1862年、大政奉還を5年後に迎えることになる幕末。この年、味醂の製造元として創業した会社は、今年、創業147年を迎える長寿企業となった。この会社こそ、創業当初から伝承される製法を守り続け、多くの料理人から支持される味醂メーカー甘強酒造株式会社である。
文久2年の創業後、明治から大正期にかけ順調に業績を拡大、昭和10年には法人化、最盛期には、国内はもとより、当時日本領であった朝鮮・満州にまで販路を拡大していった。しかし、太平洋戦争へ突入すると、味醂の製造は許可制となり、ごくわずかな量の生産に限られることとなった。味醂はぜいたく品とされ、「製造技術を絶やさないため」の生産のみしか許されなかったのだ。この生産規制は、米などの物資不足の戦後もしばらく続き、解除されたのは、昭和26年のことである。規制解除となり、味醂作りも息を吹き返し始めた昭和29年には清酒の製造も開始、昭和40年代には売上の半分程度を占めるまでになり、酒造メーカーとしての顔も持つまでになった。
現在でも清酒売上は20%と根強いファンに支えられるとともに、昔ながらの製法を守り続け、数多くの味醂のラインナップを有する味醂メーカーとして、料理人たちに広く知られる。
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