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有機廃棄物の短時間・高熱量固形燃料化プラントを開発
奥田 彰久 記事更新日.2014.12
株式会社 アクト  http://www.act2002.co.jp/
■問い合せ先
株式会社 アクト
〒483-8044  愛知県江南市宮後町西屋敷2番地3
Tel  0587-51-2655
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建築デザイナーの環境事業挑戦

2013年、環境ベンチャーの株式会社アクトは、下水汚泥等の有機系廃棄物を、熱源レスで短時間に脱水し、従来の倍の熱量を持つ固形燃料を製造するシステムを開発した。開発したのは社長の奥田彰久氏。奥田氏は、名古屋市科学館や博物館の内装デザインも手掛けたこともある商業施設や公共施設のデザイナー。

大学教授からは「熱を使わずに脱水するなんてありえない」とまで言われたが、常識にとらわれない手法で固形燃料製造プラントを完成させた。

奥田社長が家業の損害保険代理店を継ぐためにデザイナーをやめたのは平成14年。保険業務を手がける中、農家の方から「石油などの燃料価格が一定せず経営が安定しない」という問題点を聞かされる。

そんな時出会ったのが「焼かないレンガ」を作っている企業。これは砂などの無機廃棄物に添加剤を加えることで脱水が促進、焼かなくとも固形化が促進される。この技術を活用し、有機廃棄物から固形燃料が作ることができれば、地球環境にも貢献できるのではないかと考えた。

「有機物は含水率を20%以下にすると燃えやすく、固形燃料として利用できるようになります。ですから、このレベルまでの脱水が効果的にできるかがポイントになるのです。『焼かないレンガ』のポイントなる技術は添加剤です。この添加剤のどの成分が、どのように脱水に影響を与えているかのメカニズムを検証し、より効果的に脱水を促進する添加剤を開発しようと考えたのです」と奥田社長。




脱水メカニズムを解明し促進剤を開発

大学との共同研究や奥田社長の研究の結果、脱水に効果をもたらす物質がポリマーの一種であることを突き止める。ポリマーは水を吸水・保水する物質で一般的には紙おむつに使用されることで知られる。

「ポリマーだとつきとめたまではいいのですが、ポリマーに吸水させても保水してしまうため、そこから蒸発せず脱水にはなりません。そこで、付着させるポリマーの量を調整することで『水は吸うが保水はしない』という絶妙な量とすることにより有機物内部の水分を外部に誘導し、それが蒸発することで脱水を効果的に行なおうと考えたのです。微調整ができるようにするにはポリマーを液化する必要があることから、ナノレベルの粒径のポリマーをエマルジョン化することで『脱水促進剤』を開発しました」

この脱水促進剤は有機物の内部の水分を外部に誘導し蒸発させるだけでなく、その孔が固定化するため、脱水に伴う孔の縮小も防ぎ、より大きな脱水率を実現させている。


熱源レスの脱水装置でなければ意味がない

脱水促進剤の開発により、有機物内部の脱水を効果的に行うことができるようになったが、さらにその効果を上げるためには、脱水剤に含まれた水分をどんどん蒸発させる必要がある。そこで次に開発にとりかかったのは脱水装置である。

「既存のプラントは、有機物を800度程度で炭化し固形燃料をつくっています。しかし、80度以上になると有機物が熱で分解されはじめてしまい、熱量を持っている有機物が壊され、本来、有機物がもつ5000kcal/kgの熱量が2000kcal/kg程度まで減少してしまいます。熱源を使って、固形燃料の熱量をわざわざ減らしているのですから、まさに『もったいない』状態にあるといえます。そこで当社では熱源を使わず、有機物に対し、大量の空気を極力まんべんなく送り込む『空気脱水システム』を開発しようと考えたのです。従来機では熱を加えて乾燥するものばかりで、熱源のない脱水機というのはありませんでした。そこで自社開発しようということになったのです」

空気は飽和水蒸気となるまで水分を含むことができる。脱水促進剤に誘導させたポリマーからより多くの水分を蒸発させるには、空気の温度を上げることで単位空気あたりの飽和水蒸気量を上昇させることが一般的である。しかし、熱源を使用しないことにこだわると代替手段が必要となる。そこで、大量に空気を送り込むことで、より多くの空気に水分を含ませていけば同じ効果があると考え、脱水促進剤を添加した有機物をドラムで回転されながら送風を行う「脱水ドラム」を完成させた。



含水率20%以下の固形燃料製造を実現、有機廃棄物をエネルギー源に

こうして完成した「有機物脱水・燃料化システム」は、下水汚泥や農業残渣に脱水促進剤を混練機で混ぜ、その後、脱水回転ドラムに入れ、回転させながら常温で送風することで乾燥させる。1tの有機物であれば、6時間程度で含水量は70%程度から20%以下となる。同程度まで自然乾燥をさせようとすると、広い土地と2週間以上が必要となる。常温で送風するため熱源はなく、燃料費もかからない。

こうしてできた固形燃料は有機物が持つ本来の熱量4000〜5000kcal/kgを持ち、含水率も20%以下と低く、燃料投入時の温度低下も最小限に抑えることができる。プラントの価格は未定ではあるが、現状の炭化プラント価格よりも抑えることを目標としている。



「現在、日本で発生する有機廃棄物の代表的なものは汚泥が年1億7,000万t、畜産による糞が年8,500万t発生しています(環境省:産業廃棄物の排出及び処理状況等(平成23年度実績))。これらを熱源として有効活用する技術として大手企業からは多くの打診を受けています。現在主流の炭化プラントでは、炭化することで有機物が本来持つ熱量の固形燃料となりません。当プラントが広く利用されることで、我々人間に与えられた自然の恵みを充分に活用でき、環境に貢献できればと考えています」と意気込む奥田社長である。


取材・文 有限会社アドバイザリーボード 武田宜久       

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