創業時に手掛けた線ばね。線材を手動の巻機でばね状にすることで加工ができるので、設備投資は少額で済む。また、性能の良し悪しは『うまい設計』ができるかどうかにかかっていることも、エンジニアであった創業者には大きなメリットであった。創業後ほどなく、大手自動車部品メーカーからキャブレターに使用する精密ばねの受注を得ることになる。
その後モータリゼーションの到来とともに、部品メーカーからは、現在の月産3,000台から10倍の30,000台への対応を迫られる。それは手加工から自動機加工への移行を意味していた。しかし当時の国産機は精度が悪く、西ドイツ製のマシンを購入するする必要があった。
「このマシンは国産の10倍ほどの価格で、しかもアフターサービスなしでよければ売ります、という条件でした。資金的にも厳しく、輸入する商社に頼み込んで2年間の月賦払にしてもらい導入しました。当時の当社にとっては非常に大きなチャレンジでしたが、生産量は10〜20倍になり今の松尾製作所の礎を作ったといえます」。
その後生産量は拡大、技術力の向上とともに現在では精密機械用の高品質で複雑な形状のばねを月3,000種類作り続けており、現在も当社の大きな事業の柱となっている。
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