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鍛造と設計技術を結集、多数個採り鍛造で勝ち取る信頼
三浦 洋裕 記事更新日.12.12.01
豊和鍛工株式会社 代表取締役
■問い合せ先
豊和鍛工株式会社
〒446-0002 安城市橋目町郷前30
Tel 0566-97-9191   Fax 0566-98-6180
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■熱間鍛造で重要保安部品を製造

熱間鍛造とは、長尺の鋼材を必要な長さに切断した後、1200℃以上に熱し柔らかくし、エアードロップハンマーと呼ばれる大きな鍛造機により金型で成型する方法である。鍛造後、不要な「バリ」と呼ばれる部分を抜き型で切り取り、ショットブラストで表面の酸化した部分を除去、場合によっては不要な部分を切削することで鍛造品が完成する。金属を熱して軟らかくしてから鍛造するので、変形抵抗が少なく、金属を鍛練することから高い強度を得られる。

熱間鍛造による精密型打鍛造で、製造品の多くが、全数外観検査だけでなく磁気探傷検査(外観検査だけではチェックできない傷の有無を磁気で検査する方法)まで必要な、重要保安部品と呼ばれる自動車のポールジョイント部品などの足回り部品を中心に製造しているのが豊和鍛工株式会社である。

創業者が1941年に勤務していた鍛造工場から独立し、名古屋市内に鉄工所を個人創業、その後法人化し、1961年現在地に移転、その後はグループ企業とともに成長、現在に至っている。


■「多数個採り鍛造技術」と「ニアネットシェイプ技術」に特徴

当社の特徴は、1回の鍛造で最大10個の多数個採り鍛造技術と、その多数個採り部品を「冷間コイニング」というプレス技術を活用することで、切削仕上の手間やコストを減らし最終製品に近い形状を得る「ニアネットシェイプ」化技術である。
「当社の熱間鍛造は、1200℃以上に熱せられた金属材料を金型へ移動させ、火箸で持ったまま、エアードロップハンマーというプレス機を足のペダルで動かし成型しています。多数個採りの鍛造をするには様々な試行錯誤や製造上のノウハウや経験が必要になります。」と三浦洋裕社長。

多数個採り鍛造の難しさは、鍛造成形の型をどう設計し、どう適切に抜き型で抜くか、ということである。
基本的に鍛造では、鍛造後に起こる金属の収縮を想定し鍛造型を作る。金属の肉薄の部分では冷えが早く縮みが起こり、肉厚の部分の縮みは少ない。製造する鍛造品のサイズや切り取りに必要なバリのサイズ等から複雑な金属の収縮を考慮して、鍛造型を設計する。

その上で多数個採りの鍛造の成形型の場合は、部品をどのように並べるかも大きな問題となる。例えば10個の部品を採ろうとした場合、横に10個並べるのか、縦に5個ずつ2列に並べるのか、斜めに並べるのか、互い違いに向き合わせて並べるのか、その並べ方によってより複雑な金属収縮を想定しなければならない。


「ある並べ方だと抜き型で抜いたとき、ほとんどが不良になるが、別の並べ方でトライしてみると全く不良がでなくなることもあるのです。これは、部品の形状やバリの大きさ・厚さなどによるものです。また型抜き時に、切り取り部にあたるバリの部分の温度が均一になっていなければなりません。バリの部分の温度がバラバラでは、切取り部分の金属の硬さが違っていますのできれいに不良なく型抜きをすることができないからです。そういう複雑な金属収縮や型抜き時にバリ部分の温度が均一になるような温度変化が実現するように鍛造型を設計することが必要なのです。最近ではコンピュータによるシミュレーションもできるようになってきています。

しかし、円筒状のものや左右対称など軸対照のプロダクトは解析しやすいのですが、当社のように鍛造品の多くが軸対称ではない「異形材」と呼ばれる形状のものはまだまだ難しいのです。ですから、試作段階ではいきなり多数個採りせず、まず1個から始めて特性を見極めてから、どう並べ方を組み合わせるか、個数を増やして一番安定する方法を見つけていきます。最初は失敗の連続という時もありますが『考えるよりやってみる』ことが最良の解決方法です。
このように型の設計から生産工程までの間にある様々なパラメーターのバランスをどう取るかが技術になってきます」と語る三浦社長。
こうして作られる鍛造品は、1個採りでは大きいもので2kg、多数個採りできる小さなもので200〜300g。

型抜き後の鍛造品を切削することで部品として仕上がるが、この工程を削減し切削レスを実現するのが「ニアネットシェイプ」技術である。この技術により鍛造品を成形型でプレスすることにより切削工程をなくし、面粗度を良くしたり寸法精度を向上させることができる。その結果、納期短縮化とコスト低減を可能にする。
■パートナー企業と現地日本事務所のサポートで中国進出

主要取引先からの信頼も厚く、中国進出要請に応える形で中国唐山で取引先をパートナーとして共同で現地法人も設立した。
「現地ではハンマープレスによる鍛造をする企業はまだまだ少なく、ビジネスチャンスもあったのですが、立地上の条件が揃う所を見つけるのが大変でした。第一に、パートナー企業の納品先が近いことが前提条件でした。その中で、ハンマープレスの音や振動への苦情がなく、地盤もしっかりしていること、冷却用の水が確保できるか、またその水の塩分濃度は高くないか、加熱のための高電圧が確保できるか、そして、社員が安心して住める地域であるか。こうした条件をクリアしたのが唐山でした」。
幸い、パートナー企業では海外展開は初めてではなかったため、そのサポートもあり、また、大阪に開設されていた唐山の日本事務所では、日本語で書類を持って行っても翻訳をしてくれるなどサポートを受けられたのも非常に助かったとのこと。
ただ、中小企業の海外展開で大きな問題になるのは人材である。

「現地法人の日本人スタッフは3名で、うち2名がパートナー企業の方、当社側は1名だけです。パートナー側では鍛造の専門的なことはわかりませんから、当社側で鍛造のことを全てわかっている人材がどうしても必要になります。立ち上げでは、設備機械の選定・目利きからトライが安定するまでの問題解決もできなければなりませんので製造部長が担当し、稼動後は製造課長が担っています。今後をにらみ、ものづくりだけでなく検査・管理までできる人材の育成は、今後海外展開を維持するためにも大きな課題です。また、現地ならではの問題もあります。例えば設備が壊れたとき、現地で修繕部品を調達するのも大変ですし、デリバリーサービスも不安定です。今後、もっとローカライズし積極的に現地企業との付き合いを深める必要も感じているところです」。

 

■「素材が変形する瞬間」を感じるものづくりの承継を

今後の企業像について三浦社長はこう語る。

「海外展開も含め、今までの技術・ノウハウをどう継承し人材育成していくかが、大きな課題です。そのために安心して働けるよう、職場環境の改善にも配慮しています。例えば、ハンマープレスの担当は高温と騒音に接しますので30分ごとにローテーションを行うことにしています。


技術承継のため高卒者を毎年数人の採用をしています。たいへんな職場ですので半分残ってくれればと思っていたのですが、職場環境の改善が実ってか、今でも全員働いてくれています。鍛造は大変な部分もありますが、熱せられた金属がハンマープレスされる『素材が変形をする瞬間』を人間の感覚でとらえることができる、数少ない「ものづくり」の業種なのではないでしょうか。鍛造はものづくりの中でもこうした基盤的な技術ですのでいろいろな業種に使われています。現在は自動車部品が中心ですが、今後はいろいろな分野にも挑戦したいと思っています」。


 

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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