しばらくはアパレルメーカー向けのドレスやスーツ等の製作を行っていたが、ある時、お客様からの「どんな素材でもいいし、いくらかかっても構わない。自分に一番似合うウエディングドレスを作って欲しい」というオーダーを受けたことが職業観を変える転機となる。
「完成したドレスをお客様に見せた時の笑顔が忘れられません。この時までは、有名デザイナーになりたい、表参道にお店を出したい、いい会社と取引をしたいと野心を持って仕事をしていました。もちろん、野心が仕事を行う上での原動力となってきたことは間違いありません。しかし、このお客様の笑顔を見た時、一人のお客様に喜んでもらうことこそ、自分にとって大切なことではないか。その経験を積み重ねることこそ、自分が進むべき道ではないかと思ったのです」
これを機に、個人のお客様のオーダーを受ける仕事へとシフトしていく。
ウエディングドレスは晴れの舞台を飾る衣装。そのため、「出来上がりが花嫁のイメージ通りになるようにしたい」という西田代表の強い思いから、何度も面談しながらイメージのすり合わせを行う。
打ち合わせ・デザイン画・採寸・生地選び・サイズ・デザインの微調整・シルエット微調整。イメージに沿ったデザインをするため、お客様と何度も打ち合わせをし、イメージを共に作っていく。お客様とベクトルを合わせるには最低でも3、4回は打ち合わせ時間が必要となる。
仮縫いや本縫いの時点でお客様のイメージ通りのドレスになったとき、お客様の顔に光が差す。その笑顔を求めることがこの仕事の醍醐味だと西田代表は言う。
「昨今、どこのドレスメーカーでも素敵なデザインはたくさんあります。
そんな中、お客様は自分にドレスを託してくれた。自分の作るドレスは本当に花嫁の要望に添っているのか、また『共に創りあげたドレス』であるか、と常に自分に問いかけています。わずかな違いでもイメージと異なることのないように、最終調整まで気を抜きません」
ウエディングドレスは、西田代表も思い入れが強く、細部まで手を抜くことはない。一枚一枚ドレスと真摯に向き合う為、量産は現在行っていない。
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