パートタイム型人材派遣で『真に価値ある事業』を
野崎 晃 記事更新日.11.02.01
エンプロ 株式会社 代表取締役
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エンプロ 株式会社
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■子育て世代に高まる勤労意欲
平成22年厚生労働白書によると、子育て世代の母親の希望する働き方は、就職意欲が子どもが3歳を過ぎると急速に「短時間勤務」を主体として高まり、「残業のない働き方」と合わせると小学校卒業までその傾向は強く続く。

こうした世代の女性は、男女雇用機会均等法施行後の世代で金融・会計・証券・保険・ITを始めとして様々な専門知識を持ちバリバリ働いていた人も多く、子育てが一段落した後の再就職意欲も比較的強いとされる。しかし、「子供を保育園に迎えに行くので16時までしか働けない」「扶養の範囲で仕事がしたい」という勤務時間の制約条件等を抱えており、その優秀な労働力は潜在化し社会的損失を生んでいる。
こうした制約をワークシェアや業務見直し支援などを通じて解決し、30〜40代の主婦層の人材派遣を実現しているのが、エンプロ株式会社である。

■子育て世代の「隠れた金の卵」を活用せよ
野崎晃社長が大手人材派遣会社を退社、『真に価値ある事業』をしたいと自らの手で人材派遣会社を設立したのは2004年、30歳の時。時折しも愛知万博開催・中部国際空港開港を前にこの地域は好景気に沸いており、創業間もない当社へ人材登録するのは、フルタイム派遣しか受け付けていない大手派遣会社からはじきとばされたパートタイム希望の既婚女性ばかりだった。
登録者は「家事と仕事を両立したい」「扶養の範囲内で働きたい」「子供がいるから残業はNG」「今までのキャリアを活かしたい」「趣味や勉強と両立させたい」「毎日は無理だが週2〜3日で働きたい」「子供を保育園に預けられる9時から16時まで働きたい」など様々な制約条件を持っていた。しかし、こうした人達は様々な資格や専門知識、経験を有しており、うまく活用すれば即戦力になるいわば「隠れた金の卵」。

「働きたいのにミスマッチのため豊富なキャリアを活かせずにいる方がこんなにもたくさんいることに直面し、こうした人材が活躍する場を提供できれば社会的にも『真に価値ある事業』となるのではと考えました。こうして『パートタイム型派遣事業』に特化し事業開拓をおこなうことにしました」と経緯を語る野崎社長。

■繁閑の差が激しい職場で威力を発揮
パートタイム型派遣が最も威力を発揮するのは、日中や月間、年間のサイクルで繁閑の差が激しい職場である。
金融機関では店を開ける9時から15時までの店頭業務ニーズがある。
派遣スタッフは、金融機関の勤務経験者が窓口業務サポートを、証券外務員の資格者が窓口で投資信託や保険の販売案内業務を担っている。『知識・経験だけでなく言葉遣いや応対まで人材として出来上がっている』と企業からの評価も高い。派遣スタッフは窓口が開いている時間だけが勤務時間となるので16時には退社が可能、企業側もニーズにあった質の高い人材をピンポイントで紹介されるので、ハローワークなどでの募集に比べマッチング率が圧倒的に高く募集コストが格段に抑えられるのに加え、必要な時間だけの勤務となるため直接的なコストダウンにもつながる。
会計士・税理士事務所では確定申告、年末調整、法人税申告などの時期は膨大な事務量への対応ニーズがある。
繁忙期に合わせたスタッフ採用はコスト面から不可能で、会計事務所での勤務経験者や企業での経理担当者などが、繁忙期に合わせてパートタイム派遣スタッフとして活用される。
学校法人では長期休暇に入る7〜8月は事務量が極端に少なく、年間を通したフルタイムでの雇用は難しい。
当社のパートタイム派遣を利用することで、繁閑に対応した柔軟な労働力の確保が可能になる。派遣されるスタッフも、この期間は子どもが学校に行かず家にいるので仕事に出たくないという希望も叶えられる。

■パートタイム派遣の進化型『ワークシェア型派遣』
しかし、出勤可能時間、出勤可能日数等派遣スタッフの条件は様々で、それが企業の勤務時間ニーズとがマッチするケースはそう多くない。では、どうするか。その答えが『ワークシェア型派遣』である。
派遣先の仕事内容をじっくりと検討し、日ごとで切り分けられないか、一日の仕事を2つに分けられないか、場合によっては、作業を合理化し業務時間をシフトしたり短縮したりできないか、というところまで踏み込んで業務の単位を細かくし、それを派遣スタッフの勤務希望とマッチさせ、一つの業務を複数名の派遣スタッフで担う手法である。

