サブミクロン研磨技術を進化させ微細ピンゲージへ
杉浦 友一 記事更新日.2014.02
株式会社ジートライズ
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株式会社 ジートライズ
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機械メーカーも驚く研磨精度を実現

株式会社ジートライズは、少数の会社ながら、平行度、平面度0.5ミクロン、面粗さ0.1Z(鏡面研磨)の研磨技術を持つ。研磨技術に携わることになったのは、父親と叔父が経営する会社の社員時代。名古屋の老舗ゲージメーカーの担当となり、叔父から技術指導を受けながら営業から製造までを一人で担ったのが始まりである。技術を身につけながらゲージ事業を順調に伸ばしたことから、当時社長であった叔父とも相談の上、検査具、ゲージ、精密研磨業界で独立するために退社する。担当していた取引先を引き継いで個人事業主として独立、2012年に法人化、2013年に現在地の春日井に移転した。その間、精密測定・加工のために業務用空気清浄機など作業環境の改善に努めるなどした結果、2008年に焼入材(鉄系)の鏡面研磨の面粗さ0.1Zを確立することになる。
「これほどの精度が出せるようになったきっかけは、あるセミナーに参加したことでした。ただ、そこで使用したマシンは数千万円のものでしたが、使用する砥石や加工条件を試行錯誤し、当社の平面研削盤で使ってみたところ、かなりの手応えを感じることができ、鏡面研磨の道が大きく開けました」と杉浦社長。
機械メーカーからは、“このマシンでこれだけの精度が出るとは一度も聞いたことがありません”と驚かれたとのこと。






高精度研磨を支える恒温工場と検査技術

「素材は焼入材の鉄が基本ですが、条件によってはステンレスも可能です。慣れたお仕事では外注さんと連携して研磨加工だけではなく、切削加工からの対応も可能です。高精度な加工を実現するためには、高い加工技術だけではなく、加工したものを精度保障する為の測定具、及び測定技術、これら全てが必要になります。当社では108個のブロックゲージを3セット準備しており、状況に応じて使い分けています。測定具も粉塵やオイルミストなどの影響を受けないように配慮し、温度管理と測定誤差を少なくする為に空気清浄機にもこだわってます。窓ガラスには断熱材を入れて、外気の進入を塞ぎ、20℃に恒温化した工場で製品寸法管理体制を整えています。設備面も大切ですが、意外と技術を必要とされるのが『検査技術』です。誤差が1000分の1単位の加工物ですので、素早く測定をしないと熱膨張し、正確な測定ができなくなってしまいます。そこで、短時間で正確に測る測定技術が必要になるのです」。




リーマン・ショックをきっかけに取引先を拡大

 創業後しばらく、引き継いだ取引先からの仕事を専門にし、エンジンや駆動系の自動車部品専用の検査具やゲージの製作を行っていました。こうした難易度の高い加工は付加価値が高く競争が少ないため、業績は伸びていった。しかしリーマン・ショックにより仕事が激減。
「これをきっかけにHPを立ち上げたり、商談会に積極的に参加したりするようになりました。ミクロン単位の精度が必要な精密部品の研磨や、金型部品の再研磨など精密加工の仕事を始めるようになりました」と語るように、従来の検査具、ゲージに加え、平物を中心に昨今は円筒研磨や鏡面仕上等へ事業拡大している。



廃業会社の技術を移転、微細研磨のピンゲージの製造にチャレンジ

 現在地の春日井市へ工場を移転する際、マシンのサービスマンから「県内で微細研磨技術を持った企業が廃業するのだが、当社でマシンを買ってもらえないか」という相談を受ける。話を聞くと、当社が担っていなかった円筒研磨の技術を持っている企業で、技術を持つ社長の指導を受けられるなら、とチャレンジを決意する。
「当社のように社長一人で技術頼みという会社では、技術の深堀りもしくは技術の間口を広げるという方法でしか事業拡大ができません。今回のチャレンジで小径円筒研磨の技術向上を図ることができれば、直径0.4ミリの微小のピン型ゲージの研磨加工が可能になります。平形の研磨よりもはるかに難易度が高く、こうした加工をできる企業はかなり数が少ないと思われます。高価なマシンを導入し加工したとしても、ピンゲージは小ロットオーダーばかりで、いつまでたっても償却ができないことから全く採算が合いません。したがって、資本力がある企業でも参入が非常に困難で、当社としては事業面でも技術面でも大きな強みになります。また、廃業される方の技術も失われず受け継ぐことができます。研磨に関してある程度のレベルがなければこうした技術を承継することもできませんから『自分がやらねば』という気持ちもあります。現在では週1回程度技術指導を受け、素材から切削・研磨加工をしてシャープペンの芯よりも細いピンゲージの製造に挑戦中です」。


 こうした事業・技術承継と小規模企業の事業拡大というモデル的な技術開発に対し、あいち産業振興機構から「地域産業資源活用応援ファンド」の技術開発助成を受けることにも成功した。
「今後は、今回チャレンジしている技術を自分のものにし、素材から研磨までの一貫生産体制を構築し、ピンゲージを新たな当社の事業の柱にしていきたいと思っています。併せて、研磨機がない、あるいは研磨加工が弱い、1個だけ研磨してほしい等の研磨加工でお困りの企業様と連携し、共同受注という形の受注形態にも積極的に取り組んでいきたいと思っています」。

 

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久