オゾンくん蒸殺菌システムで医療分野へ切り込め
中根 一将 記事更新日.2014.04
有限会社白光舎
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有限会社白光舎
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減少する家庭衣料のクリーニング支出額

20年前の1993年、1世帯あたりの年間クリーニング支出額は18,835円であった。しかし、10年前の2003年には10,070円、昨年2013年は6,986円と3分の1強にまで減少した(「家計調査報告」(総務庁統計局))。こうした現実に直面したクリーニング業界は、家庭衣料のクリーニングに頼らない新たなビジネスモデルを模索する必要性に迫られている。
医療関係のユニフォームに特化した新工場を設立、クリーニング業界で日本初となる「オゾンガス燻蒸(くんじょう)」を利用し、従来よりも格段に殺菌効果の高いクリーニングを行っているのが有限会社白光舎である。


医療現場で高まる院内感染防止対策

(有)白光舎は昭和44年に創業後、家庭衣料の他、ホテルのシーツやタオル等のリネン関連、事業所の各種ユニフォーム等事業所向けのクリーニングサービスで事業を拡大、平成10年にはリネン向け専用クリーニング工場を設置するまでになった。その後、中北薬品との業務提携を図り、医療関連のユニフォームクリーニングへも拡大していくなど積極的な展開で企業規模を拡大させるも、伸び悩みの時期が訪れた。
「個人衣料は縮小傾向にあり、ホテルなどの事業所向けも頭打ちになっています。今後の事業展開を考えた時に、到来しつつある高齢化社会に向け、医療分野に伸びしろがあるのではないかと考えたのです。とはいえ、他社と同じことをやっていてはやがては価格競争による顧客の奪い合いになってしまいます。ではどうするか。そこで医療関係のお客様のニーズに立ち返ってみようと考えたのです。医療現場で、すでに高まりつつあるのは『院内感染防止対策』です。これは『院内感染』が発生すると、直接の対応にかかる損害だけでなく、イメージダウンという間接的損害も併せると、病院経営上、非常に大きなリスクとなるはず。そうした大きなニーズに対して当社は何ができるか。もし、白衣などのユニフォームの洗浄時に、滅菌に限りなく近い状態まで殺菌できれば、少しでも院内感染防止にもお役に立てるのではないか、そのためにどのような方法が最も効果的で、かつ、コストを抑えることができるのかの検討を行いました。」と語る中根一将社長。


オゾンガスによる殺菌脱臭効果をクリーニングに活用した工場を設立

検討の結果、候補に上がったのがオゾンガス。強い酸化作用により殺菌脱臭効果があることから、手術室や研究機関等で利用されてきた殺菌方法である。そこで、オゾンガスをくん蒸(殺菌の目的で、殺菌等の効果がある気体を対象に時間をかけさらして浸透させる方法)することでユニフォームの殺菌に活用できないかと考えたのである。
「すでにオゾンを使用したクリーニングは出てきています。しかしそれはオゾン水を使用したクリーニングであったり、オゾンガスくん蒸にしてもシーツや掛け布などの単純形状の洗濯物に対するものであったりして、医療用向けユニフォームに対するオゾンくん蒸クリーニングは日本でも初めてではないでしょうか」。
平成25年、中北薬品との業務提携により、院内感染防止対策として「NAWS Support」(『オゾンくん蒸加工』による全国初の医療用ユニフォーム消毒殺菌クリーニングシステム)を立ち上げ、オゾンガスによる消毒殺菌を行う専用工場を、かねてより取得していたリネン工場隣地での建設に着手する。



厳格な衛生区分管理を導入

新工場では、工場内が通常エリアとクリーンエリアとに厳格な区分管理がされている。通常エリアでは、ユニフォームの搬入後、ICタグによる受入チェック、ポケット内の忘れ物の確認を経て全自動洗濯脱水機への投入を行う。この後の作業はクリーンエリアで行われる。
クリーンエリアに入るためには、無塵衣を着用し手洗いの後エアシャワーを通過、アルコール消毒・エアータイルによる乾燥により除菌を行うことが必要で、クリーンエリアが厳重に確保される。この厳格なエリア管理がこの工場の大きな特徴である。
洗濯機は投入口が通常エリア、取出口がクリーンエリアにあり、通常エリアで投入された洗濯前のユニフォームは、洗濯後、クリーンエリアの取出口から取り出されることで、クリーンなユニフォームのみをこのクリーンエリアで扱うことができる。



取り出されたユニフォームはコンベアで2Fへ運ばれ、140℃で10分弱の熱処理を行う独自の「トンネルフィニッシャー」を通過後、プレス機でしわ取り仕上げをした後「オゾンガスくん蒸エリア」に集められ、概ね午後7時以降、オゾンにより7〜9時間のくん蒸が行われる。



殺菌されたユニフォームは再びICタグにて搬出のチェックを行い、専用ボックスで搬出される。
ユニフォームにつけられたICタグにより、誰が何着のユニフォームを持っていて、どのユニフォームが使用中なのか、クリーニング中なのか、あるいはクリーンルーム内の専用ストックヤードで保管中なのか、全てデータ化されているため、医療機関側もユニフォーム管理が容易になる。



立ち上げ当初から寄せられる高い関心

現在では、個人病院から名古屋市内でも指折りの大病院まで130を超える医療機関からユニフォームが集められ、日に4,200枚のクリーニングを行っている。
「2014年1月27日から新工場の稼働が始まったところです。処理能力は8,000着ほどですから、まだまだ稼働に余裕がありますが、出足としてはまずまずといえます。名古屋市内でも代表的な病院の数院からご利用をいただくなど、医療機関の方から高いご関心を持っていただいていると思います。今後は、厳格な衛生管理のもと作業をしている現場を医療機関の方にもご覧いただき、ご利用の拡大を図っていきたいと考えています。また、抵抗力が弱くなっている方々が集まっているという点では、福祉施設でも同様のニーズがあると思われますので、こうした施設の方々にもPRしていきたいと考えています」と語る中根社長である。

 

取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久