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流体テクノロジーでエアーシャワーのトップ企業に
戸次英之 記事更新日.09.05.01
株式会社パイオニア風力機 代表取締役社長
■問合せ先
株式会社パイオニア風力機
〒458-0847 名古屋市緑区浦里三丁目25番地
TEL 052-892-6855(代)  FAX 052-892-8803
http://www.paionia.co.jp/
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■創業時は集塵機で名を売る
 クリーンルーム。外気と遮断し、空気清浄度が確保された部屋である。塵や細菌が遮断された環境が保たれることで、ここで作られる電子部品や食品の品質や安全が確保される。クリーンルームと外気との遮断を確保するために、間には二重扉の部屋が設けられる。この部屋では「エアーシャワー」が設置され、清浄空気を風速25メートル以上で一定時間吹き付ることで、ついているほこりや虫などが除去され、クリーンルーム内に持ち込まないようにされている。エアーシャワーは、クリーンルームの清浄度を保つ命綱である。
このエアーシャワーのトップ企業が株式会社パイオニア風力機である。
潟pイオニア風力機の創業社長、戸次英之氏は、昭和44年、それまでメーカーでの設計者としてつちかってきた「送風機」技術を活用した事業を興そうと独立をする。
当時、高度成長化で住宅需要も強く、木工業界・窯業向けに切りくず・削りくずを集める集塵機を開発、評判もよく業界の成長に伴い、売上も伸びを見せる。
しかし、昭和48年、52年の二度にわたるオイルショックにより、売上に陰りが見え始めたため、用途の転換を模索する。
■大きな転機、「エアーシャワー」開発。食品業界を中心に展開。
昭和55年、当社へ「人間についたほこりをとる方法はないか」という相談が相次ぐ。ある建材メーカーからは「エアガンでなんとか落とそうとしているが、手間がかかる。空気を吸う技術があれば、吹き落とす技術もあるのではないか」。また、化学メーカーからは「こちらの部屋で化学成分がついたまま、隣の部屋へ行くと問題がおきる。化学成分だけに、ついているかどうか目で見てもわからず困っている。お宅で吹き落とすような機械はできないか」とも言われた。
持ち込まれるニーズの多さに事業性の手ごたえを感じた社長は、集塵機でつちかったエアーコントロール技術により、試行錯誤の末、エアーシャワーを開発する。
「当時、エアーシャワーは、アメリカで半導体製造など極々特殊な製造現場向けに作られていたようですが、そのようなものがあるとは全く知りませんでした。また、当時のものは、横から空気を噴出し、横から空気を吸い とるというタイプで、当社のような上と横から空気を噴出し、下から吸いとるという方式は当社が初めてでした。そういう意味では、このようなエアーシャワーの国産第一号は当社が開発したということになります」。 

営業展開は主に展示会を活用した。
「セールスポイントが空気の流れですので、いくらカタログで説明しても、効果がわかりづらい。展示会で実機を持ち込み、服を着せた人形についたほこりがどれだけ落ちるかを見せるのが一番、と考えました。ただ、どのような業界に売り込みをかけるかということには会議を重ねました。その結果、衛生管理面でこうしたエアーシャワーが入り込む余地がありそうで、企業数も多い食品業界にターゲットをしぼりました。そして、食品メーカーやスーパー、ホテル・レストランなどが集まる展示会に出展を続けました」。
その結果、反響は上々、日本を代表する食品メーカーのほとんどに当社のエアーシャワーを導入することとなった。
 
■勝負は安全設計。自動車塗装ラインへの導入
食品業界を中心に展開していたある日、日本を代表する自動車メーカーの塗装ライン工場から引き合いが入る。ボディの塗装ラインでほこり付着による不良に頭を悩ませていた。試験機を持ち込み、1年ほど除去の検証を行った。1名通るだけならどれだけ除去でき、何名一度に通ったときにはどのような除去が可能かなど、厳しいチェックの後、その高い効果が評価され導入となった。現在では世界各国の塗装ラインに当社のエアーシャワーが導入されている。
「塗装ラインで使う、と聞いて、最初は正直ビビリました。揮発性物質が多く、わずかな火花でも大事故につながります。中核のブロアーの設計技術や電気系統の技術に自信があったため、安全設計を徹底的に意識して試作機を作ったことを今でも覚えています。おかげで今まで一度も事故は起こっていません」。
こうした信頼感と実績を重ね、ほとんどの大手の食品メーカー、自動車メーカーを始め、大蔵省印刷局のエアーシャワーにも当社製品が導入されるなど、エアーコントロール技術には定評がある。 「ブロー効率については当社独自の設計ノウハウがあり、フィルターの目詰まりが起こりかけても、吸引効果はほとんど変わりがありません。ラインの担当者が変わっていたりすると、何年もメンテナンスが忘れられているケースもあるようです。ですから、当社ではメンテナンス商品があまり売れないんですよ」と苦笑いする戸次社長である。 
■靴底クリーンの新発想「エアー吸着マット」
エアーシャワーに続く主力商品として期待しているのが「エアー吸着マット」である。建物の玄関・入り口や通路に置くだけで使用でき、靴底や台車の車輪についた土やほこりをマットのブラシで掻き出し、強力なエアーで吸引するクリーナーである。人や台車が通るとセンサーが感知し吸引を始める。エアーカーテンなどのクリーンルーム設備との併用も可能である。ほこり・汚れの60%は靴底で持ち込まれるとされ、汚れとり用の粘着マットと比較して、取り替えの手間もなければ、靴底や台車の溝までブラシで掻き落とすため、洗浄効果も高い。当社のオンリーワン製品として、既に千数百台が利用されている。
エアー吸着マットを導入した企業が、その効果の高さを認識、クリーンルームのメーカー指定受注につながるケースも出始めた。
現在は電子機器工場などほこりを非常に嫌うラインなどへの導入が進んでおり、一社で百数十台の納入をしている企業も出ている。
この技術の先進性から、(財)名古屋市工業技術振興協会より、会長賞を受賞した。
現在は工場設備などでの利用が主流であるが、一般の商業施設向けのエアー吸着マットを、国の新連携事業を活用しながら開発中で、商業施設の入り口に当社の製品を頻繁に目にする日も近いかもしれない。 
■大学との先端技術の共同研究
現在、売上のうちエアーシャワーが6割、エアー吸着マットが2割、その他特殊用途向けで2割となっている。エアーシャワーのトップメーカーとして、名古屋工業大学大学院工学研究科(流体工学研究室)との共同研究を始めとし、先端の流体テクノロジーで他社がまねをできない製品の開発には余念がない。「開発専従部隊には常に3人は置くようにしています。一つの製品を開発するのに1年半〜2年はかかりますが、常に難しいことにトライすることで、そこでつちかわれた技術を汎用製品にも応用することで、他社より一歩進んだ技術力を維持することができるのです」と戸次社長。看板に偽りなく、まだまだパイオニア精神は旺盛である。
取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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