例えば、フルタイムでの派遣を希望する企業であっても、日ごとで業務を完結し、切り分けることが可能であれば、「週2〜3日勤務希望」というスタッフ2名をシフト制で派遣することができる。このような体制が組めれば、比較的業務が少ない中旬には週4日派遣に、業務量が増加する月末には2人のスタッフを同時に派遣するなど業務量に合わせてフレキシブルに調整することも可能となる。
「ワークシェア型派遣をご提案すると、ほとんどの企業様では派遣スタッフが複数になることを不安視されます。人によって仕事ムラがでるのでは、引き継ぎ漏れが出るのでは、等々ご心配いただきます。しかし、ご利用いただいている企業からは懸念したような問題はなく、むしろメリットすら感じていただいています。当社にお任せいただく前は、パートさんが『お子さんの病気』『運動会や授業参観などの学校行事』などで業務の繁閑に関係なく休んでしまうこともあり、ずいぶんご苦労されたようです。ところが、ワークシェア型派遣をご利用いただいてからは、学校行事など事前に分かっている予定があれば派遣スタッフ相互で予め調整したり、急な場合でも、もう一人のスタッフが何とか対応するなどして、業務への支障はむしろなくなっているという声をいただきます」とワークシェア型派遣のメリットを語る。
実は、そのメリットを最も感じているのは当社自身である。
「当社の内勤スタッフ12名中8名がパートタイマーの方です。自社が最高の成功事例であるために問題点があれば改善し、お客様にご提案する際の貴重なノウハウにするようにしています」と野崎社長。

■コスト面でもメリット
当社のビジネスモデルを支える要素の一つは派遣コストの安さにもある。当社の登録スタッフはフルタイムでの勤務を希望していない人が多数で、勤務時間が社会保険の加入要件に満たないケースがほとんどである。その分、フルタイム派遣よりも低コストとなる。また、スタッフ側にもフルタイム派遣の単価よりは安いが、通常のパートタイマーよりも高い賃金と自分の生活リズムに合わせつつキャリアを活かす職場を得ることができる。

「お子さんが生まれた後、手離れするようになると社会からの疎外感や不安感をもたれることから働き口を探す方が多いのです。しかし、職場を求めても細切れな空き時間しかなく、あきらめてしまうケースが多いようです。収入を求めるという側面もありますが、それよりも自分が社会参加できるという喜びを派遣スタッフから伝えられると、自社の事業が社会のためになっているという『フィードバック感』は非常に手応えを感じますね」。

■受身の派遣から攻めの派遣へ〜派遣事業者からビジネスパートナーへと進化
人材派遣は人材を求めている企業に対し適切な人材を提供する、というどちらかと言えば受身の営業が基本である。しかし当社の派遣スタッフが主婦であることを活かした「フォロー・マーケティングの業務アウトソーシング」という新たな提案を行なっている。
これはハウスメーカーが従来手薄になっている「今までの施主」へのフォロー訪問を行い、ファンづくりを行おうというものだ。
家を購入するときのキーマンはその家庭の主婦だといわれている。こうした主婦に向けて、これまた主婦である派遣スタッフが3人1組で半年に1回程度の頻度で訪問、主婦同士の共感という視線で現在の家に関する様々なニーズやアイデアを拾う。ハウスメーカー側では、これらの意見を「購入のキーマン」である主婦に響くような家づくり提案や商品開発へとつなげたり、リフォームの意向や案件紹介などの情報収集にも活用ができる。当社側でも一括で引き受けることで派遣スタッフ同士のワークシェアがしやすく、仕事の創出にもつながる。
「今まで人材派遣というと『社員の代替、コストダウンのツール』というイメージが強くなってしまっていました。当社はそうではなく『こういう人でないといけないからそのキャリアを持ったスタッフの派遣をして欲しい』という要望に対し、『眠れる金の卵』であるキャリア主婦を派遣していきたいと思っています。一度当社へ登録すれば、その人のライフサイクルに応じて、『勤務時間が制限されるうちはパートタイム型派遣で、その後子育ても終わった時点で正社員になれる』というような『出口』が用意できる事業に育てていければ理想ですね」と『真に価値ある事業』を野崎社長は求め続ける。

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久