヨンをとるのか」。社長の言葉に対し、「必ず黒字化するから」と言う社員の熱意に半年の猶予を与えた。当時の社長であれば「それ見たことか」と即時中止しても不思議ではなかったが、社員の言葉を聞いて、賭けてみたくなった。6カ月後、社員は通常業務をこなしながら、広告主の獲得に奔走、採算ラインをついにクリアした。

超ワンマン社長の加藤社長。「それまでは、私のやるのと同じ通りにやればいいのに、何故できないんだ、と怒ってばかりの社長でした。社員は何一つ自分たちではできない、と勝手に思い込んでいました。しかし、この地域情報誌事業では、私が自分で調査し、赤字になると結論づけた事業を、社員たちが自分たちで発案し、自分たちで採算ラインに乗せたのですからこれはもうビックリです。これ以後、ワンマン社長はやめました。社員の自主性を尊重すれば大きなエネルギーが生まれるんだ、と」。

こうして、地域情報誌事業は売上の7割を占めるまでになった。
現在は「会社は社員全員のもの」という意識付けを定着させるため、経理、財務公開を基本として、全体に関わる業務以外のことは「運営委員会」で全員が参加意識を持って行なっている。廃棄物の管理、車の管理、花の管理など7つの委員会が設置され、営業もデザイナーも内勤者も関係なく、担当する社員が全社員のため、自分たちの会社のために働く。

社員の自主性のエネルギーは、超ワンマン社長を変えるほどに強力になるのである。

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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